#19 祖母の日記
土曜日。時刻は正午を迎えたところ。
祖母の家であり同時に私の実家でもあるごく平凡な一軒家で時が過ぎていく。
珈琲を入れ、煙草を吸っていると祖母に話しかけられる。祖母は元気だ。自分で3食料理をしているし毎日散歩もしている。とても82歳には思えない。家に来る友人にも小さいのにパワーが溢れていると言われる、最近は英語を話し始めた。
そんな祖母が時折日記を綴っていると言う。そんなことしてる場面に遭遇したことがなかったから意外だった。本を読んでいるのも見た事がないし、映画やドラマなども観ない。大河ドラマは観てるか。
読ませてもらうと私生活のこと、最近の体調のこと、そして私たち孫のこと書いていた。
孫が私の生きる源です。学生の時は書道部に所属していたと自慢するのも納得な整った字でそう書き込まれていた。
いつもの祖母はツンデレで口足らずだと思う。あんまりこちらが求めている言葉はくれない。けれど確かに書いてある。なんだが前が見えづらくなって日記が濡れた。祖母にはバレないように手で拭った。
今日から毎日書くらしい。今日のも見してもらった。
孫となんでもない話をしました。とても有意義な時間になりました。と。
また視界がぼやけてしまうところだった、危ない。
長生きして欲しいなと心から思う。幼い頃から時間を共にした祖母がいなくなってしまうのはまだ考えられない。でも何が起きるか分からない。備えなければならない。
そんな愛おしい光を持つ祖母と過ごせる一日を噛み締めてこれからも過ごしていく。