マニュアルとオリジナリティ
前回、
「誰でもできるように仕事をする」
という言葉が、
「呪いの言葉」になってしまったという話を書いた。
障害福祉で働く女性たちの当事者研究の場で
その話になった時、
どうも、その言葉から
「自分らしさ」を出してはいけない。
「オリジナリティ」を出してはいけない。
そのような「裏の意図」を敏感に察知して、
私たちは、息苦しさを感じてしまったのではないか。
そんな話にたどり着いた。
整理整頓とオリジナリティは両立する
オリジナリティを辞書で調べたら
「独創性」「独自のもの」
と出てきた。
となると、
「誰でもできるように仕事をする」
と「独創性」は両立が難しいと思うが、
「整理整頓」と「独創性」は
両立するように思う。
障害福祉の仕事と独創性
私たちの仕事は
マニュアル化が難しい仕事だと
言われてきた。
いわゆる、
対人援助職。
私たちの仕事は、
「自分の人格で相手の人格と出会う仕事」
である。
もちろん、
私たちの仕事の中にも
電話のかけ方とか
月予定の作り方とか
コロナ対策の消毒とか
ある程度のラインまでは
マニュアル化が可能なものもある。
食事介助の手順とか
お風呂介助の手順も
ある程度まではマニュアル化できる。
が、この
「ある程度」というのが
とても難しくもあり
この仕事のおもしろさでもある。
あなたと私は違うから
人間は、ひとりひとり違い
今はやりの言葉で言えば
多様性に富んでいる。
違うひとりひとりが
自分の人生を生きようとするとき
本当に細部にわたり、
それこそ、
選ぶマグカップの色だって違う。
いつものお気に入りの
赤いマグカップを用意したけれど、
「今日は青がいいな」
という日もある。
電話のかけ方も
ある程度マニュアル化できると書いたけど、
それも、
相手と自分のその日の調子しだいだ。
そう。
マニュアルがあるとすれば、
相手のその日、その時の波長と
自分のその日、その時の波長で
新しい波長を作り出す
という感じか。
一方的に相手の波長に合わせるわけでもないし
こちらの指示通りにしてもらうわけでもない。
そこには
相手のオリジナリティと
働く私たちのオリジナリティが
りょうほう、存在する。
どちらかを消すのではなく、
お互いの人格を出し合って、
新しい価値観を一緒に作り出す
そんな仕事なのだ。
事務職は?
前回の私の投稿を読んだ友人が
「事務職はどうなんだろう?」
と言った。
私は、少し考えて、
「事務職も同じだと思う」
と答えた。
対人援助職だから、
という書き方をしてきたけれど、
仕事の内容によって
マニュアル化できる割合の差はあるように思うけど、
でも、働くということは
やはり自分の人格で相手と出会うことではないかと思う。
そう考えた時、
「お客様は神様です」も
「障害のある人を第1に考えて」も
「患者様」も
人間が、
自分の人生を生きる者同士
尊重しあうということを
困難にさせてしまうような
なにか、“問題”をはらんでいるように思う。
というわけで、
次回は、
「障害のある人を第1に考えて」
という言葉を
考えてみようと思う。