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夜をさまよう

心がバラバラになりかけて
自身を自身で仕留めようと
幾日も考えあぐね息を飲む
宛てなく夜の街を彷徨い
ただひたすら誰か知り合いにでも
あわないかと眠らない街へ

僕はただ息を吸って吐いて
両足の動きを止めることなく
ただひたすら宛てなく歩き続けた
両目からとめどなく
静かに流れ落ちる涙に
冷たい雨粒が交わり
頬を伝う涙を拭うこともせず

宛てなく彷徨うような
生き方ばかりしてきたから
何かのきっかけで
その場に立ち止まってしまうと
逆に心だけが蠢き
混沌とした不安の波に
呑み込まれてしまいそうで
死への葛藤と闘ってしまう

そこで留まってしまうことで
自身を見失ってしまいそうで
本当は怖かったんだ
でも、そんな気がしていたのは
ただ僕がボクになろうとするのを
拒んでいただけだったのだと思う

さまよう夜の静けさに響く
車のクラクションと
飲み屋帰りの輩の声が
心の奥底で蠢く様々なものを
なだめ窘めてはくれても
ブルースのように聞こえるのは
多分ボクがどこか
壊れていたからだろうか?

それとも、人の声の温もりを
子守唄がわりにしたかった
ただそれだけだったのだろうか?
今の僕にはあの頃の気持ちは
さっぱりわからないけれど
この世から消えたかったことだけは
紛れもなく忘れることのできない真実

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