RSウイルスワクチンの高齢者における有効性に関するリアルワールドデータ (Lancet)
Lancetより
Respiratory syncytial virus (RSV) vaccine effectiveness against RSV-associated hospitalisations and emergency department encounters among adults aged 60 years and older in the USA, October, 2023, to March, 2024: a test-negative design analysis - The Lancet
要約
2023年に初めて使用が推奨されたRSウイルスワクチンは、臨床試験で下気道疾患に有効であることが確認されている。RSウイルスワクチンの有効性に関するリアルワールドのデータは限定的である。ワクチン政策を確立し、臨床試験のエビデンスのギャップに対処するために、今回我々は、60歳以上の成人におけるRSウイルス関連の入院および救急外来受診に対するワクチンの有効性を評価することを目的とした調査を行った。
米国8州の電子医療記録のネットワークを使用し、2023年10月1日から2024年3月31日までにRSウイルス検査を受けた60歳以上の成人におけるRSウイルス感染を疑う症状による入院および救急外来受診に関して、test-negative design analysisを実施した。受診時のRSウイルスワクチン接種状況は、電子医療記録、州および市の予防接種登録簿、および一部の施設においては医療請求から取得した。ワクチンの有効性は、年齢、人種と民族、性別、暦日、社会的脆弱性指数、非呼吸器系基礎疾患の数、呼吸器系基礎疾患の存在、および地理的状況に関して調整を行い、RSウイルス陽性症例患者とRSウイルス陰性対照患者のワクチン接種のオッズを比較することで推定した。
免疫不全状態ではない60歳以上の成人におけるRSウイルス感染を疑う症状による入院28,271件のうち、RSウイルス関連入院に対するワクチンの有効性は80%(95%CI71~85)、重篤なRSウイルス感染症(ICU入院または死亡、またはその両方)に対するワクチンの有効性は81%(52~92)であった。免疫不全状態にある成人におけるRSウイルス様疾患による入院8,435件のうち、RSウイルス関連入院に対するワクチンの有効性は73%(48~85)であった。免疫不全状態ではない60歳以上の成人におけるRSウイルス感染を疑う症状による救急外来受診36,521件のうち、RSウイルス関連の救急外来受診に対するワクチンの有効性は77%(70~83)であった。ワクチンの有効性の推定値は、年齢層やワクチンの種類によって違いはなかった。
RSウイルスワクチンは、RSウイルスワクチンが承認されてから最初のシーズンである2023~24年のRSウイルスシーズンにおいて、米国の60歳以上の成人におけるRSウイルス関連の入院や救急外来受診の予防に効果的であった。
所感
高齢者におけるRSウイルス感染症はそれほど見かけないというのが正直な感想なのだが、現在の所、ワクチンはあっても治療薬はないので、迅速抗原検査を行っても仕方がない、というマインドが(少なくとも高齢者のRSウイルス感染症に関しては)まだ一般的なのだろう。
今回の調査は使われ始めたばかりのRSウイルスに対するワクチンの有効性に関してであるが、入院予防効果は80%。治験での評価項目とは異なるので単純に比較はできないが、
Efficacy and Safety of a Bivalent RSV Prefusion F Vaccine in Older Adults | New England Journal of Medicine
悪い数値ではないと思われる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?