『ツシマ』俳優とD陣が行く「九死」配信 抄訳
日本時間で2020年10月25日、ダイスケ・ツジ(境井仁役)およびアール・キム(典雄役)のTwitchチャンネルにおいて、Sucker Punch Productions のネイト・フォックス、ビリー・ハーパーを招いての『Ghost of Tsushima: Legends』九死4人プレイ配信が行われました。たっぷり4時間近くの配信のうち半分はお酒を呑みながらの世間話、撮影裏話、視聴者とのQ&Aに割かれ、実質ほぼ「ファンも見守る『Tsushima』ZOOM打ち上げ会」といった様相。終盤は(おもにビリーさんが)酔っ払ってだいぶグダグダになってましたが、それも含めてガッツリ楽しませていただきました。以下、例によって面白かったところを順次訳していきます。実際の動画はこちら。
◆まずは再会を祝して
季節柄を意識してか、画面に登場したダイスケ・ツジ、アール・キム、ネイト・フォックスはそれぞれニワトリ、サメ、フクロウのコスチューム姿。ビリー・ハーパーは都合で参加が遅れており、メンツが揃うまで雑談モードで進行することに。
ダイスケ・ツジ、以下T: で、みんないまもう呑んでるー?
アール・キム、以下E: ウッドフォード・リザーブの最後の残りを注いだとこだよ。ケンタッキー・バーボンの逸品。
T: こっちは倉吉モルトの12年。友達のジョー・ノー(『Cambodian Rock Band』共演者でチャム役)が今年、僕の誕生日にくれたやつ。あれ、ネイトもウィスキー呑んでるの? バーボンかな?
ネイト・フォックス、以下N: いや。白ワインだけど、『Ghost of Tsushima』特製タンブラーから呑んでまーす(境井家の紋つきグラスを示して)
T: 欲しー!!
E: うわー。めっちゃ妬けるわー。
T: 僕もめっちゃ妬けるー。じゃあかんぱーい。
E: かんぱーい!
N: 乾杯!
T: ずっと言ってる気もするけど、ネイト、ゲームの成功おめでとう。曲がりなりにも顔を合わせて伝えるのは初めてになるのかな。それに『Legends』もか。どの程度関わってたのかはわからないけど。
E: そうだよ、諸々おめでとう!! みんなemote でネイトにお祝いして! emote出してー!
ハグやハートマークのemoteで埋まるチャット欄を横目に少し照れ臭そうなネイトが、『Tsushima』関連の話を続ける。なんでもこの配信が行われたのと同じ週、とあるオンライン・カンファレンスでプレゼンテーションを行ったらしい。
N: 最後に誰かから「ゲーム制作中のもっとも象徴的な瞬間は何でしたか」っていう質問が来たんだ。少し喋ってから、しめくくりに心を打たれたこととして答えたのが、ゲームの出荷後に君らがプレイしているところを観たこと。6年前にも『inFAMOUS Second Son』が出てたけど、これまで配信って見たことなかったからね。身近な感じで、まるでダイスと同じ部屋にいるみたいだった。君がオープンワールドに放たれて拳を突き上げたり、イライラしたり、自分の尻に大笑いしてるのを見るのは──
T: (笑)僕の尻どうでした? 自分では気にしてなかった。
E: (笑)
N: ──かなり感動的で。配信に参加して、ただのストーカー的に観ることができて本当に良かったよ。
(※筆者補足: 最初の『Tsushima』配信最終日、チャット欄でネイトは「これまでゲームの配信って趣旨がよくわからなかったけど、視聴の楽しさが初めてわかった!」と書き込みしていた)
◆脱出ゲームといえば
T: 『Legends』配信にはそのうちSucker Punchのスタッフのみんなをもっと呼びたいと思ってて、レネー(・ビーズリー、キャラクター・テクニカル・アーティスト)にも来て欲しいんだよね。レネー今いるかな? むかしいっしょに脱出ゲーム行ったの覚えてるー?
N: リックから聞いたけど、グループを引率してったんだって?
T: まあそだね。だって脱出ゲームといったら僕の専門分野だもん。昔の職場だったから(時期的に、またキャプションのポエムの内容からいってこちらが当時の記念写真かと思われる)
N: いま明らかになる事実!!
T: この仕事が決まったって電話がエージェントからかかってきた時も、(脱出ゲームの)職場で働いてたし。
N: で「サヨナラ脱出ゲーム! これが俺の脱出だぜ!」とか言ったわけ?
E: 「脱出ゲームから脱出だぜー!」(笑)
T: (笑)
2ヶ月ほど前のQ&A配信で語っていたところによると、ツジ氏は当時LAの脱出ゲーム運営会社で働いており、『Tsushima』のオーディションに合格したという知らせを受けた時は「もちろんやったー、とは思ったけど勤務中だったから」普通に仕事に戻ったという(一方、とあるCMの撮影中に合格の一報を受けたアール・キムは、いったん外に出て思い切り歓喜の咆哮をあげたらしい。典雄役のオーディションはてっきり落ちたものと思い込んでいたので、喜びもひとしおだったとのこと)。
◆ゲーム制作会社従業員への素朴な疑問
T: ネイトだけじゃなくSucker Punchのみんなに対して気になってるんだけど、自分が作ってるゲームを何度もプレイしてるわけだよね。飽きたりする? それとも普通に自分のゲームで遊ぶの? あるいは、発売前にはプレイするけど、発売後はやらないとか?
N: 私は出荷後に遊ぶの好きだね。ただひと月ほど待ってやるかな。ご想像どおり開発完了ギリギリまで、とんでもない回数プレイしてるから。発売後はちょっと休憩入れてから、本当に本当の意味でゲームを体験するんだ。(開発用の)メニューで先に行ったり、カメラをあちこちに回り込ませてみたりする必要なくね。それってかなり建設的な経験で、頭の中にゲームの完成予想図があっても、実際にプレイしてみないとわからないことって山ほどあるんだよ。機能をテストするために一からやるんじゃなく、カウチでまったりと酒を飲みながら──私は仕事外でゲームやる時にはいつもそうしてて、いつでも100%シラフではないわけなんだけど。だから楽しいし、いいもんだよ。違うレベルでゲームの機能のあり方について学べるしね。『Tsushima』に関しては本当に楽しかったから、トロコンもした。今夜はふたりと『Legends』モードで遊べるから楽しみだよ。
◆ビリーもネイトもX-man?
