鳥は風が見えているかもしれない
今は独りなボクも、大切だった人が側にいた時期もある。
そしてその頃ボクは北海道に住んでいた。
彼女の家は函館にあって、彼女を乗せて彼女の家に帰省する時は海沿いの道を車で走ることになる。
穏やかな海と青い空が気持ちよかったのをよく覚えてる。
彼女は車の上の方を鳶が飛んでいるのを見つけると、スピードを上げてとボクに言った。
なぜかと聞くと、鳶は車が起こした風に乗って空高く登っていくのだそう。
鳶は車が風を起こすのを知っていて車の上について飛ぶらしい。
少しスピードを上げて港町の見える海岸線を走りながら、鳶は風が見えているのかもしれないなとボクは思った。
そして独りになった今でも、ボクは鳶が車の上を飛んでいるのを見つけたら少しだけスピードを上げて走る。