結婚?仕事?サテライトオフィス開設を自ら提案。あきらめない!女性キャリアの希望の星(川上産業株式会社:一町田玲奈さん)
今回ご紹介する一町田玲奈さんが働く川上産業株式会社は、皆さんご存じ「プチプチ®」※のメーカーとして全国シェアトップの企業です。一町田さんは東京都のご出身ですが、どのような経緯で大館市へのサテライトオフィス開設に至ったのか、また、リモートワークを行いながらの大館の暮らしについて、インタビューしてみました!
※「プチプチ」は川上産業株式会社の登録商標です。
<インタビュアー>
大館市商工課地域おこし協力隊 三澤雄太
大館市商工課地域おこし協力隊 三澤舞
一町田さん自ら大館へのサテライトオフィス開設を提案!?
雄太:まずは会社の紹介をお願いします。
一町田:川上産業は、梱包資材プチプチのメーカーで、日本独自の製法でプチプチの製造機の開発に成功し、現在は全国シェア60%を維持しています。プチプチは緩衝材のほか、農業資材、建築資材など用途は多岐にわたり、空気力で皆様のお役に立てる商品づくりを行っています。ちなみに、プチプチは川上産業の商標登録となっています。
舞:あの「プチプチ」の会社なんですね!
川上産業株式会社ホームページとプチプチのサンプル帳
雄太:サテライトオフィス開設の経緯を教えてください。
一町田:私は新卒で川上産業に入社しました。2017年に結婚を機に退職し、夫の地元である大館市に移住しました。その後、市内で就職し、働いていましたが、2019年、産休の方の助っ人として、川上産業の東京本社で勤務することになりました。1年後、大館に戻るとなったときに、働き方として大館市に川上産業のサテライトオフィスを開設できないかと考え、会社に相談しました。
雄太:一町田さんからの提案がきっかけになったということですね
一町田:もともと大館で多様な働き方を実践している企業さんを知っていたこと、また大館市で企業誘致の一環として取り組んでいるサテライトオフィス事業の存在を知り、会社の上司や大館市の担当のかたにもご協力いただきながら、企画書を作成し、会社へ提出しました。
雄太:行動力がすごいですね!
舞:開設に至るまでの間に、大館市に視察に来られたということですが、視察中はどのように過ごされましたか?
一町田:大館市からオフィスの候補を何件か紹介してもらい、見学しました。そのなかの一つに、大館駅前のわっぱビルヂングの2階シェアオフィス「MARUWWA(マルーワ)」がありました。現在は、そちらに入居しています。
雄太:MARUWWAに入居を決めた理由はなんですか?
一町田:オーナーさんが常駐しているので、会社としても安心ということと、女性というのもあってまわりに人がいたほうがいいのではないか、というのもありました。
シェアオフィスでのリモートワーク
雄太:シェアオフィスでの仕事環境はどうですか?
一町田:業務としては、受発注、見積もり作成、電話・メールでの対応をしていますが、東京で働いていた頃とほぼほぼ変わりなく働けています。シェアオフィスという環境もあり、他に入居されているデザイナーさんと一緒に昼食をとることもあります。
雄太:シェアオフィスでは利用者同士での交流もうまれているんですね!
舞:大館での働き方という点ではどうですか?例えば通勤時間などは?
一町田:そうですね、東京にいたときは、家から会社まで、バス・電車に乗って片道1時間弱をかけていっていましたが、大館だと片道5分…(笑)
雄太:積み重なるとけっこうな時間ですよね。その時間を他のことに使えますし!
シェアオフィスの入居する「わっぱビルヂングには、おしゃれなカフェも!撮影協力:s.which cafe
雄太:川上産業さんではサテライトオフィスの前例はありましたか?
一町田:地方に営業所や出張所はありますが、サテライトオフィスは初めての試みでした。
雄太:社内での反応はいかがでしたか?
一町田:企画を発表した会議では、みなさんの関心が高く、業務の内容をどのようにするのかなど質問が多くあがりました。
雄太:同じ会社でキャリアを積めるというのは、とても良いかたちで大館に来られましたね
一町田:オリンピックの開催に伴い、都内ではテレワーク、在宅ワークという働き方を推進する風潮がありました。それに、新型コロナウイルスが広まり、世の中の流れも相まって、サテライトオフィス開設の話が進んだというのもあると思います。
雄太:在宅ワークの方と働く環境としては一緒ですが、それでいて田舎暮らしができるというのはおもしろい働き方ですね!
大館での暮らしについて
雄太:大館での暮らしはどうですか?
一町田:私は東京都の下町生まれで、一度も離れたことがありませんでした。2017年に結婚を機に大館に移住しましたが、その前に、一度大館をみてみようと、冬にはじめて訪れました。夫が一回見るなら冬だというとこで。
雄太:冬にですか…正直な旦那さんですね(笑)
一町田:はい。冬にきたときは、正直、住めないな…と(笑)
夏場にもう一度リベンジして、景色がよく、そのとき"いいかも"と思いました。…思い返したら冬にきたときに食べたラーメンの味が忘れられなくて、”冬のラーメンの味は乙だな”と、魅力を感じたりもしましたね。
馬肉ラーメン(大館市扇田「大衆食堂」)
暮らしとしては、今までずっとスーパーで買っていたものを、道の駅で購入することが増えて、野菜が美味しかったり、果物の種類が多く美味しかったり…食べ物ばっかりですけど。
雄太:やっぱり、衣食住は大事ですよね。食というところで言うと、野菜や果物で美味しさを再発見したものはありますか?