そうこうしているうちに登場したビリー・ハーパーは、スケルトンをテーマにしたコスチューム姿。奥さんが保冷バッグに日本酒の瓶を入れたものを用意してくれたとかで、ネイトが「長年思ってたけどほんと君には100%もったいない人だよな!」と吠えてみせる一幕も。今日は一本まるまる空けるつもりだと意気込むビリーは普段ビール派で、ランニングをしまくることで体型を維持しているのだという。
ビリー・ハーパー、以下B: よく走ることと、あとは何だろな。生まれ育ったウエスト・バージニアの水が効いてるのかも。俺ミュータントなんよ。
E: そうなの?
N: ビリー、ジョークとして言ってる風だけど、君の驚くべき身体的特性ふたつを披露させてもらうよ。実際のとこ君は、私が知る限りもっともX-Manに近いところにいる存在だし。
B: ふたつの特性って?(笑)
N: まず人が視覚を喪失するとその分だけ聴覚が鋭くなる、みたいな話は知ってる? で、ビリーって嗅覚が一切ないんだよ。
T: えっ!? 全然?
(あぜんとするアール)
B: あれっ。ダイス聞いたことなかった?
T: あったかも。でもそれ、どういうことなの?
B: 無嗅覚(Anosmia) っていう症状なんだけどね。
T: 鼻がらみだけに鼻につく感じ。
(突然のオヤジギャグに、コメント欄含め一同失笑)
本人の説明によると、「だからバラの花のにおいも、クソのにおいもどんなだか想像もつかない」のだそうで、その影響で食べ物もインドカレーなどのスパイシーで味がはっきりしたもの以外は「段ボール食ってるみたい」に感じるらしい。ネイトがこの話題をとりあげた理由は、その影響かはさだかではないもののビリーが「他の人間には夢でしか叶わないポジティブな特性」も持ち合わせているからだという。
N: 医学的な用語は知らないけど、ビリーの体は日に3、4時間の睡眠しか必要としてないんだって。それで体型維持できてるんだよ。
B: そうそう。
T: なにそれ! うらやましい。それでも朝目が覚めた時、気力体力が充実した感じになれてるわけ?
B: うん。むしろ5、6時間以上寝ちゃうと調子悪くなる。
T: (ねたましさに視線を逸らし、囁き声で) ふざけんなや。
B: はははは!!(笑)
N: 言ってる意味わかったろ!? 我々より日に3時間以上長く時間を使えるから、X-Manなんだよ!
T: すごいパワーだ。
一方ではネイトの方も、『Tsushima』制作中、一時的にだが右腕が完全に麻痺してしまっていたとのこと。今は回復してきているそうだが、
N: (麻痺していた期間は)6カ月くらいかな。ネットの皆さんね、知らなかったら教えるけど、神経ってウルヴァリンみたいに日に1ミリずつくらい再生するんだよ! 私の場合(右腕の付け根を示して)ここらへんから利かなくなってたから、1ヶ月にこれくらいずつジリジリ回復してきたんだ。
B: じゃあ俺たち、どっちもX-manだな!
(一同笑い)
あっけらかんとした調子ではあるものの、右利きなのに左で文字を書いていた話や、医者にはもう右腕が使えなくなるかもしれないと宣告されていたという話を聞くかぎり、やはり一時は深刻な状態だったようだ。当時手指の拘縮予防に使っていたリハビリ器具は「いつ片腕が使えなくなるかわからないんだぞ」という戒めとして仕事部屋に飾ってあるという。わざわざ持ってきて視聴者にも見せてくれたのだが、
N: これつけてるとさ、人にヘロインを注入するスーパーヒーローっぽく見えるんだよな!
とやや危険なギャグをぶっこんでくることも忘れないネイトだった。
◆音楽ネタで盛り上がる面々
T: ビリーはカラオケ好きなんだよね。自宅にカラオケマシーンあるの?
B: はい!
T: ネイトはビリーんちに行って、歌ったりしたことある?
N: いや、歌ったことはないな。ただビリーが40歳になった時、盛大な誕生日パーティーを開いて、スタジオ中のみんなを招待してた。だよね?
B: 俺本人以外は全員ね。
N: で、行ってみたらカラオケ・パーティーだったんだよ。いやー盛り上がったのなんの。
B: 最高だったよー!
E: カラオケ行きたいなあ。
B: COVIDが落ち着いたらみんなでカラオケしまくろう。
N: カラオケの鉄板曲はなんなの?
B: 俺? 「Country Road」
E: (一節を歌って)West Virginia〜、Mountain momma〜♪ 僕はブリトニー・スピアーズの「Toxic」!
B: いいね〜え!
T: そうなの? 僕は鉄板曲あったかなあ。いつもはベアネイキッド・レディース(90年代に人気があったカナダのロックバンド。配信中も思春期に大ファンだったバンドとしてたびたび言及されている)の曲歌ってるけど。えーと、えーと……
E: ダイス、言ったことあったっけ? 僕が初めて行った、オーケストラじゃないロックコンサートって、ベアネイキッド・レディースだったんだよ。
T: そうなの? どこで?
E: シカゴ、じゃない、ミルウォーキーで。たしか13歳の時だったかな。
N: (挙手して) はい、質問があります! アール、今のはロックのコンサートに行くようになる前、よくオーケストラのコンサートに行ってたってこと?
E: そうだよ? 子供の頃チェロを弾いてたから。アジア系の子らしくね。
N: なんだってー!
B: (PS上での)招待送り終わったよー、でももうちょいカラオケネタ話そ。ネイトの鉄板曲はなんなの?
