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4月から 世田谷区立学校の欠席連絡がオンライン化しました(欠席連絡だけ!):追記あり(2021.06)

これまでは紙の連絡帳が原則だった 学校と保護者間の連絡手段が、やっとデジタル化(オンライン化)しました

世田谷で実現される連絡手段のシステム化がこの国のどこかで役に立てばと思い、
また未だ多く残る実務的な課題整理に向け記録を残しておきます

※結論を先にお伝えすると、残念ながら保護者→学校の欠席連絡を一方的に送りつける機能だけで、しかも校長の権限でシステム利用を拒否できます


【筆者紹介】

31歳・格好良く言うと ミレニアル世代・いわゆる ゆとり世代の世田谷区議会議員(最年少・この春で7年目/所属:都民ファーストの会)
大学卒業後はWeb広告会社(Septeni)・Twitter Japanに勤務しており、政治家の中ではデジタル領域には理解・関心がある方だと自認しています

子どもは未就学児ですが、区議会議員になってからも 自分が区立小・中学校に通っていた頃(20年前)と大差はなく、時代に合わせて変化しない公立学校には危機感を抱いています
(政治家として変えられる立場にあるはずですが、実際に区議会議員になってみて分かりましたが 建設的な提案も驚くほど受け入れられません
デジタル化と並行して、今一番学校で進めたいのは、ほうき・ちりとり→ロボット掃除機で子どもを日々の非効率・粉塵を撒き散らす不衛生な清掃時間から解放することです
※掃除の時間は、学習指導要領等の法的な位置付けはなく、各学校が独自に定める自主的活動で、年間に50時間=67時限分を要し、音楽・図工の60時限/年より長いです
(大掃除を含まず、毎日15分×200日=3000分=50時間で計算)


【進む 保育園のデジタル化】

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当時、世田谷区は待機児童ワースト1を記録し続けており、待機児童問題解決への糸口を探りたいと思い、
筆者自身が当選後の2016年12月の保育士試験に合格、2017年3月に保育士登録をして、2年弱保育士としてもダブルワークをしていました

当時は「保育園落ちた、日本死ね」というブログの投稿が話題になっていた時期で、保育園不足と同時に保育士不足・保育士の負担軽減が叫ばれていました

厚生労働省は、
・2015年-16年:保育所等におけるICT化促進事業
東京都は、
・2017-18年:保育所等におけるICT化推進事業
(2019年度以降は、新設園のみ対象)
として、予算を確保し、
保育士の出退勤管理から連絡帳の電子化、業務用システム、カメラの導入を進めることで効率化することで、
創出した時間を本来業務である子どもの成長のための時間に使えるよう、保育士の負担軽減が進められてきました

"手書きのぬくもり"という言葉もありますが、私自身も親としては、普段何をしているかについて 手書きの風景描写よりも、写真や動画を共有してもらうことで 様子そのものを見られる方が嬉しいです
(子ども自身も動画や写真で、何をしたか・どこに行ったかを振り返るのが好きです)

また保育士としては、保護者の連絡帳忘れ・職員の受け渡し漏れはなくなり、
また連絡漏れや緊急連絡にも対応でき、持ち物プリント等を別途印刷する必要もなく、デジタル化の恩恵は大きいと感じています

ちなみに2019年9月時点で、連絡帳を電子化した保育園で、
通信環境やデバイスがなく、紙を希望する家庭があるのか、保育課に確認したところ、
その時点では1件も紙を希望する事例はないとのことでした

(仮に希望される場合は、例外的に紙で対応するそうです)

【何故、欠席連絡は原則 連絡帳なのか?】

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保育園がデジタル化される一方で、2019年夏頃 学校の連絡帳制度を変えられないか調べていた際、たまたま下記の記事を目にしました

昭和の時代から変わらず、日本全国の学校で 連絡帳という紙に情報を書いて近所の子どもに託すのが正式な連絡手段として機能しており、
記事中にもあるように、これだけ教員の多忙化が叫ばれる中、前例踏襲の名の下でアナログ業務を温存する不条理は今すぐに改善の必要性を感じました


