#14 コダマとバナナ
今回はタイトルにある『コダマ』からご紹介します。
『コダマ』は写真の真ん中で母親に抱かれている小さな男の子の名前です。
モンキーセンターの中で知名度も人気も高いお姉ちゃんの『小夏』とよく似た、垂れ目がチャームポイントの可愛い男の子です。
今回はこの『コダマとバナナ』のお話なのですが、その前に淡路ザル達がいつもセンターで食べているご飯(エサ)もご紹介します。
🐵淡路ザル達のご飯🍚
センター長さんにご協力いただき、ご飯(エサ)の写真を撮らせていただきました。
淡路ザル達のご飯(エサ)は押し麦です。
押し麦の中にチラホラ見えている丸い粒は大豆です。
ご飯(エサ)は量を管理したうえで、毎日数回に分けてサル達に与えているそうです。
もちろん完全管理の動物園とは違うので、1頭ずつ何をどれだけ食べたかまで管理することはできないと思いますが、その日出勤しているサルの頭数に応じてエサの量を調整されているようです。
メインのご飯以外には、来園者の『エサやり体験』で貰うおやつも食べています。
おやつはサイコロ状に切ったサツマイモとピーナッツです。
※来園者は『エサやり体験』以外で、サルにエサを与えることはできません
この他に以前(#11小窓からのぞくおサル)にも書きましたが、夕ご飯後の『デザートタイム』にサツマイモ・ニンジン・リンゴ・バナナ・オレンジ等の野菜や果物を食べています。
もちろん淡路ザル達は野生なのでエサ以外の物も食べています。
野草をサラダバーのようにモリモリ食べていたり、木の上で葉っぱを落としながら新芽をちぎって食べていたり、椿の蜜を吸ったり、蟻を捕まえて食べたり…
おサル達が何を食べているのかを観察するのも楽しいです。
🐵淡路ザル達が苦手な食べ物🍓🍅🍉🥔
淡路島モンキーセンター公式YouTubeチャンネルに面白い動画が投稿されています。
『サルvsイチゴ』・『サルvsジャガイモ』・『サルvsトマト』・『サルvsすいか』
これらは淡路ザルが苦手な食べ物(食べない物)を紹介している動画です。
他の野猿公苑や動物園のおサルが食べている物でも、淡路ザルは警戒心が強いのか、興味を示すことがあっても実際には食べない物が多いようです。
この動画の中で好きなものとして紹介されているものは
『主に地元で生産された柑橘類・びわ・玉ねぎ・鳴門金時・バナナ・リンゴ』だそうです。
🐵おサルといえばバナナ??🍌
『サルはバナナが好き💖』
そんなイメージをお持ちの方が多いと思います。
確かに淡路ザル達も美味しそうに食べています。
動物園のサルの仲間もバナナを食べているイメージがありますが、現在動物園では動物たちの健康を維持する為に『人間の味覚に合わせて糖度を高くしている果物は基本のエサでは与えない』と聞きます。
淡路島モンキーセンターでも、おサルにバナナを与えるのは基本的に『デザートタイム』の時だけのようです。
🐵バナナを食べないおサル🍌
2023年9月26日
秋の山籠もりシーズンに入っていた為、この日出勤していたおサルは20頭ほどだったように記憶しています。
出勤しているおサル達の顔ぶれを見ても、群れから離れて暮らしている大人オスと若いオスが中心で、私には名前の分からないおサルばかりでした。
そのうちの1頭がスタッフの方からバナナをもらった時のことです。
警戒心が強く、手渡しでは受け取らないようなのでバナナを近くに投げてあげました。
おサルはバナナを地面に置いたまま、そーっと皮を剥きました。
今度は鼻を近づけてクンクンと匂いを嗅いでいます。
群れの中で一番の食いしん坊『太郎』なら、一瞬で食べ終わるバナナですが、このおサルはまだ食べないようです。
結局、このおサルは匂いを嗅いだだけで一口も食べませんでした。
どうして、このおサルはバナナを食べなかったのでしょう?
