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「ファスト&スロー」を読む - ⑤脳内に張り巡らされる連想リンク

さあ、木曜日だ。

木曜日は心理学を取り上げていきたい。
このシリーズでは、ダニエル・カーネマンが書いた「ファスト&スロー」という本を取り上げて、ボクが読み進めながら受けたインスピレーションを書き連ねていこうと考えている。

ご興味おありの方は、ゆっくりお付き合いいただけると幸いだ。


正常なのか異常なのか

ボクたちのシステム1は、自動的に連想のリンクを張り巡らして、脳内に連続的に自分にとって正常な世界を作り出している。

それは、周囲の状況や事象、短時間内に一定の規則性を持って起きる結果などを連想によって関連付けて記憶され、さらに同様のことが何度も起きる(つまり関連付けが強化される)ことによって、その事象は代表的な観念パターンとなる。それによって、ボクらが現在起きていることをどう解釈するか、そして将来のことをどう予想するかを決定付けている。

予想は、「意識している予想」と「無意識なままの予想」の2種類に分かれる。意識している予想が外れる(予想外のことが起きる)とボクたちは驚くが、無意識な予想は当たっても外れても、そこに感情の動きが起きることはない。

それは、ボクたちのシステム1が自動的に連想マシンを動かして、それらの関連性が「正常」か「異常」かを判別しているからだ。もちろん、その「正常」か「異常」かの判断基準は、その人それぞれの経験によって異なる。

モーゼの錯覚

ダニエル・カーネマンは以下の簡単なクイズを載せている。

モーゼは何組の動物を箱舟に乗せたか?

正解は、

モーゼは動物を一組も箱舟に乗せていない、だ。
箱舟に動物を乗せたのはノアだ。

「箱舟に乗せられる動物」という観念が聖書の文脈を想起させることから、モーゼの名前が出てきてもボクらは違和感を感じることがない。そして、モーゼとノアが同じ母音を持っていて、音節の数が同じであることなどが加味されて、ボクらの連想マシンは「正常」と判断してしまうことが多い。

しかし、一度このカラクリを知ってしまう(新しい関連付けができてしまう)と、もう最初には戻れない。次に同じクイズを出された場合、ボクらは瞬時に「モーゼは動物を一組も箱舟に乗せていない」の回答を導き出すことになる。

ボクたちは他人から話を聞くとき、もしくは文章を読む時に、システム1の働きで自動的に因果関係を見つけている。それによって、ボクらは瞬時に一貫性のあるストーリーを組み立てて、その先を予想をしながら話を理解している。

意外性を持たせるということ

例えば、あなたが文章に意外性を持たせたいと思ったとき、それは文中にいきなり突拍子もない無関係なことを持ち出してくることではない。

意外性を持たせること、それは因果関係が「異常」であるはずの文脈を「正常」であるかのように偽装することだ。そして、文中で因果関係が「異常」であることの種明かしをすることによって意外性を持たせることができるのだ。

(続きはまた来週)


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