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【短編小説】決めつけ

感情移入されたくない時の、それなのにこちらの心に勝手に侵入されてしまったときの、あの不躾なくせに、心配そうにのぞいてくる表情が耐えられない。

「気に病んでないといいけどねえ」

先輩の声が聞こえて、またわたしの想いが勝手に抜き取られ、心配ですねと言われている。わたしは別に、気に病んでなんかいない。なにも感じていない。それなのに彼女たちは、「わたしが傷ついている」事を勝手に作り出して、自分たちの話の種にして、育てて愛でている。気色悪い。

わたしは元々、細くてもろい体をしていた。よくポッキーみたいだねと言われる。望んだわけじゃないその体は、よくか細く、かよわく見えるようだった。助けてもらう事は頻繁にあった。助けてほしいと思ったのは、心からわずかだった。

「おれ、励ましてこようかなあ」

また不躾な声が聞こえて、吐きそうになる。

出汁にされて、くたくたに煮込んだ豆腐だったはずのなにかが、それこそが、今の自分を表すのにぴったりとはまる気がした。

おわり

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