N: ザ・スミスの曲ならなんでも。どうもモリッシーと私の音域、ぴったりらしくてさ。
とっくに準備完了してるのだが、ダベりは終わらない。「僕モリッシーのことが大っ嫌いだから、ネイトには彼よりずっと上手く歌って欲しい」と語るアール・キムにビリーが「キャスティングの最中にそれ言わないどいてくれて良かったよ」と返し、またひとしきり音楽談議に花を咲かせて(うっかりタブー語を口走ったツジ氏に3人とチャット欄が焦ったりしながら)からゲーム開始。
◆響き渡るイタリアン&オージーアクセント
パーティーはツジ氏が牢人、ネイトが弓取、ビリーとアールが刺客という構成。まずは「青井の集落の守り」を赤銅モードでプレイすることに。余裕があるからか何なのか、アール・キムが防衛地「村外れ(原語版だとVilla)」を外国風アクセントで発音したところ即座に全員が乗っかり始めた。
E: ヴィッラ〜が片付いたか〜らウッマヤ〜に行く〜よ!
T: ウッマヤ〜に行く〜よ、イッヌ呼んだ〜よ!
B: イッヌ撫でる〜よ!
E: (普通の声で)僕らヨーロッパのどこの人設定なの(笑)
T: (気色ばんで)ナッニ言ってんの〜よ、イッタリアに決まってる〜よ!
B: どうしたって言うの〜よ!
E: それもそうだった〜よ!
T: 視聴者が120人になった〜よ! 減ったふったり〜はイッタリアの人にちがいない〜よ!
次にツジ氏が「ネイトはオーストラリアのアクセントでやりたがってたよね」と無茶振りすると、ブリスベンに住んでいたことがあるアールを中心に特徴を色々と話し合った末、最終的に全員アーノルド・シュワルツェネッガーの物真似をしはじめた。
T: 畑はごはん作るとこだよ、落とせないでしょ!
(だが防衛地が陥落し、いっせいに悲鳴をあげる一同。それが合図だったかのようにシュワルツェネッガー化する)
B: 畑へ向かえー!!
E: 俺は警官だぞ、バカ野郎!(『キンダーガーデン・コップ』ネタ)
B: 殺してみろ、俺はここだー!(『プレデター』ネタ)
T: 視聴者が減ったけど、そのうちひとりはアーノルド・シュワルツェネッガーなんだろなあ。
◆休憩あけ
無事赤銅九死をクリアし、尺八合奏でお祝いしてから休憩。戻ってくると、クールダウンも兼ねてか雑談再開。
T: ついついビリーの公的な肩書きを忘れちゃうな。何だっけ?
B: 俺も忘れるよー?
N: 肩書きはザ・ベスト・マン。
T: 現場で共同作業しながら働いてたせいもあると思うんだけど、みんな同じレベルみたいな気がしてて。ただおかしいのは、リック(・バウアー)がプロデューサーってことには確信あるんだよね。
N: (爆笑)
T: いい喩えを考えててさ。リックはディズニーランドに来てるお父さんで、僕らは「スペースマウンテン乗りたい!」って言ってる子供。で、お父さんが「それはいいな。だがこのあとスターツアーズが控えてる。ここであと1時間くらい遊んだら、次に行くぞ」って言うの。
B: じゃあ俺、博物館で酔っ払ってるおじさん。
T: (笑) それも大事な役割だよ。
B: 面白いよね。Sucker Punchでは肩書きみたいなのがないんだよ。俺の対外的な肩書きも「eMOTIONalist」だもん(と、名刺を示す)
N: ちょっと文字ちっちゃくて読めないな。
本人の説明によると、「eMOTIONalist(読み方はイモーショナリストだそう)」とはモーションや、キャラクターの展開がらみの何でも屋。社内で「シネチャー」と呼んでいる撮影、キャラクター、アニメーションを司る部門があり、そこを率いているが、スタジオでの撮影時には撮影監督という肩書きになるという。
◆「演者から頼まれた一番ヘンなことは?」
レオナード・ウーのゲスト回で「ビリーはなんでこの質問をみんなにするのかなあ?」とツジ氏が首を傾げていた「制作チームから頼まれた一番ヘンなことは?」という質問を立場逆転で直撃する場面も。関連して、ツジ氏が「これまで演者に頼んだことがある一番ヘンなことは?」という質問を追加する。
B: 演者に言われた一番ヘンなことって言ったら、おっきい方の用足しにトイレへ行く時、(モーキャプ撮影用のスーツの)マーカーを台無しにしないよう電話で指示してくれって言われたことかねえ。
T: あーはいはい、それなら僕かなり上達したなあ。しょっちゅう催してたから。
B: (笑い出して) いまの適当にでっちあげた。実際にはなかったよ。もうひとつの「自分がこれまで演者に頼んだヘンなこと」に答えると、『inFAMOUS』の時の方かな、あっちは異世界の力がらみの話だったから。デルシンを演じたトロイ(・ベイカー)に、突然「スモーク」の力に目覚める場面をやってみてって頼んだんだよね。なんでこの話をしたかっていうと、その時点まで、自分は他人に身体表現の説明するのが大得意だと思ってたからでさ。そしたら、ネイトがまっすぐこっちへやってきて──いまだに覚えてるんだよね。セリフや動きの解釈に相当するようなことを何もせずに、ただこんな風にやってみて! ってわからせようとしてたから。でもそれじゃ誰が相手でもどうにもならなくて、ちゃんとむこうが演技できるくらいまで言葉にしないとダメだったわけ。そこへやってきたネイトが、「じゃあ、手からゲロ吐くような感じを想像してみて」って言ったんだ。「あ、そうか。それだわ」と思ったね。ばっちり上手くいった。それが、これまで演者に頼んだ一番ヘンなことだよ。
E: それ、まんま日本のブトー(Butoh, 舞踏)だね。
B: ほんとそう。
E: かなり奇怪でワイルドな、日本の脱近代主義的なダンスの形態のことなんだけど。
T: ブトーなら大好きだよ。
E: 僕も。ということで、答えはブトー的なイメージで「手から嘔吐」と指示したことでした。
◆「フォトモードで仁にポーズをつけられる機能が欲しい」
という要望には、
N: おおー! いいアイデアだねえ。
B: ワーオ。いまやってるこのポーズどお? サケの瓶をとろうと手を伸ばしてるポーズ。
E: これフォトモードに入れらんないかな?(指パッチンのポーズ)。日本と韓国で大ウケすると思うよ。
N: どういう意味なの?
