三百六十三話 跪いている私

「ごきげんよう」「神のご加護を…」

朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。

学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。

そう、ここは神田ミカエル女学院…。

中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。

天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?

その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。

ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。

制服は翻さないように、静かに歩き…。

清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。

この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。

否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。


冬休みのある寒い日…。

私はサタン様に会いに行くことになった…。

寒いので炬燵に入ってのんびりしたかったのに。

グレモリーがダメだと言う…。

私は半ば無理矢理炬燵から出されて…。

渋々サタン様に会いに行くことになった。

サタン様は新宿都庁で働いているらしく…。

都知事になれなかったので…。

都知事の元で秘書をやっているらしい。

そういうわけで、私とグレモリーは…。

山手線で新宿に向かったのである…。

新宿駅はすごい複雑な構造で…。

すごい迷いやすいという…。

それは置いておいたとしても。。

サタン様は何か怒りやすい性格らしいし…。

なんにせよ休みの寒い日に出かけるのが嫌だ。


やっと新宿駅に着いて…。

サタン様に会おうと言うときに…。

私は道に迷ってしまって…。

駅構内の端で泣き出してしまうのであった。

誰も助けてくれないこの東京砂漠で…。

ずっと泣いている私…。

何分泣いていたかわからなかったが…。

銀髪ですごい綺麗なお姉さんが…。

私に優しく声を掛けてくれた…。

私は泣きながらだけれど…。

都庁に行きたいのですと伝えた…。

するとそのお姉さんも都庁勤務だという…。

渡りに船とはこのこと!?

私はお姉さんの手を取り…。

やっと立ち上がれたのである…。


泣いていて目が赤く腫れていた私…。

お姉さんは気遣ってくれて…。

新宿駅構内の喫茶店へ誘ってくれた…。

都庁へ行く前に落ち着いてから行こう…。

そう言う意味で誘ってくれたのである…。

喫茶店の中は薄暗くて落ち着いていて…。

私はココアを奢ってもらって…。

私自身もようやく落ち着くことができたのである。

お姉さんはサンドイッチとホットコーヒーを頼んでいて。

何やら腰が痛いらしく、立ってそれらを食していた。

腰というけれど、なぜかお尻を撫でている…。

銀髪の綺麗なお姉さんが立ちながらコーヒーを飲んでいる。

なかなかシュール光景であったが…。

さすが東京…。誰も見向きもしなかったのだ…。


喫茶店で飲食して落ち着いた私たち…。

お姉さんは都庁まで案内してくれるという…。

お会計は事前に済ましていたので…。

そのままお店を出る私たち…。

本当に優しいお姉さんがいてくれてよかった。

あのまま駅の中で泣き崩れていたら…。

誰も助けてくれなかっただろう…。

泣いていたら、恥ずかしいし悲しいし…。

グレモリーったらなんであんなに早く歩いてしまうのだ。

今度はお姉さんとはぐれないようにしないと…。

お姉さんは私と手を繋いでくれているので…。

すごい安心なのであった…。

新宿駅西口から外に出て…。

しばらく歩くと、都庁が見えてきた…。

テレビや写真でしか見たことなかったけれど…。

間近で見ると、やはりとても大きい…。

都庁の中に入ると、とても大きなエントランスがあって。

中心に金属製のオブジェがあったりして…。

なかなか荘厳な雰囲気であった…。


お姉さんはさすが慣れた感じで…。

都庁勤務だから当たり前だけれど…。

すぐにエレベーターに乗り込んだ…。

当然私も一緒だ…。

そして、何階か忘れたけれど…。

なかなか高い階まで到達した…。

そして、重厚な木製のドアの部屋に案内される。

お姉さんはそのドアを開けて、私を招き入れた。

そして、お姉さんと私が入ると…。

お姉さんはドアの鍵を閉めてしまう…。

まるで、私が逃げられないようにしているよう。


新宿駅で泣いていた私を助けてくれた…。

銀髪、銀縁眼鏡の素敵なお姉さん…。

都庁まで案内してくれたのだけれど…。

都庁の豪勢な部屋に入った途端…。

お姉さんはいきなり口調が変わって…。

一人称が余になって…。

自分の正体がサタンだと言うのであった…。

私はビックリして、尻餅をついて倒れてしまう。

サタン様は私のことを探していたらしく…。

なにやら私のことを恨んでいるらしいのだ…。

サタン様はパチンと指を鳴らした…。

途端に私の服がどこかに消え去って…。

私は全裸になってしまう…。

突然全裸になった私は身体を両手で隠した。

な、なんで突然裸になったの…!?

サタン様の魔法であろうか…?


「貴様、魔界で余にしたことを覚えているか!?」

サタン様はかなり激昂しているご様子…。

残念ながら、私は魔界にいた記憶はございません…。

私はそのことを正直に話した…。

私は全裸で部屋で跪いてサタン様を見上げてる…。

側から見たらシュールな光景…。

「貴様と魔界で初めて会った時…」

サタン様は遠い目をして語り出した…。

魔界に転生した私は…。

最初の頃、グレモリーという悪魔と契約した。

そして、グレモリーの紹介でサタン様と会ったそうだ。

サタン様はその時、とても大きな邪竜の様な格好で。

上半身が人間、下半身が竜の様な形状で。。

六対の腕と、六対の羽が生えた…。

とても恐ろしい姿をしていたのであった…。

それにも関わらず、私は多分中二病モードで。

サタン様に対して、すごい不遜な態度を取ったそうだ。

激昂したサタン様は私をつまみ上げて…。

そのまま丸呑みにしてしまったそうで…。

私はそれを聞いて…。

すごいショックを受けている…。

でも、サタン様が怒っているのはそれだけではない?

私は全裸で、不思議に思うのであった…。

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