久しぶりに香りと向き合う
日本庭園に行った時、どこからか懐かしい香り。
受付ある室内で焚かれているのか、屋外なのかわからないほど入口付近に漂っていた。
園内を散策し、冬は鯉にエサをあげられない(冬は池の中で冬眠しているので食べなくても大丈夫だから)ので鴨が遊んでいる姿、冬の風物詩である雪吊りを目で楽しむ。
そういえば、低気圧の発生で冬なのにゲリラ豪雨のような激しい雨やあられが降った。夏だけでなく冬も異常気象に、日本庭園を眺めていると日本の四季が心配になる。
わび・さび。
日常(ケ)ではハレの日。
お茶室で抹茶と季節の練り切り菓子を頂き、掛け軸や生けられた花を愛でる。メリハリを持った生活をしようと思った時、あの頃が脳裏によみがえった。
かなり昔、手術前に看護師さんから説明を受けた。
「手術中の不安が少しでも軽くなり、緊張を和らげることができたらと思いまして。」
説明のプリントには色が塗られていて、大事な部分には赤色鉛筆で波線が引かれており「医療現場にアロマセラピーが登場したか!」と画期的に思った。
手術室の中では、吸入する方法(精油をコットンに数滴垂らし皿などにおいて漂わせる、ディフューザー等で香りを漂わせる)。後に、どうだったか話を伺いたいとのことでインタビューに応じた。主治医から、看護師たちが患者の不安緩和について報告発表していたことを聞き、今後の手術等を受けられる人のお役に立てたかと思うと嬉しかった。
嬉しさもあって、以前から香りに興味があったのでアロマテラピーの勉強を一通りして資格取得したが、仕事には直結せず趣味の延長のようなものだったので、協会に所属して年会費を支払うより精油代に充てていた。
今回は、お香。
パークセンター内に土産物販があるので、漂っていた香りが置いてあるかと覗いてみるとビンゴ。
創業300年余りのお香専門店、香老舗 松栄堂のお品。
しまっていた物を思い出し、蓮の花の形をしたガラスのアロマキャンドル入れを出してみた。これを香皿に香立を入れ、お香を立てる。
和の香りが特徴の芳輪『白川』は、白檀の落ち着いた香り。
箱を開けてお香を出した時の香り、また、焚き香とは違って、まろやかな感じとでも言うのか残り香が何ともいえない心地よさ。
白く煙る香りの形には、様々な人の想いも届けられていると感じる。
お香は日本人のDNAに働きかけるように、問いかけてくる。
自分の記憶に残っているような、古を感じる懐かしさもあって奥深い。
香りと記憶は結びつく。
私にとって幸せな香りだ。
数十年後、僕と一緒にお茶をいただいたり散策していた日本庭園を、この香りから懐かしく思い出すだろう。
これからも香りとのであいを大切に、やさしく包まれよう。