107.ジジイと自転車二人乗り
うぃっす!深見一輝です。
めちゃくちゃ家のチャイムを連打された。
うるさいったらありゃしない。こっちはまだ寝てんだよ!
また隣の家のチャイムと間違えて押されてんのか?
マジでイライラする。
そんでもって玄関の戸を開けるなり、いきなりジジイに胸ぐらを掴まれて、
「バカヤロー!青春は戻らねぇんだ!」
って、怒鳴られた。
一気に目が覚めた。
どこか分かってて七不思議に協力した??
ジジイ、それ、なんの話だよ?
おい、なんで屋上の鍵複製してることまでジジイが知ってんだよ!
いつもの穏やかさもどこへやら、ジジイは真剣な顔で言ったんだ。
「いつ命が尽きるかなんて誰にも分からない。死んだ後、閻魔様に会ったら、嘘偽りなく全力で生きたって言える?」
何?俺、死期でも迫ってんのか?
え、あんたは間に合う?
誰か間に合ってない奴がいんのかよ!
おい、俺の自転車!
なんで勝手にジジイがまたがってんだよ!
ってか、なんで俺はジジイと自転車二人乗りしてんだよ!!
ジジイ、俺を乗せて自転車で全力疾走。
え、てかこれ、俺が漕げばよくない?
自転車は前にしか進めねぇんだって、叫んでやがる。
俺らは『東南光葉高校』の校門に着いた。
自転車を降りたら…
ん?泣いてる?
ジジイ、泣いてるの!?
え、どうして…!?
勢いよく自転車を漕いだから、目にゴミが入ったらしい。
『たまひらハイツ』の大家、玉平さんは、いつだってむちゃくちゃだ。
俺に『SUNRISE』で髪切ってもらって、自然な色に染め直してみるといいとか言ってきた。
そこにはイケメン美容師の西口さんがいるんだと。
勉強も寝てて分からなかったとこ、稲垣さんに教えてもらえばいいだとさ。
知らねぇ―よ!
『たまひらハイツ』の住人?だと思ったよ。
俺にそっくりな本当は誰よりも優しいキャバ子がいて?
今年の春からはミスチル好きな南雲さんがやって来て?
東さんがどうなるか?なんだそれ。そいつ誰だよ!
どうせ、ヤバそうな住人達が住んでるんだろうな?
根拠もないのに、来年の春になったら部屋が空くんだろ?
今から契約したら安くしてくれんだろ?
ったくよぉ。しょうがねーな。
春になったら行きます。
玉平さん!俺、『たまひらハイツ』行きます!