たった一人のひとがいれば死なない。
うつ病は行ったり来たり
実は、私はうつ病を患っていた時期がある。表現は難しいのだけれど、抑うつ状態とうつ病は、なだらかな地続きで、いつ自分が一歩先のうつ病になっているかは判然としない。
抑うつ状態は、誰もが何度もなったことがあるはず。
失敗をしたとき、財布を落とした時、失恋したとき、大事な人を亡くした時…
考え方が狭くなって、眠れない、食べられない、間違った判断をしがちな変な状態。
その先の一歩に進むと、うつ病で死ぬ可能性のある危険な状態。
でも、また少し戻ったり、進んだり、また戻ったり。
いつでもうつ病じゃなくて、抑うつ状態なときもあって。だから、普通の生活もできていたり、テレビも見たり、デートもしたり、笑ったり、楽しんだり。
でも、先に言ったように、自分も他人も、気づけない。わからない。判断できない。
ガンなら、ガンの時とガンじゃない時が交互に来るなんてことはないから、そう考えると、うつ病は難しい病かもしれない。
今でも、容易に抑うつ状態になりやすい。癖がついているみたい。
でも、自覚があるから「大丈夫」と言える。私が悪いんじゃない、病気だから。
自覚
自分が、変な状態になっていて、間違った考えにはまり込んでいることが分かっていれば大丈夫。
とにかく時間を稼ぐことが一番。眠って時間を稼ぐ。逃げる。遠ざける。
薬も使う。眠れるように。
焦らない。何もしない、余計なことをするともっとひどいことになるから。
時を止めてやり過ごす。
無理に普通にしなければならない状況が一番つらい。人に会わない、仮面をかぶらない。
抑うつ状態です、と言えるのが普通になればいいのに。
あの人がいれば
そして、自分のことを全てまるっと受け止めてくれる人がいればそれで、もう、良い。
世界中のすべての人に嫌われても、あの人だけが愛してくれて、守ってくれて、甘やかしてくれれば。
「お母さん」みたいなひと。(お父さんでもいい)
とにかく、生きているだけで褒めてくれる人がいれば。
抱きしめて、泣いている自分を強く抱きしめてくれる人がいれば。
子どもに、赤ちゃんに、戻って。包まれて、安全な場所で隠れて、庇護されて。
そして、少しずつ、また赤ちゃんからやり直すように生き直せばいい。
息子たちには
いくつになっても、何歳になっても、息子たちには、私がその砦になりたい。
逃げ帰ってきていいよって。全部、しりぬぐいしてあげるから心配するんじゃないって。
大丈夫、いざとなれば、どんな支援だってある。謝ればいいのならいくらでも。
お金なんてどうにかなる。
もし嫌なら、一緒にどこか遠くに引っ越してもいい。外国だって。
一緒に行く。
だから生きていて。
生きて、お母さんのところに帰ってきて。
私は
私の母はもう年老いて、守るのは私の役目になってしまった。立場が逆転している。
でも、私にもたった一人の、私を甘やかしてくれる大事な人がいる。
絶対的に私の味方な人。
その人がいれば、あとはどうでもいい。
どうでもいいと思えれば、抑うつ状態も怖くない。
病に負けない。
あの人だけがいればいい。
だから私は死なない。何度、抑うつ状態になっても、死なない。
そんなたった一人の人が、全ての人にいれば、命を救える。