「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第5話
連載小説(不定期)「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第5話
「ある事件」
ボクたちが南の国での休日を楽しんで帰ってみると、ボクたちにとっては大変な事件が起きていた。
その大変な事件とは、我が家の飼い猫コムギの、世話を頼んでいた猫カフェ西川のマダムの所からコムギが脱走してしまっていたのだった。
猫カフェ西川とは、西川マダムがもともと動物好きであったことが高じて保護施設から引き取った猫たちを、自宅を改装した猫カフェで自由に遊ばせて新しい飼い主を見つけてあげることへの橋渡し役も兼ねていたのだった。
コムギは、我が家に来てからは完全に室内飼いで、外へ出す事はなかった。猫にとって、外の世界は交通事故や感染症など色々と危険が多いためだ。
もちろん、西川マダムは自分の不注意で脱走させてしまったコムギのことに責任を感じていたので。
あちこちと、コムギのことを探しまわってくれていたが、一向に見つからずにいたのだった。
それにマダムには、他の猫たちの世話もあるので長い時間店を留守る訳にもいかなかったのだ。
そして西川マダムは、ボクたちに心配をかけたくなとの思いで黙って探し回っていたのだった。
この顛末は、後からボクたちが西川マダムから聞いて知った事である。
しかし、そのような事を知らないボクたちは、早くコムギの顔を見たくて寂しい思いをしているであろうと迎えに猫カフェ西川に向かったのだったが。
ちょうどその時は、コムギがいなくなってから3日たっていたそうだ。
そんな心配をしてコムギを探し回っていたマダムの心とはうらはらに。ボクたちは、マダムの店の前で脱走中のコムギとちょうどバッタリと鉢合わせをしたのだった。
その時の様子はこうだ。
店の前で、妹のサクラが素っ頓狂な声を上げた。「あれ、お兄ちゃん見てよ、お店の外にコムギちゃんがいるよ!」
「なにをバカな、コムギがマダムのお店の外にいる訳が・・・。あっ、あれれっ、コ、コ、コムギ!どうしてここに?」
コムギは、ボクたちの姿を見つけると嬉しそうに直ぐに側に駆け寄ってきて。そして、妹のサクラの足もとに頭を擦り付けてきた。「まあ、コムギちゃんどうしてお外にいるの」と言ってサクラはコムギを抱き上げたのだった・・・。
サクラに抱きかかえられて家に帰ったコムギは、ゴロゴロと喉を上機嫌で鳴らしながら3日ぶりの食事をした。
そして、家のコムギ専用の何時ものお布団の上で、満足そうに前足で顔を念入りに拭いてから長くなって伸びをすると、横になってくつろいでいたが、いつしか眠りについていた。
コムギ。君は、この三日間、何処でどんな探検や冒険をしてきたのだろうね?
そして、いま安心してぐっすりと眠っている君は、一体どんな夢をみているのだろうか・・・。
連載小説(不定期)「オンボロ屋敷の桃色ヤモリくん」第5話「ある事件」
終り
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連載小説(不定期)
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2020.8.15 8.20加筆、修正