「ファスト&スロー」を読む - ⑥確証バイアスとハロー効果
さあ、木曜日だ。
木曜日は心理学を取り上げていきたい。
このシリーズでは、ダニエル・カーネマンが書いた「ファスト&スロー」という本を取り上げて、ボクが読み進めながら受けたインスピレーションを書き連ねていこうと考えている。
ご興味おありの方は、ゆっくりお付き合いいただけると幸いだ。
この本を読むにあたっては、人の思考に「早い思考=システム1」と「遅い思考=システム2」が存在しているということを前提に、その2つの仕組みの相互関係が、その人の判断や行動に及ぼす影響について書かれているという理解をしておいていただきたい。そうでないと、それぞれのワードが何を指しているのかわからなくなってしまう。
というところで、さっそく「システム1」の話だが…
確証バイアス
システム1は動物的な先天的なスキルで、周囲の世界を感じ、ものを認識するための反射的なシステムだ。そのため、(システム2より先に起動する)システム1は、まず物事を知ろうとするところから動作を開始する。
つまり、誰かから何らかの情報を見たり聞いたりしたとき、ボクらはまずその情報を信用する。システム1はその自動作動によって、受け取った情報に整合性を持たせようとする。ボクらは、与えられた範囲の情報で「最もうまく説明できる解釈」を組み立てようとするのだ。
その後、システム2が起動する。
システム1が信じたがるバイアスを有しているのに対し、システム2は「信じない」という部分を受け持つ。他人の話を聞いていて、何か違和感を感じるのはシステム2の働きだ。そして、その違和感が気になってしまうと、もう他人の話は耳に入ってこなくなる。それはシステム2の働きがシステム1を抑えてしまうからだ。
しかし、残念なことにシステム2は怠け者である上に、駆動させるのにシステム1より多くのエネルギーを必要とする(その詳細は「最小努力の法則」の記事をご参照いただきたい)。なので人は往々にして、システム1の方が優先的に駆動することによって(それがバイアスがかかった情報であっても)その情報を自分に都合のいいように編集して納得してしまうのだ。
それを「確証バイアス」と呼ぶ。
ハロー効果
ハロー効果も確証バイアスに似た脳の動作によるものだ。
一般的に、ハロー効果とは「対象を評価する際、その対象が持つ顕著な特徴に印象が引きずられてしまうことで対象の評価が歪んでしまう心理現象」のことを指している。
人は受け取った情報に整合性を持たせようとする。
システム1は、見たり聞いたりした情報のみをつなぎ合わせてストーリーを作り上げようとする。そこには「最小努力の法則」が働き、完全性よりも整合性が重要視されてしまう。
そして、作り上げたストーリーが魅力的であればあるほど、ボクらはその出来栄えに自惚れてしまい、それが自信に変わる。つまり「ハロー効果」は、発信する側の意図よりも、受信側のシステム1とシステム2の働きのバランスによって影響度が変わるものなのだ。(ただし「フレーミング効果」や「基準率の無視」などのテクニックによって、外部からある程度の操作をすることは可能である)
2種類の自信過剰な人
つまり「自信過剰な人」とは、限られた情報から(システム1の働きによって)瞬時に「もっともらしいストーリーを組み立てる」ことができる能力の高い人だ。
自信過剰な人は、さらに2つに分類できる。
自分の組み立てたストーリーを検証して、ロジックの誤謬を発見して修正する人と、それをする習慣のない人だ。つまり、システム1だけの駆動に頼る怠け者か、自らに負荷をかけてシステム2を稼働させようとする人かの違いだ。
前者は自分のストーリーを言語化して説明することができるが、後者はそれができないだろう。言語化できない人は「根拠のない自信過剰な人=楽観的な人」と呼ばれる可能性が高い。これは(自戒を込めて)注意したいところだと思う。
(続きはまた来週)
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