保護者側の負担やリスクを考えても、

▼子どもの友人まで連絡帳を届ける必要があることで、
・病気の子どもを放置して、その間に子どもに何か起きるリスク
・直接会うことで感染させるリスク
・欧米では子どもを家に一人にすることは児童虐待にあたるが、
 世田谷区もアメリカ国籍者だけで1800人 ※ を超える中、国際的に虐待に当たる行為を外国人も含めて強制する問題性
・更に乳幼児のいる家庭は、連絡帳を渡しに乳幼児を抱っこしたりベビーカーを押す負担
▼個人情報の塊と言える連絡帳を何の安全性もなく、近所だからという理由で未成年に手渡しで運ばせることで、
・連絡帳の中を無断で見られるリスク
・そこから いじめにつながるリスク
・預けられた児童生徒が連絡帳そのものを紛失するリスク
・問題が起きた際に、学校ではなく預けた側、預けられた側の当事者間のトラブルになるリスク
▼病児保育を利用して保護者が出勤する場合、時間的に連絡帳を渡せない現代的課題への非対応
▼特に大規模校は電話が混線して何度かけてもつながらず、何度も電話をする負担

と様々な負担を保護者に押し付けています

※外国人人口:東京都総務局 人口統計課 推計人口担当
https://www.toukei.metro.tokyo.lg.jp/gaikoku/2021/ga21010000.htm

余りにも時代錯誤な連絡帳のあり方を見直そうと、
2019年9月の区議会で、世田谷区では初めて 連絡帳制度の見直し/学校・保護者間の連絡手段のデジタル化の提案し、そこから議論が始まっていきます

①欠席連絡に原則 連絡帳を利用する制度の改善
②電話連絡から、メール連絡への移行
③システム化による プリント類・連絡手段の完全デジタル化
の3段階に分けて、
その後 議論をして行くこととなります
(現在の世田谷区は③の実現に向けた過程にあります)

【何故、学校だけ閉鎖空間なのか】

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保育園は指示系統の上では、一般的に子ども部・福祉部といった区/市役所本体に属する部署が管理する施設であり、区/市役所が定めた全体のデジタル化・ICT化の方針に沿った業務改善が可能な範囲に属します

一方 学校は、法律上も教育機関の独立性・政治的中立性の担保のため、首長(区長/市長)をトップとする役所組織から独立をした行政委員会として、教育委員会・事務処理のための教育委員会事務局が運営されています

近時は、2015年の法改正により教育委員会の長(教育委員長)と教育長の任命権限を委員会組織ではなく、首長(区長/市長)に移し、また基本方針も首長が定める体制となりましたが、過去の名残や独立性の観点から、教育領域は区役所のデジタル化の流れとは別の流れで進められることとなっています
(現に世田谷区教育委員会事務局も 区役所のデジタル改革担当部やICT推進課とは別に、2021年4月に教育ICT推進課を立ち上げました)

また、昨年コロナ対応の一環として 世田谷区教育委員会全体としては、欠席のメール連絡を正式に認めたものの、
校長判断で電話や連絡帳しか認めない学校も残っており、教育内容と関わりのない事務効率化についても進めなくてよい 強い権限が現場(校長)にあります

そもそも役所すら社会全体と比較すると浦島太郎状態であるにもかかわらず、
学校は役所の中でも 更にデジタル化の進まない”聖域”(聖というよりは悪だと思いますが)と化しています

【時代の変化に追い付けない学校文化】

恐らく連絡帳手段が機能した時代には、専業主婦が子どもの近くにいたこと、また一義的には兄弟に頼めばよかったということで、

今の保護者が小学生だった1990年と現在を比較すると、
・専業主婦家庭 1990年:52%→ 2020年:31%
・共働き家庭  1990年:48%→ 2020年:69%
となり、

カップルあたりの子どもの数が何人かをあらわす完結出生児数は、
1992年:2.21人 →2015年(最新データ):1.94人 ※ と
既に平均は2人を切っており、
3人兄弟姉妹が減り、一人っ子が増えていることが分かります

