サル痘(MPOX)ウイルスの系統分析 (Nature Medicine)

Global genomic surveillance of monkeypox virus | Nature Medicine
要約
サル痘ウイルス(MPXV)は西アフリカと中央アフリカで風土病となっているが、2022年5月にはクレードIIb系統(B.1)がアフリカ外で世界的な流行を引き起こし、116の国と地域で検出さるに至った。今回、MPXVの系統発生を理解するために、1958年から2024年の間に65か国から収集された10,670の配列を含む、入手可能なすべてのMPXV配列が分析された。結果として、中央アフリカ内でのClade Iの高い移動性、東地中海地域内でのClade IIb lineage Aの持続的なヒトからヒトへの感染、および持続的なヒトからヒトへの感染と動物から動物への感染を区別できる一連の変異が明らかになった。さらに、現在、スーダンを中心としたClade Iの存在は、過去40年間に東アフリカの地域でMPXVが局所的に循環していたことを示唆する。今回の分析は、MPOXウイルスの時空間的動態を追跡する上でのゲノム監視を強化することのの重要性を示す。

所感
昨年来コンゴ民主共和国を中心に流行が見られているMPOX clade 1bは、2022年に世界各地での流行をもたらしたclade IIbとは遺伝学的に遠い。現在のMPOX clade 1bに関してもWHOの緊急事態宣言がなされているが、少なくとも先進国では危機感が薄い。MPOXに限った話ではないが、アフリカでのみ流行が見られている間は国際社会の関心が薄く、先進国に入ってきた途端に注目を浴びて研究資金も潤沢に投下される、ということの繰り返しは情けない気がする。この論文で分析された10546検体のうち97.7%は、国際的な流行をもたらしたClade IIB (lineage B.1)であったということを見ても、Inequityに関してつくづく考えさせられる。

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