人のひとりごとでも結構辛いよ
脳卒中になって五年目の夫が、コロナワクチン接種を終えて3日がたった
身体的には腕が痛いだけで、相変わらずキッチンの椅子に座ったきりになっている
そしてわたしは何でもやってあげることがいいことと思わなくなり、夫との距離を取っていた
するとある晩、先に寝室に行ったわたしのあとから
「しょうがない、しょうがない、我慢するしかない」
とひとりごとをつぶやきながら寝室に入ってくる夫
わたしが眠りについてると思っていたようだ
「なに?コロナワクチンで腕が痛いの?」
と突然話しかけたわたしにとまどって口を濁した
「いやいや、なんでもない」
そう言う夫だがその言葉は悲壮感に溢れていた
人のひとりごとでも結構辛いね
言いたがらないが意味はあるにちがいない
悲壮感溢れるその言葉が数日間わたしを苦しめるのだった