競争戦略論[Ⅰ]を読む - ⑰CEOが抱える7つの悩み
さあ、水曜日だ。
毎週水曜日はマイケル・ポーター著「競争戦略論」をベースに、ボクの気づきや思考をアウトプットするシリーズを展開している。
先週は「企業はどのようにCSRに取り組むべきなのか」という記事を書いたが、今週は「CEOが抱える7つの悩み」ということについて書いていこうと思う。
CEOが抱える7つの悩み
マイケル・ポーターはこの本の最終章でCEOが抱える悩みについて書いている。それは、以下の7つだ。
CEOが経営を担っているのではない。
CEOが命令を下すことはリスクが高い。
CEOは社内で何が起きているか把握できない。
CEOの言動ひとつひとつがそのままメッセージとなる。
CEOには取締役会という「上司」が存在する。
CEOの目標が短期利益の追求ではない。
CEOといえども一人の人間にすぎない。
特に大手上場企業において、CEOに就任するということは、最高のステータスであり、キャリアの頂点に昇りつめたという感慨を得ることだろう。しかし、実際にはこれまでの(例えば事業部門長などの)輝かしい実績や経験とは次元の異なる未知の領域の膨大な仕事に忙殺されることになるそうだ。
ボク自身、そんな巨大企業のCEOになったことはないが、容易に想像のつくお話である。
CEO自身がボトルネックになる
巨大な企業になると、CEOは全社員の動きを追うことはできない。よって実務に携わる部下に事業運営の権限を委譲せざるを得ない。つまり、CEOが会社に対して発揮できる影響力は自ずと間接的なものになる。さらに、一方的な命令を下したり、部下から上がってきた提案を無下に退けたりすることは、部下の反感を買い、警戒心を芽生えさせることにつながる。誰かを不用意に批判したりすると、それは当人だけでなく、その周囲のメンバーの士気を削ぐことにつながる。
そして、不安になった部下たちは、物事を進めようとするたびにCEOに承認を得ようとして、報告のプロセスや会議が仔細に渡るようになる。さらに、そういった情報は、往々にして良いところだけを抽出したものであることが多いので、CEOは自身でその内容を精査しなければならなくなる。それによってCEOのスケジュールは過密になり、それが意思決定を進めることのボトルネックになってしまう。
皮肉なことに、CEOが権限を発動すればするほど、その権力が自らの権限を弱めるというパラドックスに陥るのだ。
日本の中小企業の社長
さて、ボクがサポートしているのは、そんな大企業のCEOではなく、日本の中小企業の「社長」だ。
上場企業の場合、CEO自身の任免権を有する取締役会が存在し、その取締役会への配慮とともに(株式の売買益に大きな関心を持っていると思われる)株主も満足させなければならない。しかし中小企業の場合は、往々にして株式は非公開で、且つ取締役も身内の数名で固められていることが多い。よって取締役会の開催も議事録だけで終わらせてしまう場合がほとんどだろう。そう、中小企業の社長には「取締役会」という上司は存在しないのだ。
しかし、中小企業の社長には「クライアント」という上司が存在する。
クライアントはいつでも自己中心的だ。クライアントの窓口担当者と社長とは、いつの間にか微妙な上下関係になるものだ。担当者はその会社の中の自分の立場を良くしようとする。よって、双方のビジネスの将来的なことなど考えず、目先の自分の評価をよくするための結果に拘るものだ。
しかし、中小企業の社長は目先の短期的な利益を追求するべきではない。追求すべきは長期的な収益性だ。
(続きはまた来週)
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