「ファスト&スロー」を読む - ⑩認知バイアスの代表例(その2)
さあ、木曜日だ。
木曜日は心理学を取り上げていきたい。
このシリーズでは、ダニエル・カーネマンが書いた「ファスト&スロー」という本を取り上げて、ボクが読み進めながら受けたインスピレーションを書き連ねていこうと考えている。
ご興味おありの方は、ゆっくりお付き合いいただけると幸いだ。
この本を読み進める中で「認知的錯覚(認知バイアス)」について書かれた章にぶち当たってしまった。なので、先週から認知バイアスの代表的なものを紹介して、それについての解説を加えている。
先週は意思決定や信念に関係するバイアスとして「文脈効果」「利用可能ヒューリスティック」「代表性ヒューリスティック」「アンカリング」の4つを紹介した。なんだったっけ?って方は先週の記事を読み返していただきたい。
フレーミング効果
フレーミング効果とは、同じ情報でも、その提示方法や視点によって人々の判断や意思決定が変化する現象を指す。情報の枠組み(フレーム)によって、人々の情報の受け止め方や、それに対する反応が異なることに由来したネーミングだ。
しばしば引き合いに出されるのは、コップに半分飲み物が入っている際に、「半分も入っている」という肯定的な表現をするか、「半分しか入っていない」という否定的な表現をするかによって、相手(自分自身もだが…)の行動が変化するという事例だ。
シミュレーション・ヒューリスティック
「なんとなくそんな気がしてくる」という点で言うと、シミュレーション・ヒューリスティックもそうだ。
シミュレーション・ヒューリスティックは、経験や先入観などから架空のシナリオを思い描いて結果を推定するバイアスだ。例えば、誰しも何か苦手であると思われることにチャレンジして成功する確率を想定する際に、具体的な失敗例をイメージする前に想定する成功確率よりも、具体的に失敗したときの場面を頭に思い描いてしまうと、想定する成功確率をグッと低く見積もってしまうものだ。
不作為バイアス
このバイアスも興味深い。
そして、これはボク自身もいろんなところで思い当たるフシがある。
不作為バイアスは、何かをしてマイナスの結果になるよりも、何もしないでマイナスの結果になるほうがマシ、もしくは何か小さな問題点をあげつらうことによって非難されるよりは、見て見ぬふりをすることを選択してしまうような思考のことを指している。
例えば、放っておくと年間1000人が死亡する重篤な感染症が流行したとする。それに対し、その感染症を予防するワクチンが開発されたが、そのワクチンを打つと年間700人が副作用で亡くなる可能性がある…、というようなケースの際に、多くの人は何かアクションを起こしてマイナスの結果になるより、なにもアクションを起こさずにマイナスの結果になることの方を選ぶ傾向があるようだ。
利用可能性カスケード
そこに「利用可能性カスケード」がプラスされると、さらに厄介になる。
利用可能性カスケードとは、繰り返し入ってきた情報によって起こる確信とその連鎖を指す。ちなみに「カスケード(cascade)」とは、階段状に連続している滝のことを意味する。そこから転じて「次々と繋がる~」「続いて起こる~」などを意味する表現となっている。
メディアが繰り返して(例えば、前述のワクチン副作用について)報道すればするほど、人々の不安が煽られ、危機感が増大することになる。先日起きた「令和のコメ騒動」なども、利用可能性カスケードによって連鎖が引き起こされたものだろう。
(続きはまた来週)
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