E: ハートの形を作ってんの。親指とこう重なってるでしょ。けっこう前からアイドルがやってるやつでさ。
B: ああ、(『アベンジャーズ』の)サノスかと思った!
T: いま僕の画面上でファンが送ってきてくれたフォトモードの写真を出してみてるんだけど、みんなアクション中の動きを撮影したりしてるんだ。それもかっこいいよね。
B: そっかぁ。しかしポーズとはねえ。
E: 革命的だよー。
B: Sucker Punchで働いてて気に入ってることは、ブライアン(・フレミング、創業者)、ジェイソン(・コーネル、クリエイティブ・ディレクター)、ネイトでも俺でもだけど、Twitter上とかでプレイヤーにリプライ送って戻ってきた反応で「えっ、こんなの知らなかった!」て発見したりすることなんだよね。プレイ中の人たちからの情報でバグ修正したりもしてるから。
E: 大好きだった「動かない腕」のバグも修正されちゃったなー。
T: 「板の型」ね(笑)
B: 「板の型」!(笑)
N: ダイスの配信で見たのすごい好きだったなー。「Sucker Punch、これ治してー!」
(ひとしきり笑い)
B: ネイトの言葉で気に入ってるやつに、「フィードバックは贈り物」っていうのがあるんだ。そういう見方でいなきゃいけない。俺たちはプロとして長年この仕事をしてはいるけど、エゴを捨てて耳を傾けないと。どんなに自分の仕事にプライドがあってもさ、プレイヤーが「大好きな作品だよ! でもこうすればもっと」って言ってきてくれることに聞く耳をもたなきゃ、とんでもない方向に行きかねないからね。ネイトはどうだろ、ゲーム業界で22年働いてきたけど、これまで携わったプロジェクトで出荷後も仕事が終わってない作品って、俺はこれが初めてだよ。
N: そうそう。全社一丸となってこのゲームに注力してきたからね。いつもそうではあるんだけど、今回は(発売後も)注力しつづけてるから。
B: すごいよね。こんなコミュニティまでできてるしさ。
と、ここでまた乾杯する一同だった。
◆「Legends」で目指したものとは
T: 『Legends』の話に移る頃合いかな。「『Legends』のように、メインストーリーとまったく違うものをやろうという発想はどこから来たのか」という質問がきてます。こういう協力プレイって、別のゲームでもやったことあるんだっけ?
N: うん。『怪盗スライ・クーパー 3』でごく小規模なマルチプレイヤーモードを、3Dモードと一緒にやってた。それから『inFAMOUS 2』ではユーザー作成コンテンツがあって、決してマルチプレイではないんだけど、通常のプロジェクトの領域からは外れたことをしてた。『Legends』モードの場合もそんな感じ。映画『七人の侍』は見ただろ? 仲間同士の絆とか、敵から襲撃を受けるとかのあの要素を双方向的なフォーマットでとらえてみたくて、協力プレイ型にしたかったんだ。
そしてやはり、日本の伝承や民話の超自然的な要素を盛り込めることも魅力だったという。「実際に侵略されたり抑圧されたり、脅威に晒されると、伝説や神秘主義に頼りたくなったりするもんじゃない。つらい状況を耐えぬくための希望をもたらすものとして」とビリー。ただし、『Legends』担当ディレクターであるダレン・ブリッジズも明かしているように、ゲームの企画当初からマルチプレイヤーモードの実装は視野に入れていたが機密扱いで、キャスト陣にも伏せられていたとのこと。
B: 今でもよく言い合ってるもん、あんな長期間よくまあ秘密を守り通せたもんだよなって。ネイト、またフリーズしてる?
(画面上でお地蔵様のごとく不動だったネイトが、声がけに反応を示す)
E: 戻ってきた、ネイトが動いた! クチバシの動きが見えた!(笑)
N: (我にかえったように、『ピーウィーの大冒険』中の記憶喪失になったピーウィーの台詞「アラモのことなら覚えてる」をかけて) オウルモード。オウルモードのことなら覚えてる。
E: (笑)
N; あの界隈でランチに行く大変さといったらもー、想像を絶するものがあるからね。周りがビデオゲームの制作スタジオだらけで、仕事の話ができないんだから。ランチの席で『Legends』モードの話はしない、それがルールだった。
T: Redditかどっかで、『Legends』の噂を嗅ぎつけた人の投稿があったんじゃなかった? 「小耳に挟んだんだけど協力プレイがあるらしいよ」って。で、Sucker Punch側が削除させたんだって。
E: さてはダイス、ひとりでネットの深掘りしてたな。
T: いやいや、たしかジェイソンがそんなような話をしてたんだよ。ずいぶん前のことだけど、それでも秘密を守り抜いたわけだよね。
◆「SPP在籍ライターの男女比は?」
「SPPのライターの男女比はご存知でしょうか? ゲーム内のトラウマに対する取り扱いがあまりに見事だったので知りたいです」という質問も。
E: たしか3:1じゃなかった? 女性ではリズ(・アルブル)が主要なライターで、あとはパトリック(・ダウンズ、百合のクエストなど担当)、ジョーダン(・レモス)、イアン(・ライアン、「誉は浜で死にました」などの台詞を手掛けた)。全員言えたぞ!
T: 「ゲーム内のトラウマ」ていうのは、ゆなの前歴と虐待を受けていた過去まわりの配慮のことを指してるんだろうね。でもライターが4人だけっていうのはびっくりした。たしか4人だよね?
B: うん。
T: それで全部? すごいなあ!
