三百二十九話 自己紹介大丈夫かな?
「ごきげんよう」「神のご加護を…」
朝の清冽な空気の中、女子生徒の挨拶がこだまする…。
学校の校門をくぐると、そこは身も心も清らかな乙女の園…。
そう、ここは神田ミカエル女学院…。
中庭の大天使ミカエル像が、通う女子生徒たちを守護している…。
天界の大天使ミカエルは、ここに通う女子生徒たちを見て何を思うか…?
その御心は、まさに神のみぞ知るということなのだろう…。
ここに三年間通えば、お淑やかなお嬢様になって卒業できるという…。
制服は翻さないように、静かに歩き…。
清廉潔白で文部両道、それでいて純粋無垢な心を持った乙女たち…。
この学院には、そういった生徒しか存在しないのです…。
否、今日から新たに校門をくぐった、たった一人の生徒を除いて。
訳あって、二週間の謹慎処分になってしまった私…。
ようやく?二週間の謹慎も終わりになって…。
二週間ぶりに学校に登校することになった…。
本音を言うと、学校に行きたくないのだけれど…。
前日に理事長先生から電話があり…。
登校する日だから忘れないようにと…。
あと、早めに来て理事長室に寄るように言われた…。
早めに登校するのも、ちょっと嫌だけれど…。
理事長先生の言うことだから、無視する訳にはいかない。
私は早く起きて、登校する準備をしている…。
久しぶりに着る秋冬用の黒いセーラー服の制服を着て…。
リュックに筆記用具と教科書を詰め込んだ。
隣に寝ているズッ友の藍さんも優しく起こして…。
学校に行くことになったのである…。
学校に着き、理事長室に着いた私たち…。
謹慎の最初の頃、外出していたことがバレていた…
なんと黛先生が見ていたらしいのだ…。
黛先生が理事長先生にそれを言ったということ…。
けれど、理事長先生は私が自発的に謹慎したというわけで。
そのことは不問にしてくれたのであった…。
ほっと胸を撫で下ろした私たちであった…。
それと、理事長先生は私に何か渡しておきたい物があるらしい。
理事長先生は立ち上がり、私に一枚のカードを渡した。
私も立ち上がり、礼を言ってカードを受け取る…。
カードはプリズム色に輝く天使の絵が描かれたカードだった。
天使の姿は薄絹の服を着た女性に天使の羽が生えた姿…。
敬虔な表情で、お祈りをしている格好だった。
その頭上には天使の輪っかが付いている…。
誰もが思い浮かべるであろう、天使像であった…。
「このカードは私と絆を紡いだ証拠のカードです」
絆を紡いだ証拠…?そんなに絆を紡いだのだろうか?
「ある特定の者と絆を紡ぐとカードが出現することがあります」
そのカードは貴方の助けになることでしょう…。
理事長先生はそう説明してくれた。
説明されてもよくわからない…。
でも、綺麗なカードなので大事に持っておこうと思う…。
「今日早く来てもらったのはそのカードを渡したかったからです」
理事長先生はそう仰った…。
よく見ると、2枚あるので藍さんにも渡した…。
「理事長先生ありがとうございます…」
私は礼を言うけれど、よくわかっていない。
見る角度によって虹色に輝く天使のカード…。
綺麗だけれど、これが役に立つ時が来るのであろうか?
クラスメイトに何か言われたら、見せればいいのかな?
制服にある胸ポケットにカードを入れておくことにした。
「貴方たちはこれから薔薇組の生徒になります…」
そのことを肝に銘じ、誇りに思うように…。
理事長先生は少し鋭い視線で、そう言った…。
また薔薇組で自己紹介するのかと思うと、胃が痛い。
また目眩がして、倒れないか心配だった…。
でも今回は隣に藍さんがいてくれるだろうから安心だ。
その時、理事長室のドアがノックされ…。
ドアの方を見ると、薔薇組担任の田中先生がいた…。
田中先生の顔、すごい久しぶりに見た…。
相変わらず、蒲公英の綿毛のような印象の先生。
すごい優しい先生だった気がする…。
黛先生とは真逆の先生であった…。
「真島さん、それと鈴木さんですよね?教室に行きましょう」
私たちを田中先生が迎えに来てくれたらしい…。
私たちは理事長先生にお辞儀をして、理事長室を後にした…。
「真島さん、具合はどう?今日は大丈夫そう?」
田中先生が私の具合を心配してくれている。
私は春にこの学校に転入して…。
自己紹介の時、気絶して倒れてしまったのだ。
そのあと、ずっと保健室で授業をしていた。
「あ、はい!多分大丈夫だ思います」
私はいきなり聞かれたので上擦った声になってしまう。
隣で藍さんが、ぷぷっと笑っている。
うぅ、恥ずかしいよ…。
「真島さんが元気そうでよかった…」
田中先生も、嬉しそうであった…。
「担任の田中です。よろしくお願いしますね」
田中先生は主に藍さんの方に挨拶をした。
藍さんもよろしくお願いしますと言っている。
今回は自己紹介ちゃんとできますように…。