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※国立社会保障・人口問題研究所 第15回出生動向基本調査
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/gaiyou15html/NFS15G_html07.html

東京都・世田谷区の正確な完結出生児数のデータは見つかりませんでしたが、
言わずもがな、東京は晩産化、女性の高キャリア化が進んでいます

・大学等 進学率 ※※
 2020年の(現役のみ) 全国 55.8% 東京 66.6%
・第一子出産 平均年齢 ※※※
 2018年(最新) 全国30.7歳 東京32.3歳

※※文部科学省 学校基本調査(2020年度(令和2年度))
https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/kihon/1267995.htm
※※※東京都 子供・子育て支援総合計画(第2期)
https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/kodomo/katei/kokosienkeikaku/kokokeikaku2731.html

これらの要因も作用し、全国平均より更に一人っ子率も高いことが想像されると、
容易に兄弟に頼めばいい、歴史的に戦後・昭和のみに広く存在をしていた専業主婦を利用すればいいという世界観ではなくなったことは、感覚ではなくデータで示されています

また、かつてであれば登校班があったり、同じ地域の子どもたちは近隣の幼稚園に通っており 小学校入学以前より地域に友人関係・人間関係がありましたが、
共働き・保育園不足で、遠くの保育園(時には区外の認可外)まで自転車や電車で通うことも多く、時代と制度の間で"地域"は共助の単位としては崩れ去っています

変化する生活様式に対応して連絡手段が刻々と変化を遂げる中、競争が発生しない公立学校と役所は自らの都合でユーザーの利便性を無視したお役所仕事を温存し、
結果的に負担は保護者(多くは母親)が属人的に負い、いわゆる"小1の壁"と称される 小学校就学に伴う母親(父親)の離職も依然問題として横たわっています

【就業時間前の、教員の電話応対は実は違法?】

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以前より中学校を中心に連絡帳ではなく、電話による欠席連絡を(例外としてではなく)広く認めている学校もあるようで、
どんな運用とするかは、学校長の裁量の範囲内に属していると区教育委員会から正式な見解も出ています

そのべ:連絡帳を原則として強く案内をしている学校と、電話連絡も広く可能な学校があるようだが、区教委として現場に判断を任せているのか?共通の指針があるのか?

→教育委員会
:欠席の連絡方法については、各学校が設定し、保護者の方の協力を得て行っている
小学校では、原則、連絡帳によるお願い、中学校においては電話連絡が多い

※2020年3月17日 予算特別委員会: https://cutt.ly/zvyHwCu

そのべ:連絡手段を指定するのは、学校長の裁量に任せる範囲内か?

→教育委員会:YES

※※2020年3月17日 予算特別委員会: https://cutt.ly/EvyHipf

一方で、教員に対しては、法律で残業を命令できる内容が規制されており
「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」から、そのまま引用すると
イ:校外実習その他生徒の実習に関する業務
ロ:修学旅行その他学校の行事に関する業務
ハ:職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
ニ:非常災害の場合、児童または生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
の4項目のみとなっており、
就業時間外に欠席連絡の電話を取ることは、上記に含まれていないと 区教育委員会から正式な見解も出ています

※※※2020年3月23日 予算特別委員会: https://cutt.ly/ivyHWwn

前述のとおり、欠席連絡を電話で受ける方式は校長裁量で決定しながら、法律上は始業時間(8:15)の前にかかってきた電話を取ることは校長命令ではできないため、
教員は無視するわけにもいかず 実質的に強制されながら、職務時間には入らないボランティア対応という労働法規に反する体制で、電話での欠席連絡は運用されていました

残業という概念のない管理職(副校長 等)が対応するという反論もあるようですが、特に風邪の流行る時期の大規模校はひっきりなしに欠席連絡の電話が鳴るという話もあり、また以前より複数の電話回線があったため 実態として管理職だけで全て電話を巻き取っているということは、少なくとも一定規模以上の学校では考え難いでしょう

