ある夏の夜の怖い話
私は怖がりのくせに、怖い話が好きだったりします(笑)。
私が子どもの頃、夏休みになると怖い話の特番が頻繁に放送され、新聞のテレビ欄でチェックしては、欠かさず観ていました。そして夜トイレに行くときに、番組を思い出し駆け足になるのですが……。
私自身、全くと言っていいほど、霊感は無いと思うのですが、思い出してみれば、いくつか不思議体験をしたことがあるかも。最近暑い毎日ですので、ちょっと涼しくなって頂こうと思い、紹介します(笑)。
学校の怪談?
大学生時代に体験したことです。私が卒業した東京藝術大学には藝祭という文化祭があり、その藝祭の前には、出店の準備や出し物の練習をしていました。この準備がとても楽しく、皆で汗をかきながら買い出しなどしていました。その準備期間中のある日、学校は開いていましたが、工事のためか、学内は停電していました。
しかしどうしても歌の練習をしたかった私は、夕方薄暗い練習室で、1人歌の練習をしていました。小部屋がたくさん並んでいる練習室は、普段空きを見つけることがとても難しいほど学生でごった返しているのですが、停電したその日はシーンとして、おそらく居たのは私1人だったと思います。
しばらくして
「コツ コツ」
とヒールのような足音が聞こえてきました。その足音はだんだん近づいてきて、隣の部屋の扉を開閉する音が聞こえました。
「何でこんなに部屋がたくさん空いているのに、わざわざ隣の部屋に入るのかな? 隣の部屋だと音が聞こえて練習しにくいだろうに」
と不思議に思ったのですが、すぐに自分の練習に戻りました。
しかし、やはり気になります。練習室に入ったということは、練習をするはずなので、何かしら楽器の音や歌が聞こえてくるはずなのですが、一向に音が聞こえてこないのです。
だんだん暗くなってきたので、私も練習を切り上げ、部屋を出ました。廊下に出て、気になり隣の部屋の覗き窓を見ると、誰もいませんでした。
「あれ?! 足音と扉の音が聞こえた気がしたけど、誰もいない??」
恐くなり、走って学校の外へ出ました。そして友達にその話をすると
「こんな停電の日に練習している人がいて、来た人がびっくりして帰ったんじゃない?」と笑われました。
確かにこんな日に練習している自分も、相手に怖い存在として認識されたのかもしれません。
血だらけの風呂場
藝大の寮は、あまりの古さ、汚い外見から、本当にお化け屋敷のようだったという人もいるほどでしたが、私もそこで4年間生活をしていました(今は、取り壊され、別の場所に綺麗な寮が建設されたそうです)。実際にその手の噂話はたくさんありましたが、私が経験したのは、ちょっと違うものでした?!
ある日、共同の風呂場に向かっていたら、廊下に血が! しかもそれは風呂場へ続いていました。恐る恐る風呂場を開けると、脱衣所、浴室と更に続いています。その先をたどって浴槽に目を移すと、浴槽からこちらを見ている顔と目が合いました。
「うわー!!!!」
声を上げると、
「あ~、寝てた。掃除しなきゃな」
とその顔がしゃべったので、よく見ると、たまに寮で見かける美術学部の先輩でした。
どうやら、酩酊状態で怪我したままふらふらと風呂場に来たようでした。人間だった、とホッとしましたが、恐ろしい状況にあることは変わらず。しかも出血しているのに風呂に入るなんて、危ないのでは!? 私は人助けをしたのかもしれません。
もうあんな体験はしたくありませんが、少しは涼しい気分を味わえていただけたでしょうか? 寮での珍話は他にもたくさんありますが、それはまた別の機会に!