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何度でも、


昨年のW杯からBリーグを追い始めた私。
他地区相手のアウェーの試合に足を運ぶ勇気はまだまだだったが、ホームの試合には12月以降は可能な限り観戦に行けた。幸い住んでいる場所がギリギリ関東圏なこともあり、宇都宮へ鈍行でも日帰りが可能な距離だった。
何度も試合を観に行って、観に行けない日はバスライで試合内容を追って。
その度に、何度も何度もこのチームを応援していてよかったという気持ちを貰った。それは負けた試合でも、勝った試合でも同じだった。
比江島慎に出会って、宇都宮ブレックスを知って、このチームのバスケットボールを好きになって本当に良かった。何気ない日常の憂鬱さえ、彼らのように乗り越えようと自分を律せた。ダメな自分に負けてしまった日も、彼らのように明日からまた一つ一つ前進しようと思えた。


レギュラーシーズンでの敗北は58試合を消化した現時点で9つ。でも、もう一つブレックスには忘れられない敗北がある。2月14日の天皇杯SF千葉ジェッツ戦。平日で繁忙期だったこともあり、現地観戦に行ける余裕がなかった私(そもそもチケットもなかった)はバスライでこの試合を観ていた。
第2Qまでは点差だけを見ればブレックスが大量リードしていた。しかし、第2Qの終盤で少しの綻びが見え隠れしていたように思える。魔の第3Q。そこからはもう、記憶が朧げだ。試合が終わって、バスライのカメラがベンチに座り込んだまま立たないエースの表情を映した。忘れることはないだろう、初めて見る比江島慎の表情だった。
その夜は悔しくて悔しくてよく眠れなかった。そうして一日二日と経っても、その悔しさは拭い去ることはできなかった。
このチームなら勝ち取れる、誰もがそう信じだからこそ誰もが悔しかった。渡邉裕規の言葉を借りれば、「身体のものが全部出そうなほど」悔しかった。

元々の予定では、レギュラーシーズン最後の現地観戦は日環アリーナのアルバルク東京戦だった。
でも、出来ることならば。あの赤の中にたしかにある黄色になりたいと思った。選手たちの視界の端に入るだけでもいい。アウェーの地で、貴方たちの勝利を信じて黄色を身に纏う人がいるという事実を一つでも増やしたかった。黄色い面積を1人分でもいいから増やしたいと思った。佐々HCが言う翼に、私のような1ファンでもなれるなら。
4月末に行われるアウェー千葉ジェッツ戦。
ありがたいことに、いつも電波の上でやり取りをさせていただいている頼もしく優しい友人にチケットを代行して頂けることになった。佐々HCの翼がブレックスネーションなら、私の翼はいつも私のブレックスへの取り留めもない想いを受け止め共感し好いてくれる友人たちだ。今回のチケットの件もだが、それまでの現地観戦の中でグッズ等のお譲りやもんみやの代行、のど飴の差し入れ、出会う全ての人たちが優しく温かかった。同じチームを好きなことが誇らしくなるぐらい、素敵な人たち。
こんなにたくさんの素敵な人たちが応援している。ブレックスなら絶対大丈夫。

アウェー観戦は初めてではなかった。
初めて観たBリーグの試合が、アウェーアルバルク東京戦だったから。ただ、千葉ジェッツのアウェーはちょっと凄かった。座った席が周囲を赤に囲まれたどアウェーの席だったというのもある。天皇杯の時に映し出されていたアウェーにポツンと黄色のお姉さんたちを思い出した。
試合がはじまるまで、このどアウェーの席でちゃんと声が出せるか不安だった。ホームベンチ裏の黄色い集団のメガホンの動きだけが頼りだ。
不安な心を、あの2月14日を思い出して奮い立たせた。それに私よりもずっと、コート上にいる選手たちのほうがアウェーを感じている。私は少しでもアウェーを黄色くしたくてここに来たんだ、怖気付いてどうする。
幸いいつも隣でブレックスの試合を観てくれている最高の友人も一緒だった。だから2人で声を張り上げた。コールリーダーさんのメガホンの動きを視界で捉えてそのタイミングに合わせて可能な限り声援を送った。二日間。あっという間のような、永遠のような。必死で応援しすぎて、正直プレーの記憶は曖昧だ。でも勝った。

千葉ジェッツ相手に2連勝した。

東地区優勝が決まったその瞬間は、あまり実感がなかった。ベンチのほうでハイタッチする選手たちが見え、場内のアナウンスが流れる。スタッフの方たちが選手たちにTシャツを配り始め、『champions』と大きく胸に書かれたネイビーのTシャツを身に纏っていく。記念撮影で横一列に並ぶ笑顔の選手たち。

嗚呼、この瞬間のために。

そう思うと、堰を切ったように涙が溢れて視界がぼやけた。ひとつのタイトルを手にして笑顔でその喜びを分かち合う選手たち。苦しい時もあった。悔しい表情も見た。何度も何度も、私たちに見せない時間も全て糧にして乗り越えてきた笑顔だ。
本当に、本当に、簡単な道のりではなかったし、強豪ひしめく東地区で優勝することがどれほど難しいことか。さらには、東中西と切磋琢磨、鎬を削るこのB1リーグで一位の勝率で終わることがどれだけ凄いことか。
現状を打破し続けてきた彼らだからこそ、成し遂げられた。しかも、彼らはそれを鼻にかけることもなく言うのだ。「あくまで通過点。」だと。

こんなに観ていて心が熱くなるチームは他にない。
こんなに観ていてワクワクするチームは他にない。
もう、こんなに好きになれるチームは他にないかもしれない。

でも、明日の彼らはもっとすごい。
明後日の彼らはさらにすごい。
昨日よりも今日、今日よりも明日とより良くなろうと努力し続けてきたこのシーズン。
最高到達点はまだまだ、もっと上にある。
この上はさらに厳しい戦いになる、けれど。
"break through"現状を打破し続けてきた彼らは、明日はもっといいチームになっているという確信がある。

だからこの、彼らのバスケットボールが好きでたまらないという気持ちも、明日も明後日も何度でも塗り替えられるだろう。
あの頂に手が届くまで、何度でも。

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