競争戦略論[Ⅰ]を読む - ⑩IT革命によって市場と業界に起きる変化
さあ、水曜日だ。
毎週水曜日はマイケル・ポーター著「競争戦略論」をベースに、ボクの気づきや思考をアウトプットするシリーズを展開している。
先週は「IT導入が競争力(収益性)に与える影響」という記事を書いたが、今週は「IT革命によって市場と業界に起きる変化」について書いていこうと思う。
ITによって変化する市場と業界構造
先週の記事では、ITの導入が自社の競争力にどのような影響を与えるかと言うところにフォーカスした。それはバリューチェーンという考え方の中において、どの部分の価値活動がどのくらいの価値を生み出しているのかを可視化することができること、そして(大きな括りの)サプライチェーンの中において、クライアントとの信頼関係を構築することができるというところに意味を持っている。
しかし、ボクたちは、IT革命によって業界の構造が変わっているということも見据えておかなければならない。情報技術の進歩によって、買い手はその商品やサービスを容易に評価(他との比較)をすることができるようになった。そして注文や請求、支払いにかかる手順も簡略化されているのだ。
ITは差別化のツールでなければならない
それは、コストダウンの効果を生むと同時に、売価をも低下させ、製品やサービスのコモディティ化(市場参入時に、高付加価値を持っていた商品の市場価値が低下し、一般的な商品になること)を進めてしまう。それはとりもなおさず、その業界の魅力が低下する(=業界の価値が低下する)ということだ。
そうなったときに、ITを単なるコスト削減のツールとしてではなく、自社の優位性を強化するためのツールにしなければならない。つまり、ITを使って納期の短縮をする、ニーズに合ったオンデマンドなサービス提供をする、ITが組み込まれた製品を生み出す、などによって他社との差別化を図ることは可能だろう。
ただし、他社から見て魅力的なものは、常にパクられる運命にあるということを理解しておく必要があることを付け加えておく。
ITによる競争の範囲の変化
また、ITの導入によって地理的な戦場を変化させることが可能だ。
大手のグローバル企業は、世界中で共通のシステムを使うことによって、コアな部分を一元管理することができ、大幅なコスト削減によって競争力を高めることができている。また国内においても、距離の課題をITで埋めることに成功した事例も多い。
中古車販売(買取)やオンデマンド印刷などは、以前は製品を納品するところにコストがかかっていたものを、ITによって現地調達して現地販売することを可能にした結果、シェアを拡大すると同時に業界の中における競争力を引き上げることができた例だと思っている。
(続きはまた来週)
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