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古道具を楽しむ #1 灯りモノ・燭台

火を灯す。

採掘資源の乏しい日本において油はとても希少だ。

植物(えごま)から、魚から、クジラから…
無理矢理搾り取って使うしかなかった。

そんな貴重な油を使用して行われる"灯す"という行為。

灯りのある夜は、彼らにとってどれだけ希少で、有意義な時間だったろう。


自在燭台


自在燭台の自在は"自在に伸び縮みできる"の意。
※自在鉤の自在と同じ意味

びょいーん


ぐるぐると螺旋を描く胴体は装飾ではなく、機能に則したモノ。

先の写真とは違う個体だが特徴は共通
螺旋状の凹凸に上部の金具がひっかかり、伸ばした高さをキープできる


上下の動きを自在にすることで灯りの照らす範囲も調整できる。

足元灯としては低いまま、部屋全体を照らすなら高く伸ばして…なんて使い方をしたのだろう。

↓当店で販売中の自在燭台↓


がんどう

「これは燻製機ですか?」この前聞かれた。

シルエットはまるでUFO


これも灯りを灯す道具"がんどう"と呼ばれるものだ。

上部のアーチは持ち手。

現代でいうところの"懐中電灯"だ。
※懐中電灯もすでにレトロ ?

たおすと内部に謎の機構が・・・


本体を縦にしても横にしても、内部で受け皿が常に一定を向くように工夫されている。
蝋燭が転倒しない造りだ。

内部には蠟燭の受け皿が
横に倒しても芯棒は上を向く


ちなみにがんどうは漢字で書くと"強盗"だったり、"龕灯"だったりする。

なんでも強盗が使うのに適していたからだ、とか。


1900年代以降の燭台


大正期には、地域差もあるが電灯が少しずつ一般的になってきた。

もう灯りは日常のひと時を特別にするためのモノではない。

こちら大正頃
大きさ1040mm!! しかも1本の欅
欅は当時だって高級材だ、それを豪快に駒引いている


近代化に伴い、日本人の暮らしはだんだんと灯りから遠ざかっていった、それでも灯を求めた。
そして特別な日、式日に火を灯すようになる。

やはり灯りが"特別"であることにはかわらない。

特別な"時"を過ごすための灯りが、特別な"日"の象徴へと、灯りの意味が変遷していったのだ。



愛おしき瑕


当店では、蝋のあとを無理やりはがしたりはしない。

手入れ担当スタッフにも「受け皿のあたりをゴシゴシ拭かないで!あー!蝋が取れちゃう!!!」なんて言ったりする。

燭台は特別なモノだ。


曲がった芯棒も、垂れた蝋も、どれもが燭台を織りなす一部。
灯を通して、当時彼らはなにを見ていたのだろう。

割れた鉄部を板きれに固定しなおしてつかう、なんてものもたまにみかける



そこに見えるは灯りへの敬慕。

今、僕たちは灯りを思うように扱いすぎている。
情景はもちろん、きっと大切さも畏怖も見失ってしまっている。


やつれた燭台たちを通して灯を見つめてみてはいかが。

↓ショップについて↓


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