重度脳性麻痺児における小児青少年版国際生活機能分類のドメインを越えた適応シーティングシステム:システマティックレビュー
1.はじめに
今回の文献の目的は...
Adaptive Seating(Adss)とは
従来、体位と機能の改善、および脊椎変形、股関節変位、呼吸障害などの長期的な合併症の予防に焦点を当てた治療的介入と考えられてきた.一般的に、重度のCPの子供のAdSSは、非常に個別化されている.学校での活動を目的としたAdSSや、食事やトイレを目的としたAdSSなどもある.
小児青少年版国際生活機能分類(ICF-CY)とは
ICF-CYは、WHO国際生活機能分類(WHO-FIC)の一部
目的:ICF-CYは、子供と若者の人口の健康と障害を文書化および測定するための共通言語を提供するために作成
説明:ICF-CYは、国際生活機能分類(ICF)から派生.1989年の国連子どもの権利条約など、子どもの権利を代表する多くの国際条約や宣言に基づいている.ICF-CYが対象とする年齢層は、生まれてから18歳まで. このようにICF-CYは、子どもや若者の機能を、身体機能、解剖学的特徴、活動、参加など、さまざまな観点から詳細に記述することができる分類.ICF-CYはまた、外的要因、つまり子どもの身近な環境やより広い環境の分類も含む.ICF-CYは、特に学習と遊びの側面と発達過程について拡張されている.
2.方法
検索により16の研究が集まり、方法論の質が中等度の研究は9つであった
9つの研究を参考に質問1・2・3に答えていく
3.結果
9つの研究要約
股関節と骨盤を安定させる装置の効果
McDonald and Surtees:仙骨パッドと膝当てを用いたシーティングシステム
▶︎股関節の位置を改善する可能性あり
Ekblom and Myhr:機能的座位姿勢での上肢課題時の筋活動を股関節外転装具の有無で比較
▶︎筋活動に有意な差なし(機能的な座位が確保されていれば、さらに装具を追加する必要はないことを示唆)
*姿勢機能に対する装置の有意な効果を報告した研究はなかった。
体幹・股関節サポート装置の効果
Holmesら:脊柱管狭窄症を有する非歩行のCP児において、「3点フォースシステム」に配置された非対称の側面サポートの効果
▶︎対称的な体幹の姿勢と関連するが、骨盤の傾斜には影響しないことを示唆
Cimolinら:ジストニア四肢麻痺者に対しダイナミックシーティングシステムの効果
▶︎伸展の推力を減少.前後方向の可動域を増加させ、頭部・体幹を安定.上肢は不随意運動がリジットバックレストと比較し多くなることが示唆
Popeら:前方に傾いたサドルシートを含むSeating and Mobility system(SAM)の効果
▶︎全体の有意な効果が報告されていない
Vekerdyら:非剛体SIDOフレームを用いた胸腰仙骨装具(TLSO-SIDO)の効果
▶︎摂食障害と姿勢に有益な効果が得られた
▶︎脊柱管狭窄症の矯正におけるTLSO-SIDO装置の効果は示すことできず
CPの重症度・タイプが姿勢機能、上肢機能、その他のアウトカムに及ぼす影響については、評価するのに十分な情報が得られなかったため、評価することができなかった.
ICF-CYの3つの領域におけるAdssの効果
各領域においてポジティブな効果が報告されたものを◯で示す(下記図)
身体機能・構造
▶︎ほとんどが姿勢制御の成果(脊柱変形のアライメントの修正と、風を切った姿勢を含む骨盤、腰、膝のアライメントの修正)、または上肢制御の成果(腕の手の動きや不随意運動の制御)
活動
▶︎セルフケア、遊び.家族や学校などの子どものコンテクストに強く依存している
参加
▶︎AdSSによって形成される特定の「身近な環境」によって,家庭,学校,地域社会での参加を向上させることが可能であることを示唆
4.議論
今回のレビューでは、方法論的に最も優れた9つの研究でも、方法論的な質が中程度で不均一であり、エビデンスレベルが低いことが明らかになりました。つまり、重度のCPの子どもたちにおけるシーティングデバイスの機能的効果について、しっかりとした結論を出すことは今のところ不可能だということです。
脳性麻痺の重症度およびタイプが適応型シーティングの効果に及ぼす影響
おそらく、適応シーティングの推定効果は、特にCPの重症度に依存すると思われます。限られた証拠によると、GMFCSレベルVのCPの子供は、基本的なレベルの姿勢制御ができず、GMFCSレベルIVの子供は、この基本的なレベルの制御に障害があることが示唆されている。今回のレビューでは、CPの重症度(GMFCSレベルIVとV)がAdSSの効果に与える影響については、研究の詳細が不足しているため評価できませんでした。同様に、CPのタイプがAdSSsの効果に与える影響についても、情報が不十分であったため評価できませんでした。理論的には、運動障害のあるCPの子供に有効なAdSSは、痙性CPの子供に最も適したものとは異なるかもしれません。
5.結語
今回の論文からAdssの効果はエビデンスレベルが低い結果となりました。
シーティングは個別性が高いと言われる中でしっかりと評価し、機能面だけでなく活動や参加へ繋がる手段の一つとして提供できるように学び考えていく必要があると感じました。
読んで頂きありがとうございました。