「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第11話
「陶芸家のゴダイさん(2)」
(↑ハルオとサクラがイメージしていた花瓶)
陶芸家のゴダイさんは、オンボロ屋敷の、ハルオと妹のサクラの顔を交互に見ながらが事のしだいを説明しはじめた。
「サクラちゃん、ごめんよー。またいつもの調子で、サクラちゃんに頼まれていた花瓶を間違ってわっちまったんだよなー。いやー、せっかくサクラちゃんに、ちょーど良いものが出来たのにさー。本当に、ごめんよー」
と言って、ボクたちに向かってゴダイさんは、手を合わせるのだった・・・。
ゴダイさんの説明によると、妹のサクラが、ゴダイさんに頼んでいた、占いルームのテーブルに飾る花瓶を失敗作の品と間違って壊してしまったというのだ。
その説明をするのに、ゴダイさんは身振り手振りで壊すところとか、間違って壊したことに気づいて頭を抱えてしゃがみ込む様子などを。こと細やかにジェスチャーまじりで説明するものだから、ボクたちは可笑しくなって笑ってしまったのだった。
しかし、こんな事は、おっちょこちょいのゴダイさんにはよくあることで、妹のサクラの頼んだ花瓶も、ゴダイさんが間違って壊してしまったのはもうこれで2回目だった。
1回目の時には、電話で連絡がきたのだが。
流石に2回目という事で、ゴダイさんは慌てて自転車でボクたちの家までやってきて知らせてくれたのだ。
ひとしきりゴダイさんの言い訳のような説明が終わると、サクラが、
「ゴダイさんが、暑そうにしていたからアイスコーヒーにしたわよ」
と言ってコーヒーを持って来てくれた。
ゴダイさんが、一息入れてアイスコーヒーを飲んでいると猫のコムギがゴダイさんの足元にじゃれ付いてきた。
すると、猫好きのゴダイさんとコムギとのじゃれ合いが始まったのだった。
ゴダイさんがネコと遊ぶ時には、まるで自分も猫になったように四つん這いになって近くにある紙を丸めて、それをまるで猫とのサッカーをしているようにして遊ぶのだった。
「コムギちゃんカワイイニャー、でもこのボールは僕のだから絶対に渡さないニャー」
などと言いながらゴダイさんは、コムギと本気でボールの取り合いをするのだった。
これは、ゴダイさんが我が家に来るたびに毎度の恒例行事のように繰り返されることだった・・・。
しかし、そんなゴダイさんの姿を見ていると、とてもこの人の作品が人気で、なかなか手には入らない陶芸家であるとは思えないのだった。
だが、じつはゴダイさんは、陶芸界では高名な人物であり、その作品も東京でも有名な陶芸店でも高値が付く陶芸作家なのだった。
だから本当は、とてもボクたちが手が出せるような品ではないのだが。
桃色ヤモリくんの夢のお告げにより、妹が始めたおみくじサイトが当たって少しだけ僕たちの生活にも余裕が持てたので。
ときどき、サクラに占いを頼むことがあって知らない中でもなかったゴダイさんに。
サクラの占いテーブルを飾る花瓶を、おそるおそる頼んでみる事にしたのだった。
すると、ゴダイさんは快く引き受けてくれて、しかもボクたちの為に格安で作ってくれるという事に成っていたのだが。
もう何カ月も、サクラの花瓶は待ちぼうけをしているという訳なのであった。
(↑ゴダイさんがサクラの為にじっさいに作った花瓶)
その後も、ゴダイさんはたびたび我が家にやってきた。
その理由は、なかなか思ったようなものがてきないと言い訳のような愚痴のような事を話して、いつものようにコムギとのサッカーを楽しんで帰って行ったのだったが。
それが果たして、本当に言い訳だったのかそれともコムギとの遊びを楽しみにやってきていたのかは分からなかった・・・。
そして、待つこと1年と数カ月、やっと待望のゴダイさんの陶芸作品の花瓶が我が家にどいたのだったが、その作品はボクたちが想像していた花瓶とは少し違っていた。
そのゴダイさんの陶芸作品は、何だか不思議な形だったけれども。
とても可愛いいし、もしかしたらボクらの分からない何か意味のある形だったのかも知れないのだが。
とにかく妹のサクラは、その花瓶が気に入ったようだったし、ボクも、猫のコムギも満足していたのだった・・・。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
連載小説(不定期)
「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第12話「不思議のお店のアタリちゃん」へ つづく
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
連載小説(不定期)「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第11話「陶芸家のゴダイさん(2)」
終り
第10話はこちら
第12話はこちら
2020.9.26