B: Sucker Punchには腕ききが揃ってるから。スタジオの頭数としては平均に比べて少なめけど、外注なんかにも頼ったりして、できるだけ少数精鋭を維持したいんだ。強力な戦力となる人、人格的にもすばらしい人を雇ってるよ。ネイト、たしかリズは『Legends』にもどっぷり関わってるんじゃなかったっけ。
N: 『Legends』と、政子殿関連もね。
◆「ダイスとアールは仕事相手としてどうでしたか?」
B: これはネイトが答えたらいいんじゃないかな? 俺は残念なことに──ほんと信じられないんだけど、アールとは一度も一緒に働いたことなかったからね! ただの1日も。
T: 信じられないよね。
E: そうなんだよ、1日もなかったんだよねー。ネイトどうぞ、噂話しちゃって。
(しかしネイト、ほのかな笑いを浮かべたままフリーズ中)
T: ネイト、フリーズしてるっぽい(笑)。ってフリーズなのかなこれ。
B: なんか寝てるみたい!(爆笑)
E: 目つきがいいなー、「このヤンチャ坊主どもめ」って顔してる(笑)
T: ものすごい上から値踏みしてる感じ(笑)。
E: 今にも携帯取り出して、メール見ながら「このアホどもが仕事相手としてどんなもんだったか教えてやろうじゃないか」ってやりそうな顔だよ(笑)
B: (ネイトが画面から消える) あ、落ちた。で、俺とアールと会えてなかった話がらみですごいのはさ、初めてちゃんとした交流がもてたと思ったのが、プレイ配信で典雄との初対面を見た時だったんだよ。今でも覚えてるけど涙が込み上げてきてさー。うちで見てて、次の展開がわかってたから、「来るぞ来るぞ」って身構えてて。とうとう典雄と出会ったその時、君がふと黙って、そこからはもう「ああ……」って(筆者注: アール・キムがゲーム内で典雄と初対面した際の反応はこちら)。すごいもん見ちゃったな、にしてもこの人と一緒に仕事してないなんて! と思っちゃったよ。制作の現場なんかでも、あんな長いこと作業してたのにさ。
E: ほんとだよねえ。そこからメッセージのやりとり始めて、典雄のGIFショットをシェアしてくれるようになったりしたんだった。あれびっくりするような出来だよね、細部のレベルとか照明とか、場面の構成にあらためてぶっ飛んだし。うちの親なんかあれ見て見事に騙されて「あれあなたがやってるの?」って不気味がってたもん(笑)。「名目上はそうだけど違うよ、でも僕ではあるよ」って言っといた。
ネイトがなかなか画面上に戻ってこず、ビリーがさらに続ける。
B: ダイスと仕事した上で一番でかかった経験は、撮影第一日目からいつも静かなるリーダー的存在でいてくれたことだったかな。思慮深さと、口に出した言葉でっていうより、やってのけた仕事でおのずと周りから尊敬されるタイプなんだよ。現場のみんなにとっての尺度にもなってたしね。アールに関してはわからないけど、スマリー(・モンターノ、ゆな役)やエリック(・スタインバーグ、志村役)、パトリック(・ギャラガー、コトゥン役)との会話からわかったのは、みんながダイスケを場面のムードやフィーリングを適正に整えるリーダー役と見做してたことだった。
E: まったくその通り。
E: あるひとつの物語を語るだけじゃなく、自分たちの世界を形作ってるつもりでいたから、ダイスケはそのためになくてはならない人だったよ。
T: えー。参っちゃうなあ(笑)
E: 人ってお互いの関係性から自分たちのこと考えたりするけど、文字通りの錨って感じで、スマリーと演じるダイス、ローレン(・トム、政子役)と演じるダイス、フランソワ(・チャウ、石川役)と演じるダイス、まさにみんなを繋ぎ止める役割を果たしてたんだよね。
舞台のワークショップに似た形式で作り上げられた『Tsushima』の世界は、「皆でともに見出したもの」という感覚があるようだ。主人公として出ずっぱりだったツジ氏は他のキャラクターの視点も把握しており、ある意味「全知全能の存在」としての視点も持ち合わせていることを、他のキャストも常に理解していたと思う、とアール。ベタ褒めされた「座長」ツジ氏はというと、
T: わあ、ずいぶん沢山だな。僕そういうことしてたっけ? すごいじゃん。
と照れ臭そうな様子だった。
◆馬と戯れる仁の正体
T: 僕からも質問があるんだよね。クエスト終了時に境井仁が馬と一緒にいるシーンがあるじゃない。イエスかノーかで、ビリーかネイトに答えてもらいたんだけど、馬といる時の仁のモーキャプをやってるのはふたりのうちどっちかなの?
N: ノー。
B: ノー。でもあの部分に関ってるみんなの名前を挙げると、デビッド・サベージ、ダニエル・ギャビンのミッション・デザイナー2人。それとジョン・オルソン、ゲーム中で馬を受けもってくれたアニメーターだよ。彼は狐を撫でるシーンも手掛けてて、うちの動物担当なんだ。
N: すごいアニメーターだよ。
T: え、じゃあ全部アニメーションなの? それともモーキャプも入ってる?
B: アニメーションだね。あ、いや、2カ所はモーキャプもあるか。立ったままのシーンとか。でも俺的にはやっぱり、眠ってる馬に仁が寄り掛かってるやつかな。あれは全部アニメーション。
T: そうなんだ……!
E: すごいなあ!
◆すべての始まり
制作裏話をもっと聞かせて欲しいというリクエストに対しては、『Tsushima』の企画がスタートするそもそものきっかけとなった出来事が語られた。
B: ネイトと俺は、ひょんなことからお互いの関心分野が似てることを発見したんだよ。封建時代の日本文化や歴史だけじゃなく、サムライのチャンバラとかね。『Second Son』の撮影中、フライトに大学時代からの蔵書『葉隠』を持ってったことがあってさ。読みながらマーカーで印をつけたりしてたら、ある時隣合わせの席に座ったネイトが「は!?」ってなってて。
N: 「お前もかよ!?」って(笑)。
B: それから何とか幸運に恵まれて、こういうゲームを作るとこまでこぎつけたわけなんだよ。小さい頃から触れてきた分野にかなり近いものを。
N: ちょうどこれがデスクの上にあったんだけど(と、『子連れ狼』英訳版を画面に示す)。普段から読んでるやつだからね。
ビリーも画面外へ手を伸ばしたと思ったら、そっくり同じ表紙の本を取り出した。大笑いするアール・キム。
N: 2人とも好きなジャンルだから。
E: そういえば僕も持ってるの思い出した。確か寝室に一冊あったはず。
T: ほんと? 僕はないなー。
B: ネイト、あと別のも1冊あるよ。
と次に取り出したのは、すでに日本の媒体のインタビューなどでも『Tsushima』のインスピレーション元として紹介されているスタン・サカイ著のコミック『兎用心棒』。現在Netflixにて「Samurai Rabbit: The Usagi Chronicles (原題)」としてCGアニメ化企画が進行中らしい。
E: 『兎用心棒』だ!
