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羽生善治九段との指導対局記「300万円の決断」
2024年3月22日
その日、ぼくは寝ころびながらTwitterを眺めていた。ツイ廃の何気ない日常。ただ流れるツイートを追うだけの時間。
——のはずだった。
ふと、ひとつのツイートが目に留まる。
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「新将棋会館のクラウドファンディングか…」
ずいぶん前から知っていたし、何度か目にした記憶もある。でも、これまでは他人事のようにスルーしていた。
——でも、今日は違った。
「リターンをちゃんと見てみるか…」
何気なくリンクを開く。画面には、さまざまなリターンが並んでいた。
「どれも魅力的だけど、値段も値段だしな…うーん……ん?なにこれ?」
目に飛び込んできたのは——
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「タイトル戦会場での羽生九段との指導対局!? しかも 300万!!??!!」
心がざわつく。
「受けたい!! でも300万…さすがに高すぎる…」
冷静に考えれば、手が出せる額じゃない。
ーーいや、実は現金の持ち合わせはあった。ただ、それは税金として支払う分や、生活費の一部に充てる分で、手をつけられないお金だったのだ。
これを使えば、自転車操業になるのは目に見えている。
「確かに払えないわけじゃない……でも、さすがに厳しいか……」
そう納得しかけた。
——そのとき、ふと思い出した。
「これ、今回だけの限定って書いてたよな…」
クラウドファンディングのページには以下のように書かれていたのだ。
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「寄附者銘板以外の記念品はすべて第4期限定品…」
そう。これを逃せば、もう二度とチャンスは来ない。
「うわああああああ!!!どうする俺!!!無理なのはわかってる!でも、でも……どうしても受けたい!!!」
この日、ここまで羽生九段の指導対局を受けたいと思ったのには、理由があった。(続く)