都会と田舎とわたし

 お久しぶりです。まずはお仕事の宣伝から。
 祥伝社様のWEB雑誌『コフレ』にて連載させて頂いていた『ガゼボの晩』が、11月15日更新分にて完結いたしました。豪華な布陣の作品が無料で読めるという超絶すばらしい雑誌ですので是非是非読んでください。本当はリンクとか貼りたいんですが、そういう器用な真似ができないレトロな生き物なので、お許しください。
 来る11月22日。いい夫婦の日に、東京創元社様より新刊『うつくしが丘の不幸の家』を出させて頂きます。不幸の家と呼ばれる一軒の家でおきる、五つの家族の悩みやしあわせを書きました。この本、カバーがとっても可愛いんです……! 裏表紙まで可愛くて、そこの辺りをしっかり見てくださると嬉しいです。担当さんとデザイナーさんが不穏なタイトルからホラー感を無くすべくめちゃくちゃ頑張ってくださいました。ほんと、ありがたい……。よろしくお願い致します。

 さて本題。
 ことあるごとに田舎住みということを主張し、編集者さんにお会いしたときには『都会の匂いのするシャレオツなお話が描きたいです』と言うような、田舎コンプレックスをこじらせているわたしであるが、一年に数回は『田舎でよかったぁぁぁ』と思うことがある。
 水を張った田んぼの上をはしる風の気持ちよさとか、玄関のドアノブに勝手に吊り下げられている採れたて野菜とか、そういうのは本当にしみじみといいなあと思う。住んでいてよかった。野菜に限っては、無言で置いて行かれるのでちょっとだけ困るんだけどね。土からひいたばかりと思われる大根とか、ホントにこれ貰っても大丈夫? って思う。食べるけど。常に家にいる引きこもりなんだから、チャイム鳴らしてくれよう。
 そして先日、叫びたくなるようないいことがあった。地元の秋祭りにふらっと寄ったのだが、そこで地元で獲れたという猪肉と鹿肉が無料で振る舞われていたのだ。猪は一頭丸焼き、しかも炭火焼ですってよ、奥さん!
 一口食べて、余りの美味しさに悶絶。何これめちゃくちゃ美味しい。全然臭くない。どこを食べても「美味しい」しか出てこない。迷わずビールを買い求めた(余談だけれど、暖かな太陽の下のビールって最高の調味料だと思う)。
 これは地元を、ひいては猟師様たちを応援しなくてはと有料(といってもめちゃくちゃ安い)の串肉も、もりもり買った。ビールももりもり買って、もりもり飲んだ。
 鹿よりも、猪の方が好みだったかな。猪はさらっとした脂が甘くて筋肉が引き締まっている感じ。鹿は淡白で上品。別の場所では猪鍋も販売されていて、それもまた臭みがなくてとにかく美味しかった。柚子胡椒をいれると美味しさと食欲が倍増されるのでおすすめ。あと、脂肪分が少ないからか、どれだけ食べても胃もたれしなかった。こんな上質なお肉をこんなに食べられるなんて、最高以外の言葉が見つからない(わたしの語彙が足りないわけでは…わけでは……)。山の幸に恵まれた田舎よ、ありがとう。
 来年は敷物を持参し、万全の態勢で行くつもりである。ていうか、あのおじちゃんたち猪料理の店出してくれないかな。通う、ていうかここで働かせてください! って言う。ここで働きたいんです! って言いたい。
 それはそうと、元々秋祭りには小腹が減ったので寄っただけで、本来は頂きもののイチヂクジャムに合うパンを買い求めに行く途中だった。わたしは小麦の味をぎしぎし噛みしめるようなハードパンが好きで、それにジャムを合わせたらさぞかし、と思っていたのだ。しかしその日は肉と酒に溺れ、気付いたら自宅の布団でぐうすこ寝ていた。おかしいな。途中までは覚えていたんだけれど。もちろんパンは買っておらず、ジャムは今日も冷蔵庫の中で食べられる日を待ってしんしんと冷えている。だいたい、ハードパンを扱っているパン屋さんが遠方にしかないのがいけないんだよ、ぷんすこ。
 ああ、ここが都会だったらな。きっと徒歩でいける距離にシャレオツなパン屋さんがあるんだろうな。いいな。と、いつもの都会の夢を見つつ、パンを買いに遠征する予定を立てているわたしである。

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