心と身体⑨
今年ひとつめの退職
常に、ひそひそ話や、うわさ話、仕事するのも必ず誰かと一緒にやる。
そういう人が私は苦手でした。だれか1人をターゲットにすると、その人のあらゆることをチェックし始め、同じパートタイマーの立場で休憩時間、残業時間、休暇を取る日まで攻撃した。
職場ですれ違い際に嫌いな人にわざと聞こえるように暴言を吐いたり、物を隠したり、その人の車の駐車スペースまで妨害しはじめ追い詰め、笑っていた。それをやっているのが子供を持つ主婦だということに驚愕した。
小学生並のいじめを繰り返した。それが原因で辞めていく人も出て、出勤もままならなくなる人も出た。許せなかった。この人大嫌いって思うこと、今までの人生でほぼなかったけど、そういう感情を持たずにはいられないくらい軽蔑した。
彼女は、日常は店舗にいないマネージャーと過剰に接触し仲良くなったようだ。店長を飛び越えマネージャーに自分の観点でパートタイマーの報告をし始めた。最悪だったのはそのマネージャーが馬鹿だったこと。店長を飛び越え自分に好意を持ってくれるパート従業員ができたのが嬉しかったのだろうか?その報告を鵜呑みにして、確認することなく動き始めた。
店舗の雰囲気は変わっていった。
暫くして、私がターゲットになった。
彼女と私は仕事の仕方が真逆のタイプだ。過去に一緒に仕事をしたが全く合わずに離れた経緯がある。
面白くなかったのだろう。
私の残業時間についてマネージャーがチェックし始めた。彼女がマネージャーに報告したらしい。
マネージャーが絡んできたことでまずいと思ったのか、店長が終業時間の少し前に声をかけてくれて、あと何をやればいい?
言ってくれればやっておくよ。と気にしてくれた。
それでも、師走の繁忙期は時間内に終われない日も続いた。そして、報告された。すると次は、私の日常業務を曜日ごとに全部書き出せとマネージャーが店長に指示をした。この際だから事細かに書いて、報告してやろう。
そしたら、大変さがわかるからと店長と話し合い報告書類を作成した。
曜日ごとだけではなく、年間通しての入替、販促、季節品の仕入れ、商品選別についても店舗からバイヤーに投げかけてきたこと等々も付け加えておいた。
提出したにも関わらず、書類に関してマネージャーからは特に言葉はなかった。
マネージャーは時々店舗に来ても、わたしのところには一切話を聞きに来るとか、売り場の様子を見に来るとかもなく、来ては、その報告をあげるパート従業員と売り場でいつまでもお喋りをしていた。
みんな、めちゃくちゃ忙しいのに!
売場で立ち話する余裕がある日なんて全くないのに!
店長より上のマネージャを味方につけ、勘違いした彼女の行動はエスカレートしていった。気に入らない人を攻撃し、口を出し、かき混ぜた。
私の売り場の発注状況まで意見をし始める始末だった。直接私ではなく!
乱される私に、他の従業員も心配してくれて、声をかけてくれた。
店長から、契約時間を延ばすつもりはないか打診された。私も悔しいし意地だったから『絶対嫌だ!』と言い放った。
じゃあ、1分も残ったらダメだよと言われ『わかった!』といった。
私が残れなくなった分、店長や副店長に負担が回った。
状況は悪化していった。5年以上勤めてきて、欠勤や早退をした事は一度もなかったけど、その日、どうしても怒りに震えて、その人の所へ怒鳴り込みに行きそうになり、深呼吸して抑えて抑えて、それでも、気持ちが落ち着く事はなく、この場にはいられないとなり、体調不良で早退したいと副店長に伝え帰った。
急に早退する私に、何かあった!と皆察したらしい・・。
職場から出た瞬間に涙が溢れて、嗚咽しながら車に向かった。
それ以降は、商品を並べながら、涙が出たり・・。ここには細かく書かないけれど、とても仕事がやりにくい状況に追い込まれた。それでも同僚には悔しいから絶対辞めないって豪語していたけど、ふっと気持ちが切れた。
休憩室で『もう、無理だ』と同僚に告げた。
『家庭の事情で退職したいので、早々に退職手続きを進めてほしい。ただ、引継ぎはしっかりしてから辞めたいので後任者を決めてほしいです。』
と副店長に伝え退勤した。
楽になった。
その日以降、辞めさせられないよと何度も説得されたけれど、気持ちは変わらん!と、こちらも何回も説明した。
