橋の下に捨てられていた子

刻は夕方、兄2人と私は母に連れられた散歩の帰りだった。

家の前には川が流れており、近くに橋が架かっている。
橋を渡りながらふと思いついたように母が口を開く。

「あんたはあそこに捨てられていたのよ。」

突然の言葉に私は驚き、反射的に違うと言った。

「ちょうどほら、あの辺り。」
川岸を指さす母。

「違うもん!違うもん!」
私は強く否定し、そして泣いた。

違わない、と母は続ける。
混乱し、悲しく、苦しくなった私は叫ぶ。

「私だけじゃないもん!お兄ちゃま達だってそうだもん!」

「違う。あんただけよ。誰も拾ってくれないからかわいそうに思って私が拾ってあげたの。
お兄ちゃま達は間違いなく私の子よ。だから私に似てるでしょ。
あんたは拾った子なの。だから私に全然似てないじゃない。」

軽快に、楽しそうに言葉を重ねる母。

今でも思い返すと苦しい。
当時の小さな私はどれほどだっただろう。
まだ小学校に上がる前の話。

息も切れ切れに、これ以上ないくらい泣きじゃくる私。
それを眺めていた母が笑いながら言う。

「冗談よ~あんたも私の子よ。冗談に決まってるじゃない。よしよし。」

母は、とても満足そうだった。

その「冗談」は、誰が、楽しかったのか。

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