彼らが暮らしている山の中にバナナは自生していません。
このおサルはモンキーセンター出身の可能性は高いのですが、オス猿は4~5歳頃に群れから離れるようです。
群れのサル達は『デザートタイム』でバナナを食べる機会があるので、バナナの美味しさを知っています。
しかし、群れに居ても子ザルが皮付きのバナナ(特に中身)を食べられる機会はほとんどありませんから、このおサルはバナナのおいしさはもちろん、食べられる物であることすら知らなかったのかもしれません。
では、サル達はバナナの美味しさをどうやって知るのでしょうか。
お待たせしました!
いよいよ『コダマ』登場です。
🐵コダマとバナナ🍌
2024年4月2日
餌場から見える山の斜面に、コダマとお母さん(ヌーヌ)を見つけました。
コダマがお母さんの手元をジーっと見ています。
お母さんが左手に持っているのは、1/4ほどに切られたバナナ。
皮を剥いて、少しずつ齧るようにして食べています。
お母さんの手元だけをジーっと見つめ、完全にバナナにロックオン状態のコダマ。
お母さんがよそ見をした時には、コソッと鼻を近づけて匂いを嗅いでいました。
美味しそうな匂いだったのか、直後に右手で足をポリポリしながらペロッと舌なめずりを数回していました。
コダマがバナナの魅力に惹かれてお母さんの手元に近づきましたが、お母さんから優しい制裁を受けました。
お母さんに軽くあしらわれ一瞬ころりんと転がってしまったコダマでしたが、すぐに起き上がると今度はバナナを食べているお母さんの目を見つめています。
「ぼくもたべたいなー、ほしいなー」
そんな気持ちでお母さんに訴えているように見えます。
しかし、そこは動物社会のルールがあります。
「しかなたいわねー、ちょっとだけよ」と分けてもらえることはないようです。
可愛い息子と視線を合わせることもなく、お母さんはバナナを食べ続けます。
コダマの強烈な圧を感じたのか、お母さんが座る向きを少し変えました。
それでもコダマのバナナへの興味が薄れることはありません。
鼻をヒクヒクと動かして匂いを嗅いでは舌なめずり。
よほど食べたいのでしょう。
何度もバナナに近づこうと試みます。
しかし、お母さんが大事なバナナを譲ることはありません。
ここで、コダマの可愛い反撃です。
左足でお母さんの右手を見事に払いのけました。
今度はお母さんが落としたバナナの皮を見つけて匂いを嗅いでいます。
でもすぐにポイッと捨ててしまい、またバナナとお母さんを交互に見つめています。
コダマは、何度もバナナに鼻がくっつきそうになるほど近づいています。
「もう、そのままパクっとかじっちゃえ!」と私は思っていましたが、強行策に出る様子はありません。
バナナが欲しくてたまらない様子のコダマ。
下から覗き込んでバナナを見ています。
食い入るようにバナナを見つめていたコダマ。
吸い寄せられるように左手が伸び、目の前のバナナを持とうとしました。
気付いたお母さんはすぐに左手を引き戻し「え?」と驚いたような表情を見せながら「あげないわよ!」というように、コダマから少しバナナを遠ざけました。
さっきのバナナの皮を踏んでしまったようです。
皮よりもやっぱりバナナの中身が欲しいコダマ。
食べているお母さんを見ていたその時「ペッ」とお母さんがバナナの筋を吐き出しました。
吐き出したバナナの筋はお母さんの足の上に落ちました。
すぐに顔を近づけ、それが何であるのかを確かめるようにほんの少しだけ口を付けました。
味見して食べられると判断したようで、残りの筋も2回に分けて食べていましたが、食べ辛そうに口がモゴモゴしています。
コダマが筋を味わっていると、バナナの端が痛んでいたのでしょうか。
お母さんが食べていたバナナをポイッと大胆に投げ捨てました。
華麗にバナナを投げ捨てたお母さんは、コダマを気にする様子もなくそのまま下に降りていきました。
投げられたバナナの端は、枯れた枝葉の上に落ちました。
コダマは鼻を近づけて確認すると、枝葉のくっついたバナナをつまみ上げ、そのまま先に降りたお母さんを追いかけていきました。
今回はバナナでしたが『バナナを食べないおサル』と『ヌーヌ・コダマ親子』の行動を観察できたことで、サル達が食べられる物を覚えていく過程【おサル社会の食育】を少し知ることができました。
最後にちょっとだけ気になるのは、淡路島に自生していないバナナを最初に食べた淡路ザルは誰だったのかな??
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