B: すごいのはこれスケッチブックでさ、原作者のスタン・サカイも素晴らしい人なんだ。会うとサインをくれて、コミコンなんかにいくと──だからコミコンがなくて寂しいんだけど、彼は毎年サンディエゴ・コミコンでスケッチブックのシリーズを出してて、しかもファンのこと覚えててくれるんだよ! 特別に絵を描いてくれて、それにサインをくれるんだ。
既報の通り、仁の姓が「境井」になったのもスタン・サカイにちなんでのことである。ネイトにとっても「スタンがいなかったら黒澤明に出会うこともなく、『Ghost of Tsushima』も存在しなかった」と断言するほど大きな存在なのだとか。ふたりは各所で『兎用心棒』愛を公言しているので、将来的にはコラボ企画なども期待したいところだ。
◆ビリーからツジ氏へ、ある意味究極の質問
B: こっちからも質問がある。境井仁っていう役のどんなとこに惹かれたの? 君はこのキャラを体現する役者としてこの上なくユニークな人だと思うから聞きたい。長年一緒に働いてきた経験から言えば、ネイトはいつも予期せぬものを評価し、求めてる人なんだけど、自分は役にひと味違う何かをもたらしたと思う? 君にとって境井仁ってどんな人?
T: うわー、そんな質問──最初の方にも話に出てたよね。
B: 一本とられた! じゃあパス。
T: (笑) いやー何だろう、っていうか僕もその流れで「境井仁のキャスティングの経緯ってどんなだったの?」って聞こうとしてたんだよね。詳細は話せないにしてもさ。
E: (身を乗り出して) 全般的なキャスティングもどうだったの?
T: 配信外にでも聞くつもりだったんだよ。僕の場合は、幸運にもネイトとアイヴィー(・アイゼンバーグ、キャスティング・ディレクター)と一緒に、他のみんなのキャスティングの場にいさせてもらってた。開発中の全部がなつかしいけど、あの時のことはとくになつかしいなー。で、境井仁の役については、まったく何もわかってなかったよ。以前もした話(参照:PanGeekeryゲスト回や、トロイ・ベイカーとの対談など)なんだけど、オーディションシートを見た時に「絶対ものにしなきゃ。ドンピシャの役だ」と思ったんだよね。「これ僕の役だ」って。落ちてたまるかくらいの気持ちでオーディションに参加したわりに、コールバックでのネイトとの面談にはいつもの緑のパーカーで行ってたんだよなあ(笑)。
N: 今どこにあんの?(笑) ダイスといえばあれだよ。
B: あのパーカーいいよね。
T: 当時のビデオを見る機会があったんだけど、うっわ、めっちゃ緑だしめっちゃ明るいなって思ってさー(笑)。でもようは僕が僕のまんまで、ジェイソンのした狐の話を──もうゲーム内にはない、コールバックでの狐とのシーンね。僕が狐に向かって尺八を吹いて、食べ物をあげるところを脚本どおりやっただけ。さっきゲストで来てくれてたカレン(・ヒューイ、百合役。同日の配信の前半部分は彼女がゲスト出演していた)も言ってたように、「すべては脚本に込められてる」ってやつで。
(カレンに向かって挨拶する一同)
T: 以前はそんな風に考えたことなかったけど、カレンはきれいにまとめてくれたよね。僕がやったのもそういうことで、脚本から読み取った情報をもとに、できるかぎり誠実に演じたつもりだよ。それ以上のことはわからないな。あとは境井仁と『Ghost of Tsushima』を、みんなと一緒に見つける旅だったから。
◆自キャラのGIFを作ってもらう俳優のきもち
JinNorio SagaからDandE Sagaに名義変更してからというもの、配信画面がプロ仕様になってきたダイスケ・ツジ、アール・キムの両アカウント。アールの方ではサブスクライブ通知用として、新たにSucker Punch謹製のこのGIFを使用できるようになったようだ。
E: サブスクリプションやギフトサブが来ると、このGIFが通知として表示されるようになったんだよ〜。すっごい気に入ってる。サブスクでみんなが得するんだよ! みんながこれ(GIFのジョナ・ヒル風仕草を再現)見られるし!
T: ……境井仁のGIFはないの? この気持ちはどうやら嫉妬っぽいな。
E: ダイスはもういっぱいあんじゃん!(笑) 僕はいっこだけで、しかも昨日ようやく来たばっかなんだから取りあげないでよお!(笑)
T: アハハハ!(笑) そうとは知らなかったんだってー。
E: サムズアップするやつとかあるよね。
T: うん、あれは堅二だね。
B: そう、堅二ね。
(筆者注: 堅二バージョンと仁バージョン、両方あり)
E: あ、そっか! でもレオ(レオナード・ウー、竜三役)との「マブダチ」のはあるよね? 「俺たちもうマブダチだよな!?」「うん!」てやつ。
B: ダイスケ、君のGIFならアワードシーズン向けにまだとっておきのがあるから。絶対気にいるよ。
T: そうなんだ、ってそれで思い出した! ゲームアワードについては楽しみにしてる? 何種類かはよく知らないんだけど。たくさんあるの?
B: さあねえ。だって俺たちもう勝ってるじゃん。
E: イエス!(笑) すでに勝ってる!