ともすれば、電話での応対は一切禁止にして、連絡帳に統一しよう!
という暴論にもなり兼ねない中、2020年3月時点の区教育委員会としての落としどころは、留守電・警備員で対応するという内容でした

無事に2021年2月より、全校での留守電利用が開始され、事務的な通知のみの電話に要した教員の負担軽減は可能となった一方で、
区教育委員会からは、従来 電話を可として、メール・システム導入を認めない理由として、子どもの”なりすまし”によるな欠席も上げられていましたが、留守電による対応であれば、文字情報で送ることと大差はなく、
ここからも、特別な理由があってオンライン化を躊躇したというより、今のシステムを温存すること、大きく仕組を設計することを後回しする理由を探してきただけだったことが判ります

【コロナで5年飛び越して デジタル化へ】

2019年秋に区と議論を始めた頃には、全家庭に通信環境がないため、移行にはもう少し時間がかかると言われ、
保育園で1件も紙での連絡帳運用の希望がなかったことを鑑みると、2019年当時の保育園児 世代がもう少し大きくなる頃、具体的には2025年頃には連絡手段のデジタル化も進められるのでないか?という話をしていましたが、
コロナの影響で、この予想から一気に加速をせざるを得ない状況となります。

2月末に急遽決まった一斉休校以後、担任が逐一電話をするしかなかったり、学校単位の配信機能しかできない緊急連絡メール以外に学校・保護者間の連絡システムがなく、余りに効率の悪い運用しかできませんでした

また新入生家庭向けへは情報伝達すらほぼ叶わず、保護者から不満の声が噴出する中、
4月に入りやっと 区教育委員会としてWebサイトによる一方通行の情報発信や、YouTubeへ動画を公開したり試行錯誤も始まり、
学校によっては学校 公式Webサイト上へ、オリジナルの教材・動画の公開もされていました

ちなみに情報発信やファイルの掲載に利用した 学校ごとの公式サイトも、これまではマメな校長による日記的なコンテンツ程度で、
コロナ禍で各校ごとにITスキルの高い教員が独自にカスタマイズして、教材用や家庭への連絡をアップするオンラインストレージとしても利用されましたようです

作られた時代が古すぎて、フィーチャーフォン(ガラケー)対応サイトはありますが、スマートフォン対応すらされておらず、早く改修できないか問い合わせたところ、2021年度は優先順位を鑑みると難しく 2022年度以降の改修を目指すとのことです
(スキルの高い先生方に、属人的に緊急対応を頂いたことはありがたい一方で、公立学校は転勤の可能性があるため、属人的な運用で継続対応することはその後の保守ができない点でもリスクがあります

参考に、下記が校則がないことで近年話題の桜丘中学校のサイトです
全体平均の中では見やすいサイトですら、そもそもグローバルナビ(上部のメニュー欄)のタップが困難です

名称未設定2

もう一つの参考に、同じく近年 大幅なカリキュラムと校名変更を以て 人気が上昇している区内私立学校 三田国際学園のサイトと比較して頂ければ幸いです

2020年春の一斉休校 後半になり、やっと各家庭のオンライン環境補助(中学生・小学校高学年へのタブレット・ルーター 貸与)体制も整い、各家庭へ網羅的なオンライン環境整備を以て、やっとzoomロイロノート・スクールを利用したオンライン上でのコミュニケーションも進むようになりました

また時期を同じくして、3月からほとんど何も動きがなかった状況にしびれを切らした 区立学校に在籍する保護者発で、
世田谷公教育ICT利活用を考える会が立ち上り、

1500名以上の方の回答のうち99%の賛成、700名の賛同者(私も賛同に加えて頂きました)を以て、区長・教育長へ直接 アンケートと要望も提出され、

役所いわく 教育委員会トップである教育長が牽引をするかたちで、デジタル化を進めているようです
(それにしては遅い・レベルが低いと思いますが)