一町田:山菜です!これまでは山菜は、「山菜そば」でしかみたことがなくて!
雄太:あぁ!そばにちょこんと乗っているやつですね!
一町田:あとは、ばっけ味噌(ふき味噌)を初めて食べたり、山菜の天ぷらを作って食べています。大きい山菜を見たことがなったので、山菜が一番の出会いでしたね。
舞:休日の過ごし方は?
一町田:私は温泉とサウナが好きなのですが、こっちは温泉が豊富。都内だとサウナは銭湯にあるけどプラス料金が発生したり、会員制だったりしますが、こっちだと温泉の中にサウナがついていて料金に含まれているので、お得だなと。
舞:大館は温泉の料金も安いですよね!
雄太:そうそう。私が知っている最安は150円です!
一町田:え?それは安すぎ。(笑)
雄太:一日の過ごし方を教えてください
一町田:私は睡眠を大事にしているのですが、通勤時間が短くなったことで、就寝時間が早くなり、疲れがすぐにとれるようになりました。あとは、外食ではなくお取り寄せをしたり、家でのんびり過ごしたりすることが多くなったなと思います。
雄太:旦那さんとゆっくり過ごす時間が増えて、睡眠もしっかりとって疲れも残さずと、いいことづくめですね!
”プチプチ”の歴史
一町田:川上産業は1968年に創業、1976年に設立されました。
世界の歴史をみると、 1960年代初頭にアメリカ人の兄弟がポリエチレンシートに空気を含ませた構造物を発案しました。その文献を読んだ川上産業の創業者が日本で独自の製造装置を開発しました。奇しくも同時期にアメリカでも別の方が製造装置を開発、当時はプールに落ち葉が入るのを防止するためのカバー等の用途として考えられたと言う説があります。
雄太:プチプチはどのように広まっていったのでしょうか?
一町田:当時の緩衝材としては木毛(もくもう)や酢毛(さくもう)、新聞紙等が主流でした。その中での新しい素材と言うこともあり当初は何に使うの?と営業に苦労したと聞いています。川上産業は名古屋が発祥ということもあり、瀬戸物を包装に使われたことがきっかけに徐々に日本国内で広まっていたと聞いております。
雄太:(川上産業のサンプル帳をめくりながら)サンプルをみるといろんなプチプチがありますが、ハート型のものもあるんですね!
一町田:そうなんです!可愛いですよね!実は、普通の透明で丸いプチプチのなかにも、ハート型がひっそりと紛れ込んでいるんですよ。非常にレアなので、出会えるとラッキーです。
舞:ほかにはどんなプチプチがあるのでしょうか?
一町田:変わったものとしては、サトウキビ由来の「グリーンポリエチレン」を使用した若草色のものがあります。通常のプチプチも80%以上を再生原料で作っています。再生原料でつくったものはほかにもあり、通常あまり使われない有色の再生原料を使った「エコハーモニー」という商品もあります。
また、農業関係だと「エコポカプチ」という商品はハウスの内側に張って使います。これは耐候剤が入っているので、屋外で使用しても劣化しづらく、また保温性があるので、燃料費が削減できるというものになります。
雄太:いろいろなところで使われているのですね!(カタログをみながら)私はよくこのピンク色のプチプチを見かけます!
一町田:ピンク色のものは静電気防止タイプなので、機器類に使われます。
雄太:確かに、PCのメモリーを買ったりするとこのプチプチに入ってきます。機能も様々なのですね。
一町田:透明で丸いプチプチは同じようにみえても、やわらかさが違ったりもします。柔らかさのことをコシと表現します。
ぱっと見同じように見えても、用途にあわせてコシの強さは様々
雄太:8月8日は「プチプチの日」だそうですね
一町田:プチプチの並びが数字の8に見える、ということと、潰すときの音が「パチパチ」となるということから、8月8日を日本記念日協会認定の「プチプチの日」として制定しています。このプチプチの日には、全国で記念イベントがおこなれ、オリジナルグッズを配布しています。今年は、大館市にサテライトオフィスがあり、私がいるので、大館市でも記念日のイベントを開催したいと思っていて、企画しているところです。
雄太:おぉ~それは楽しみですね!今日はありがとうございました!
おわりに
旦那さんの大館へのUターンをきっかけに一度は職場を離れた一町田さん。サテライトオフィスという形態でリモートワークを行うスタイルは、リモートワークが浸透してきた状況から、今後増えてくるかもしません。オフィスの開設にはハードルもありますが、今回の一町田さんの例では、シェアオフィスを活用して、比較的スムーズにサテライトオフィスの開設を進められたこともポイントだと思います。
そんな一町田さんも利用した大館市の「サテライトオフィス体験事業(サテライトオフィス大館)」ですが、2021年も申し込み受付中ですので、大館市でのワーケーションを体験してみたい方は、ぜひチェックしてみてください!