B: ひとつ、狐を撫でることで(2020年のTwitch 「Chat’s Choice Awards」の「この夏もっとも胸にキュンときたゲーム内での瞬間部門)受賞してるしね。
T: それもそうだ。
E: 僕はファミリーに栄光をもたらせなくて、すんませんでした!(同アワードでは別部門で典雄もノミネートされていた)
B: いいや、勝ちっていうのは、今のこの状況のことだよ。7月に出荷したゲームを世間の人がまだ遊んでくれたり、興味を持ってくれたり、話題にしてくれてるんだから。それにほら、いまも土曜日に行き当たりばったりに配信してるのを、200人近くの人が見に来てくれてるわけじゃん。こりゃやっぱりもう、勝ちだよねぇ。
◆みんなでWalk It Out
T: さて最後にもう一回プレイする? というか気分はどう、ネイト。大丈夫かな(笑)
回線がやや不安定なせいか、あるいは普段からそうなのか、黙って(そして動かざること山のごとく)話を聞いていることが多いネイト。気心の知れた面子から見ても、もしや機嫌が悪いのかと若干不安になるようだ。
N: というかダイス、私が一休み中にムッツリしてるような顔に見えるのは、さすがにもうわかってもらえてるかと思ってたぞ。
T: オーディションの時なんかはそれ、ちょっと大変かもね。実際には顔とは大違いの人なのにさ。
E: (笑い出し、歌い出す) 「顔とは大違い」〜♪
(ネイトも笑い出す)
T: (笑)だってときどき心配になるんだよ、一息入れてる時の顔見ると「あれ、ネイト怒ってんのかな?」って。そのたび「いや、あれがネイトの普通なんだった」って思い直すの(笑)
N: 私が考えごとしてる時の顔も、赤ちゃんがウンチでいきんでるみたいだからなぁ。
T: (笑)それで思い出したけど、開発の終盤、ときどき何かで行き詰まると、ネイトは駐車場の周辺とかに短い散歩に出てたよね。行ったり来たりする程度に。あれが本気で考えごとをしてる時のネイトの癖なのは覚えてる。
(ネイト、開発中の苦しみの中での散歩をジェスチャーで再現。なぜかビリーとアールも再現)
E: 歩いてモヤモヤ発散しないと!
T: たぶん、テストプレイの結果があがってきた後のことだったと思うんだけど──
E: みんな歩いてる! ダイスもほら、歩いて発散! Walk It Out, Walk It Out!(アンクの2007年のヒット曲「Walk It Out」のサビ)
T: (致し方なく参加して)まだ着ぐるみ着てて暑苦しいのにー、なんでやるのお(笑)
E: そうめっちゃ暑苦しいー、なのになんでやるんだろー(笑)
みんなでひとしきりWalk It Outしてからやはり暑かったのか、手で顔を仰ぐアール。ビリーの補足によると、開発終盤はテストプレイのフィードバックが次々あがってきた時期だったらしい。
B: フィードバックは大事。でも俺とリックは当時、ネイトにはむしろ読まないよう言ってた(笑)
T: それ覚えてるなあ(笑)
B: あ、覚えてる? そう、何も今後一切読んで欲しくないとかじゃなく、今はやめとけと(笑)。とりあえず撮影。今は楽しくイベントシーンを終わらせようって。ただ後日打ち合わせを重ねた結果、ゲームがよりよい形になったよ。
◆ネイトの奥の手
回線途絶が頻発してよくフリーズしていたネイトの画面。他の3人が時折落ちていないか確認する流れができてきた。
B: ネイト、なんか言ってみて。まばたき2回やってみるとか。
T: ネイト大丈夫かな?
E: また落ちちゃってる?
N: いや、実はだね(すぐに返事があり、歓声をあげる三人)。奥の手を使ってみたんだよ。お隣さんのwi-fiに繋いだ。
E: (笑)
B: オーノー。
T: は!?
N: 内緒だぞ!
T: いまこれ配信中だよ、みんな観られるのにー。
E: 最高(笑)
T: まあ当のご本人たちは観てないはずだけど。
E: ヨーホーヨーホー、海賊ぐらし♪
T: 隣の人のWifiパスワードを入手したわけ?
N: イエス。
(一同爆笑)
T: そんな、正面切って(笑)
E: みんなもうわかるだろ、この人リードハッカーなんだよ(笑)
B: 笑えるけど、そんな珍しいことでもないんだよ。いま観てるかどうかわからないけど、俺が回線のハイジャックしなきゃならなくなったら、友達の中にあてがあるし。むこうもこっちのパスワード知ってんの。(ゲーム業界の)プロがやる手なんだ。
E: wi-fiをシェアしあうのかあ。
T: あ、そういう共有のやつなんだ? 隣の人もそっちのパス知ってるの?
N: 言われれば喜んで教えるさ。
T: (耐えきれずまた爆笑)
N: 私は君らすてきな仲間たちと繋がろうと、あれやこれや必死に頑張ってたんだが上手くいかなくてね。回線が落ちつづけてたもんだから。
T: この時間帯ならネトフリ見たりせずに寝ててくれるよ。
B: ベッドで「なんで『The Boys』ロードされないの?」ってやってるかも(笑)
N: 埋め合わせなら何かしらはするとも。バケーション中に泥棒に入られないよう、玄関口で荷物受け取ってあげたりとか。
◆ネイトからの質問
N: ここで訊くのが名案とは思えない質問をしたいと思います!
B: おお、なに?
N: 君らふたりはプロの役者だよな。
T: もちろん。
N: てことは、これまで色々やってきたわけだ。
T: どーいう方向へ話を持ってこうとしてんの?(笑)
E: (笑)そうだよ、なんなわけ?
N: こないだの晩『Game of Thrones』を観てたら、セックスシーンがあってさ。こういうのやる方の役者はどんな気分なんだろうと思ったんだよ。君らふたりは経験ある?
T: ないなあ。僕はない。
E: 舞台や映画での完全に親密なシーンはないけど、ロシアにいた時あったかな。と言っても、キスしたりイチャイチャする程度。「情熱的なまさぐりあい」くらい?
B: 重めのペッティング?
E: そうね、重めのペッティングね(笑)
N: おっ、今のでダイスが赤くなった(笑)
E: でも近頃のダイスは男性版アンジェーヌ(筆者注:文学/演劇用語で「汚れを知らない純情な娘役」のこと)だったから、いずれ絶対濡れ場のある役も来るでしょ。
T: 別になかったけどなあ。あ。でも大学の時、完全に服着た状態で別の役者に乗りかかかられて、彼女が僕の上でオーガズムに達するっていうシーンはあった。そういうフリだけで、(役柄の上での)本当のオーガズムじゃないやつ。舞台の上で裸になったことはないなあ。アールだったらやる?
