誰が「物流」を殺すのか - ⑳変化への柔軟な対応と中長期の戦略が重要
さあ、月曜日だ。
月曜日はボクの得意分野の物流について書く日だ。
先週は「企業ごとに見る宅配便の歴史」というテーマの記事を書いた。
今日は「変化への柔軟な対応と中長期の戦略が重要」ということについて書いていこうと思う。
国内貨物輸送の現状
国内輸送においては、多頻度小口配送が主流になっている。
その背景には、技術革新によって様々な商品が小型化したこと、また工場の進化によって小ロット製造が可能になったこと、そして輸配送に関わるシステムの改良などがあるだろう。どんな業界でも効率化を求めるのは世の常だが、それによって図らずも輸送の総量は減少傾向にある。
以下は、国土交通省が令和5年(2023年)に公表した資料だが、トンキロベース(重量と走行距離の合計で輸送量を算出する方法)で見ると、国内の総輸送量は2010~2021年の12年で83%くらいに減少していることがわかる。自動車輸送だけ取ると78%の減少だ。
それに対し、貨物運送事業者は平成17年(2005年)に全国で62,000社を超えてからというもの、微増を続けて令和4年(2022年)時点で63,127社だ。どう考えてもバランスが取れるはずがない。
宅配便取扱個数の推移
一方で「宅配個数は増加している」と言われている。
確かにそうだ。宅配の伸びが国内輸送の伸びに寄与しているのは間違いないだろう。
国土交通省が公表している「宅配便取扱個数の推移」のデータを見てみよう。
ご覧の通り、昭和60年からほぼずっと右肩上がりだ。
平成20年(2008年)あたりで大きく減少しているのは、おそらくリーマンショックの影響ではないだろうか。令和2年(2020年)に取り扱いが大きく伸びたのは、コロナ禍で他人と接触しないことが推奨されたことによって、非対面で商品を買うことができるECの取り扱いが増えたことが原因だろう。
急激な伸びの後には停滞が来る。
人口減少のフェーズに入った日本において、ECの伸びが鈍化すれば宅配便の取り扱い個数が増えていく要素がない。なので、令和4~5年(2022~2023)の宅配便取扱個数はほぼ横這い、むしろ微減している。
変化への柔軟な対応と中長期の戦略が重要
ボクは経済学者ではないので、今後日本においてどのような経済環境の変化が起きるのか知る由もない。なので、将来の予測のようなコメントを書くことは控えたいと思う。
しかしここ数年においては、あまり運送事業者にとって喜ばしい環境でないということは間違いないだろう。このような時流の中で運送事業者が生き残っていくためには、変化に柔軟であることが重要だと思っている。それには、働く人たちの多様化や仕事に求めるものの変化への対応、またDXなどによって作業の効率化を図り、クライアントとの連携をスムーズにしていくことなどが含まれる。
そして生き残っていくための中長期の戦略が必要だ。
それは、売上を拡大するための戦略ではない。収益率を維持向上させるための経営戦略だ。そして、経営面だけでなく(今や希少価値を持つようになってしまった)ドライバーをいかに採用し、且つ離職率を下げるかという「マーケティング戦略」もだろう。
(続きはまた来週)
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