バレエの当たり前について考える〜観客が見るバレエとダンサーが学んできた美学は本当に同じ??
こんにちはソノです♡
私は週に一回程度デッサンモデルのアルバイトをしています。
最近ポーズのリクエストで最も多いものが、バレエの練習風景やダンサーの休憩中をモチーフにしたもの。
無言で何十分も立ち止まっている仕事ですので、色んなことを考えます。
その時考えたことを今回はメモしておきたいと思います。
世間のバレエイメージってどのような物なのでしょうか。
バレエやダンスに詳しくなればなるほどなぜかわからなくなってきます。
今回考えたことは、
ダンサーが学んできたバレエの美しさと、観客が思うバレエの美しさを感じるポイントにはズレがあるかもしれない、ということ。
観客にわかることは、自身が思う"バレエっぽさ"に合致しているかどうかで、5つの足のポジションだとか、ポール・ド・ブラの正確さや綺麗に開いたアンディオールではないのです。
先ほど、デッサンモデルでバレエのポーズを求められると言いました。
仕事内容は、実際に踊っている人の筋肉でバレエの絵が描きたいというご要望にお応えするものです。
しかし、ここでは毎回世間のバレエイメージと私が経験してきたバレエの当たり前を擦り合わせる作業を必要とします。
「この衣装で、このポーズがしてほしい」
そう言われても…このお衣装は強そうな女性が着る衣装ではないしなあ…
「脚をこの向きにしたら綺麗じゃない?」
いやいや、めちゃくちゃ内股になるから…
「スカートの結び目をこちらに向けれる?」
え、その着方は見たことないけど…
と言った具合です。
描かれる方の描きたいイメージを損ねないように、それでいて、バレエの常識の範疇を外れないように、
話し合いを重ねてポーズを決めていきます。
せっかくバレエを美しいと思い、描きたいと思ってくださったのだから、
本当はありのままのバレエをお伝えしたいです。
足は外転させる形(アンディオール、ダーンアウトした形、いわゆるガニ股)が正しい型なのだし、
トゥシューズのリボンの結び目はいくら綺麗にリボン結びしたって、隠すのです。
お衣装は作品の登場人物によって、それぞれある程度の形が決められているから、それに大幅に反するポーズは出来かねるし、、、
それがバレエの美学なのです。私もこれまでのバレエダンサーが守ってきたバレエの美のあり方を尊重したい。
だけれど、これは踊る方が学んできた美学でもあります。観客に伝わってきた美学はもしかしたらもう少し違うものなのかもしれません。
足が外向きになっているとか、5番のポジションが綺麗に重なっているとか、もしかしたら、そんなところまで観客は求めていなくて、美しさを別のところに感じるのかもしれない。
バレエにはダンサーが守ってきた美学と、観客が育ててきた美学の二本筋がある。
どちらがいいとか悪いとかいう話ではありません。
ただ、きっと観客が感じる美の中には、バレエの複雑なポジションやメソッドに裏打ちされた部分もあると思います。
だから、伝わらないからと言って守らないのは違います。
私たちダンサーが、学んできた美学を尊重したいという厳格な心意気そのものは、
緊張感のバレエの特質として観客に伝わっているでしよう。
出来上がった絵はきっと、
観客の見ているバレエイメージの具現化なのでしょう。
あの話し合いは長年踊っているとわからなくなることを学べる時間でもあります。