E: あー、そうだねー。比較的抵抗はないよ。ロンドンにいた時に出たショートフィルムで、バスタブの中で銃に撃たれるシーンがあって、そこではまあ脱いでたかな。
B: で、死体になった君とセックスするわけ?
T: (笑)
E: いやいや! それとは真逆の、バイオレンスだけのシーンだったよ。 格闘シーンの演出や振り付けの仕事もたくさんしてきたんだよね。
アールによると、俳優が働く現場では近年、「インティマシー・ディレクション(親密なシーン演出)」という新しい職域が確立されており、妙な雰囲気にならず仕事を進められる自信を俳優に与えてくれるようになったらしい。過去に出演した舞台『Botticelli in the Fire』はホモセクシャル、ヘテロセクシャル問わずあらゆる種類の濡れ場があったため、2名のインティマシー・ディレクターが安全性を確保しつつ、俳優たちが気まずくなることなく仕事できるよう、諸々の配慮をしてくれたそうだ。格闘シーンと同様、どこまでなら踏み込んでよいかの基準は個人によって異なるため、俳優のためにその線引きをするのが彼らの仕事なのだという。異なる業界の実例を知って興味深そうなビリーとネイトに、ツジ氏からゲームの制作現場で親密なシーンを担当したことはあるか、という質問が飛ぶ。ネイトが披露したのは、「親密は親密だけどガチのではない『inFAMOUS Second Son』」での事例。
N: 主人公デルシン役がトロイ・ベイカー、デルシンの兄役がトラヴィス・ウィリンだったんだが、このふたりは実生活では大の仲良しなんだよ。で、そこへフェッチ役に応募してきてくれたのがローラ・ベイリー。後で知ったところでは、彼女はトラヴィスの奥さんだったんだ。オーディションの時は知らなかったんだけど、すぐ後にわかってさ。全員ファミリーみたいなメンツが揃ったってことだから、最高だなと思ってた。お互いのことをよく知ってて大切に思ってる同士なら、一緒のシーンをやるにもいいからね。でも、あるひとつのシーンで、トラヴィスの奥さんであるローラが、トロイのキャラクターと付き合うことを心に決めるところがあって。
T: そこなら見たなあ。
N: そのキャプチャーをやってたんだけど、トロイが言うところの「彼女がエッフェル塔をよじ登るみたいに自分をよじ登ってくる」シーンがあったわけ。
E: (笑)
N: で、収録中、身長195cm超えでアメフト選手体格のトラヴィスが、私の前腕をつかんでギリギリ圧迫してきて。
E: 文字通りのアメフト選手なんだよ、彼。
N: プロフェッショナルに徹してくれてたけど、かなりの苦行を強いることになって、可哀想な目に合わせてしまったんだよなぁ。まあがっつり親密なシーンってわけじゃなかったけど、あれは人付き合い的にかなり気まずかった。
◆バラッバラのエンディング曲
日本酒の瓶(おそらく一升?)をほぼ空けて、「まだシラフ!」と言い張りつつもだいぶご機嫌なビリー。『悪魔のいけにえ』はマシュー・マコノヘイとレネー・ゼルウィガーが出演している『悪魔のいけにえ/レジェンド・オブ・レザーフェイス』(1995年作、日本では未DVD化)が最高だと力説するのだが、もう「ゼルウィガー」が言えてないことをネイトに突っ込まれていた。そろそろお開きの空気を感じとってか「もうさあ、ずっと配信してよーよぉ!」と名残を惜しみまくるビリー。ついには、
B: みんなでなんか歌お! ミュージカルナンバーでしめくくりを飾ろう!
と言い出した。相談の結果、十八番「Country Road」で配信を締めることになった。
B: よっしゃ、ちょっと待って。別に最初から狙ってたわけじゃないフリしといてっとぉ(手元で何か操作しはじめる)
E: (何かを察して) これ著作権ストライクくらっちゃわない?
T: ただ(アカペラで)歌うだけなら大丈夫。
E: だよね。(だが、曲が流れ出す) だめだめビリー! 曲流すと著作権ストライク、著作権ストライク来ちゃうから切ってー!
B: (音楽ストップ) そうなんだ?
T: てかそれってどういう意味なの?
B: じゃあただ歌うだけにしよう。オッケー! Almost heaven, West Virginia〜♪ Blueridge Mountain, Shenandoah River〜♪
だがツジ氏は歌詞うろ覚え、ネイトはコーラスパート担当のつもりか手踊りで参加、アールも同じくコーラスパート参加のつもりでライターの火を揺らしていたが、歌いだしが一向に合わない。
E: この曲悲しいなあ、それに難しいよ。みんなで合わせるの大変すぎ。
B: だよなぁー。しかし、アールがどんぴしゃで「著作権」! で注意してたのすごくない?
E: (笑)ごめんごめん。
T: 一方僕は「大丈夫じゃなーい?」て感じで。だってさ、ほかでは(配信者が)カラオケやってたりしてるじゃん? わかんないけど。それで最悪どんなペナルティーがくるわけ?
N: あれはカバーだからいいんだよ。
そこでまた何を歌うか紛糾するのだが、こりゃ決まんないなと見たか、とうとうアールがギブアップした。
E: ともかく僕もう落ちないと!(笑) みんな大好きだよ、とってもすてきな時間でした(笑)。Another turning point, a fork stuck in the road〜♪(Green Dayの「Good Riddance」)
B: 待って。そんじゃあさ──
E: いや、ほんとに行かないと。自分の配信ももう止めるし(笑)。ダイスはわからないけど僕はそろそろ。
N: 一緒に遊んでくれてありがとう。
E: 遊んでくれてありがとね。
T: ただだべってるだけならこのまま続けるけど、配信だからね(笑)
B: じゃ俺は『悪魔のいけにえ』シリーズでも観てきまーす。
T: うん、そうしなー(笑)
E: じゃあ観てくれたみんなにも挨拶しよ。みんなありがとー、またねー!
B: ありがとー!
連絡事項を2、3追加し、以上で配信はグダグダのうちにお開きとなった。