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ISO26000を理解する: ステークホルダーの特定とエンゲージメントの向上

さあ、火曜日だ。

火曜日は、持続可能な社会について考えている。
現在のテーマは「ISO26000」の理解を深めていくことだ。

ISO26000は、国際標準化機構ISOによって開発された、持続可能な発展を実現するための社会的責任に関する包括的な手引書であるのだが…


社会的責任の本質

ISO26000(日本語訳)の「3.3.1 一般」の部分で、社会的責任の本質について、こう書かれている。

社会的責任の本質的な特徴は、社会及び環境に対する配慮を自らの意思決定に組み込み、自らの決定及び活動が社会及び環境に及ぼす影響に対して説明責任を負うという組織の意欲である。これは持続可能な発展に寄与し、関連法令を順守し、国際行動規範との整合性がとれた透明かつ倫理的な行動を意味する。また、社会的責任がその組織全体に統合され、その組織の関係の中で実践され、ステークホルダーの利害に配慮していることを意味する。

ISO26000: 2010 「3.3.1. 一般」

まずは、法を尊重し、法令を順守することだ。
しかし「社会的責任」の本質を考えるならば、たとえ法的拘束力が無くとも倫理的な透明性のある行動をとることが必要となる。そして、ステークホルダーの利害に配慮しなければならない。

ステークホルダーの理解

ステークホルダーの日本語訳は「利害関係者」だ。
「利害関係」を辞書で引いてみると、次のような一文が出る。

利害関係とは、ある事柄が自分にとって利益や損害をもたらす可能性があることを意味します。
ビジネスにおいては、企業の活動や結果に影響を受ける人や団体を指し、ステークホルダー(stakeholder)とも呼ばれます。ステークホルダーには、従業員、取引先、顧客、株主、投資家、地域社会などが含まれます。

つまり、ステークホルダーは皆「人」だ。
ステークホルダーの範囲を日本国内から考えるのであれば、まず守らなければならない法令は「日本国憲法」であり、その中で保障されている「基本的人権」だろう。

目を向けるべきところ

基本的人権で保障されているものは、思想・良心の自由、信教の自由、表現の自由、集会・結社の自由、職業選択の自由、居住移転の自由、外国移住の自由、国籍離脱の自由、財産権、生存権、教育を受ける権利などとなり、企業がこれらを侵害するようなことはあってはならない。

それは現在だけのことではなく、将来的に起き得る人権侵害も含めて考える必要がある。そして、空や海およびバリューチェーンでつながっている世界(間接的なステークホルダー)にも目を向けるべきだ。ISO26000においては「世界人権宣言」および「ヨハネスブルグ宣言」などの国際行動規範を尊重すべきとしている。

参考までにヨハネスブルグ宣言の一部を抜粋しておこう。

我々は、万人のための人間の尊厳の必要性を認識した、人間的で、公正で、かつ、思いやりのある地球社会を建設することを公約する。

この首脳会議の始めに、世界の子供たちは我々に対し、素朴であるがはっきりとした口調で未来の世界は彼らのものであると語りかけ、我々すべてに対して、我々の行動を通じて、彼らが貧困、環境破壊及び持続可能でない開発形態が引き起こす屈辱も不当もない世界を相続することを確保するよう求めた。

我々の未来全体を代表するこれらの子供たちに対する回答の一環として、世界の隅々から集い、異なる生活体験を持つ我々全員は、緊急に新しくより明るい希望の世界を作り上げなければならないとの深い意識により結束し、動かされている。

したがって、我々は、持続可能な開発の、相互に依存しかつ相互に補完的な支柱、即ち、経済開発、社会開発及び環境保護を、地方、国、地域及び世界的レベルで更に推進し強化するとの共同の責任を負うものである。

人類の連帯を形成することの重要性を認識し、我々は、人種、障害、宗教、言語、文化、伝統にかかわりなく、世界の文明・国民間での対話と協力を促進するよう求める。

我々は、人々の持続可能な開発にとって深刻な脅威となっている世界的な状況に対する闘いに特に焦点を置き、また、優先して注意を払うとの我々の約束を再確認する。これらの世界的状況には、慢性的飢餓、栄養不良、外国による占領、武力衝突、麻薬密売問題、組織犯罪、汚職、自然災害、武器密輸取引、人身売買、テロリズム、不寛容と人種的・民族的・宗教的及びその他の扇動、外国人排斥、並びに特にHIV/AIDS、マラリア及び結核を含む風土病、伝染性・慢性の病気が含まれる。

我々は、女性への権限付与、女性の解放及び性の平等が、アジェンダ21、ミレニアム開発目標及び持続可能な開発に関する世界首脳会議の実施計画に含まれるすべての活動に統合されることを確保することを約束する。

我々は、地球社会がすべての人類の直面している貧困撲滅と持続可能な開発という課題に対処するための手段を持ち資金を与えられているとの現実を認識する。我々は共に、これらの利用可能な資金が人類の利益のために利用されることを確保するために更なる手段を講ずる。

「持続可能な開発に関するヨハネスブルグ宣言」 より抜粋

現代において、企業はその規模の大小に関わらず、ステークホルダーを正しく特定し、自分たちの活動が彼らにどのような影響を及ぼすのかを理解しなければならない。そしてステークホルダーとのエンゲージメント(深いつながりをもった関係性)を高めていくことを求められているのだ。


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