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松本家/りんご/宇宙
8月27日から3日間、「第1回松本家展 -現在地-」を開催した。まずは一緒に松本家に行って展示制作にも参加してくれたみんな、展示会の開催に尽力してくださったすべての人に感謝したい。実際に会うこともままならないなか、zoomやLINEで相談を重ね展示会の開催にまで漕ぎ着けたことは多くの人の協力なしにはできなかった。短い準備期間でも展示会を開催できて本当に良かったと思う。第2回を開催したいと思えたこと
もっとみる物語られる松本家で -1-
一軒の家があります。福島県は浜通りの西の端に位置する葛尾村の、そのまた北の端の方に建つ二階建ての木造住宅。花崗岩質の裏山(この地方の地質は基本的に花崗岩質ですが)を背にし、玄関前にはなだらかな斜面が眼下の県道まで伸びています。裏山ではスギ、ヒノキやクヌギ、コナラの木立が枝を伸ばし、家の前の斜面には季節ごとの草花が茂ります。一階の内縁からは日々の季節のすべてを見ることができるはずです。その家が松本家
もっとみる空間によって宇宙は私を包み、思考によって私は宇宙を包む。
周囲を山脈に囲まれて、下草の点在する平原が広がっている。山脈を越えると海を遠望することもできるが、海風は山脈に阻まれて平原までは届かない。それゆえこの平原は一年中いつでも乾燥している。平原の中央を横切るように一本の道が伸びている。古代から利用されてきた通商路だとされる。最初に平原を通過した隊商の足跡を次に訪れた者がなぞり、そのまた次の者も同じ足跡を辿り、そうしていつしか重なった足跡が踏み固められ
もっとみる葛尾村とこころとかたち
※おことわり。このお話は私の個人的な体験をもとにして思うところを綴ったものです。葛尾村での学生の生活はこちらを併せて読むと具体的にイメージできると思いますよ。
大学の夏休みを利用して、今年の8月は葛尾村に滞在していました。去年の稲刈りに誘ってもらって初めて訪れて以来何度か訪問してはいましたが、今回が初めての長期滞在になりました。予定としては滞在期間を利用してバースタンドを設計、製作するつもりであ
ケンチクオタクの建築概論•後編
「建築とはなんだろう」
建築は行為である。1年間の思考をこの実感から出発させることにした。それは作る人の行為であるとともに使う人の行為でもある。
本屋の建築ブースの棚にはよく建築家の作品集が並んでいる。私がかつて夢中になった本たちだ。だが果たして建築は建築家の”作品”なのだろうか。建築とはもっと多くの人を巻き込んだ共同の営為なのではなかろうか。まずお金を出す人がいて、設計者が線を引き、数
ケンチクオタクの建築概論•前編
「建築とはなんだろう」
この1年、何をするにせよこのことが頭の片隅にあった。ちょうど1年前の3月、大学に落ちて、知り合いに相談に行った。そこで何気なく言われた一言に冷水を浴びせられた気がした。「建築で何がやりたいの?」自分は何がやりたいのだろう。言葉が出なかった。
それまで建築が大好きだと自認していた。いつも建築のことを考えているつもりだった。でも実際は、お題目のようにケンチク、ケンチクと唱