今回の嫌がらせだけではなく、そもそもその職場は特殊な状況にあり、店舗として宙に浮いているような部門だった。仕入れ、入替、企画、など本部もバイヤーも動かず、現場は混乱しっぱなしだった。それらの改善を店長を通し何度もお願いしてきたが変わらずに数年たっていた。その事にも疲れていた。困ればいいとも思った。
年が明け、私の退職の噂は広まるところには広まった。
説得されても、気もちは変わらなかった。店長が後任者を内緒で教えてくれた。ただ、まだ発表はしないということだった。退職日も2ケ月半後に決まった。引継ぎの資料をしっかり作った。マネージャーに報告するために作った日常業務の資料も引継ぎ資料として結果大変役に立った。
退職に向けて淡々と日々を過ごす私とは逆に、他の従業員はざわざわしていた。私が辞めるのはおかしいと・・・。何とかしようと。閉店後に店長を呼び話し合いの場が持たれたらしい。お店全体が過去にないような異様な雰囲気になっている事なども話したらしい。
いちパートーナー従業員と本部の人間であるマネージャーが密に繋がって店を監視するような体制に大半の従業員は違和感を感じていたと思う。
会社にはユニオンがあり、従業員の何人かが匿名で密告した。店舗の異様な状況や、マネージャーとパートナーの密な関係、それによって何人かが退職して行ったことなど。もちろん私の件も。
マネージャーには聴き取りがあったらしい。しかし、そのあとに悲しいことが起こってしまった。
ユニオンに匿名の密告があるような店舗は、店長の管理体制がなっていないからだと言う理由で、急遽、店長に移動命令が出た。
信じられなかった。なんていう会社なんだ。
それを知った数日後、店長と2人で話をした。
今回の会社のやり方が酷すぎて、2人で泣いた。本来のルートではない店舗への移動。
しかも、自分絡み。気にしなくて良い、あなたのせいでは無いよと言ってくれたけど。
店長の落ち込み方を見たら、申し訳なくて、自分絡みのことで、この人の人生が大きく変わってしまったと思うと、組織の怖さと、正そうと動いても駄目なんだという喪失感でもう、何とも闘う気は無くなった。
店長はすぐ移動になり、私より先に店から去った。そして、別のパート従業員もいじめが原因でさっさと私より先に辞めた。
新しい店長はとても温厚で良い人だよ。いまの、店の状況やら問題点、全部話してあるから、安心していいからねと言って店長は去った。
新しい店長が来た。まずは、気持ちは変わらない?から始まった。店の異様な雰囲気はすぐわかったよと言ってきた。そして、何があったか教えてほしいと言われ。他の人に聞かれないところで話を聞いてくれた。ひと通りの事は伝え、ひと月この店長のもとで働いて私は退職の日を迎えた。
仕事でほぼ話をしたことがない人から、今まで、本当に大変でしたね。よく頑張ってたと思うよと初めての会話で言われ、個人的に、餞別まで用意してくださっていた。
こんなのおかしいおかしいって、私が辞めることを選んだのに納得しない人たちが何人もいた。もう、それだけで十分だった。
問題の彼女とは、一切話をせず、顔も合わせず退職した。そのあとも、引き継ぎをした社員さんから、わからないことがあるから、ちょっと来て〜の連絡が何度かあり、彼女のいない日や、退勤してからの時間にお店に行き、
引き継ぎをしたりした。来た来たと皆んなが迎えてくれて。いま、何してるの?など話をしたり出来る状況である。
お世話になった従業員の方も見えるので、今もちょこちょこ買い物に行ったりして、顔を見て話をしたりする。新しい店長とも、行けば話をして、今のお店の様子とかを話してくれる。最近、やっと求人を出せる許可が出て、出してるんだけど、応募が無くて困ってるらしい。仕事に来ない?と未だに誘ってくれる。
ありがたい。行かないけど。
正式な退職日は有給消化もあったため、店舗に出勤しなくなってからひと月後でした。その間、次の職場の内定をもらい、同じくパート勤務でしっかり働く準備を整えました。
これが今年、ひとつ目の退職でした。
私の一方的な観点で長く書いてしまいました。たかがパートが何を言っとるか!と思われる方もみえると思います。私が、忘れてしまう前に書いておきたかったということで、多めにみてくださいね。