「私」が凝縮されたデビューアルバム『My World』の話<後編>
(前編はこちら )
デビューアルバムのレコーディング、ジャケットの写真撮影が終わり、着々と準備が進む中、2016年4月14日にあの熊本地震が発生しました。そして2日後の4月16日未明に発生した本震と呼ばれる地震で、私の地元は前震よりも大きな被害を受け、家族、親戚、多くの知人友人が被災しました。
幸いにも私の身内で身体的に被害を受けた人はいませんでしたが、父の実家が全壊したとの連絡。そして、本震で大変被害の大きかった南阿蘇村に住む祖母たちは、叔父たちと避難したと姉に連絡はあったが、どこにいるのかよくわからないとのこと。東京からむやみに連絡を取って、相手の携帯電話の充電を消耗させてしまうのもよくないのですが、何もできない自分が悔しく、あの手この手を使って、とにかく物資だけを送り自分の気持ちを落ち着けようとしていました。
無事ではないことはわかっているのですが、熊本の皆は口をそろえて、
「こっちのことは心配いらんけん、あんたは東京で頑張りなっせ。あんたが頑張るのが一番の励みになるとだけん」
と、言っていました。
しばらくして大量の弁当を買い、帰省してみたのですが、飛行機から見える無数のブルーシート、ひっきりなしに鳴り響く炊き出しなどの町内放送、そして当時まだ続いていた余震に、より事の重大さを感じました。しかし、CDデビュー目前で、CD発売リサイタルも控えていた私に、「心配せんで頑張って」と誰もが逆に励ましてくれるのです。
自分だけ温かい布団で寝て、お風呂に入り、何事もなかったように食事をしていてよいのだろうか、と自分を責めるような気持になりました。寝付けない日が続くこともありましたが、そんなことをして体調を崩しては、熊本のみんなに申し訳ない、くよくよしてはいけない、と気持ちを切り替え、とにかくCDデビューのリサイタルに向けて頑張ろうと必死になりました。
そして迎えた8月30日。CDが発売されたことを、地元をはじめ、いつも応援してくださっている皆さん、合唱団の皆さんも喜んで下さり、胸がいっぱいでした。発売と同時に東京の渋谷で行われたデビューCD発売の記念リサイタルには、熊本から両親も駆けつけてくれました。本当に感謝! こちらの記念リサイタルのお話については、また別の機会に。
実は、発売された直後、大手のCDショップに行き、自分のCDを探してみたところ、ありました! あー、あんなにCDショップ通いをしていた私が、自分のCDを探す日が来るとは、涙が出そうでした。
その後、熊本でのリサイタル、被災地のボランティア、九州キャンペーンツアー、そして長年住んだお家からの引越し。思い返せば、CDデビューの2016年は激動の年でした。
デビューアルバム『My World』は前編で書いたとおり、私が好きな曲、また想い出に残っている曲、今まで歌ってきた曲などで構成されているので、熊本で過ごした18歳までの自分が凝縮されているといっても過言ではないかもしれません。
今でも、このアルバムを聴く度に、こんなに素敵な作品に仕上げてくださった関係者の皆さん、そして応援してくださっている皆さんに感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。私のデビューアルバム『My World』、自信を持ってお薦めします!