またこの項の冒頭で、デジタル環境にない家庭が一定数存在するためデジタル化に踏み切れないという教育委員会の見解を取り上げましたが、実際に区が2020年5月時点で実際に調査したところ、
99.97%(6398/6400 中)の家庭がオンライン環境にあることが分かり、0.03%という極めて一部の家庭の通信環境の格差に対応するために、残りの99.9%以上の家庭の利便性がないがしろにされたことも分かりました

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※2020年5月 世田谷区議会 文教委員会資料 8
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/002/d00186563.html
https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/002/d00186563_d/fil/8.pdf (PDF注意)

現在では、世田谷区は就学援助以下の所得の過程については、通信量の補助をしているため、
極めて強い家庭の方針がある場合除き、網羅的に区立学校へ在籍中の全ての家庭に通信環境(機器+ネットワーク接続)は届いています

【実態に合わないメール指針と、シャドーIT問題】

既にコロナ休校中の2020年3月末の区議会では、これまで学校・保護者間のメール利用について、メールは絶対使わない!との方針のもと、議会でも答弁すらマトモに応じなかったところから、2020年4月で担当者(教育指導課長)が交代となりました

また学校では保護者からの声と教員の利便性に応える形で、教育委員会の正式な手続を無視する形で @gmail.com 、つまりフリーメールが利用される事態となりました

民間企業でも、社員のLINE上や私的なメールで仕事の話が進んでいくことは情報流出や管理の点で止めましょうということが、さすがに常識と化している中、
各校1アカウントは既に @setagaya.ed.jp という教育機関ドメインのメールアドレスが付与されている中、公文書として管理できず、削除や濫用も可能なフリーメールを利用する、いわゆるシャドーITの問題が噴出しました

これまで2年間、企画総務委員として私も区役所側(教育委員会ではなく区長をトップとする指示系統組織)の個人情報担当やICT担当と、セキュリティや公文書管理について議論をしてきましたが、実際に世田谷区でフリーメールが利用されると これまでの議論の無意味さに驚きを隠せない一方、教育委員会管轄には手出しができない縦割り行政の弊害も感じました

校長等 一部の管理者しか見ることが出来ない公式ドメインのメールアドレスを利用することと、現場が柔軟に運用できることの両方を天秤にかけた結果、後者が優先された、また教育委員会の検討スピードが現実社会と大きく乖離していたことは、偏に2020年3月までの前任の担当者とその姿勢を是としていた部長・教育長(2019年5月までの前教育長)にあります

議会からは、2020年3月時点で、私(都民ファーストの会)以外にも、自民党・立憲民主党・共産党・無所属から連絡帳制度の改善を求める発言が上がっており、党派を問わず 全体として改善を求めていました(その他の方(政党)の発言が漏れていたら、見つかり次第追記します)

都民ファースト そのべ: 2019/09 https://cutt.ly/OvglFaQ / 2020/03/17 https://cutt.ly/avgltnN / 2020/03/23https://cutt.ly/EvgzWtJ
自民党 河野議員: 2020/03/17 https://cutt.ly/Ivglvfb
立憲民主党 中山議員: 2020/03/17 https://cutt.ly/YvglYf2
立憲民主党 風間議員: 2020/03/23 https://cutt.ly/xvgz70J
共産党 中里議員(会派全体の代表意見): 2020/03/27 https://cutt.ly/CvgxY2E
無所属 佐藤美樹議員(会派全体の代表意見):2020/03/27 https://cutt.ly/Lvgx5Vi
(時系列 順)
※ 立憲民主党 中村議員からも 2014年時点で、連絡帳を預ける運用の負担について指摘がありましたが、この時の提案は集団登校班で運用するという内容でした

教育委員会側の担当者の交代や 保護者や学校の声、またフライングで運用が始まったこともあり、教育委員会としても認める方向とし、6月時点で欠席連絡をメールで受けることを個人情報保護審議会に諮り、保護者から一方的に連絡があるものを受信することは認めるという、いわば連絡フォームの代替としての運用は認められました

しかしながら 教育委員会は現場の意見を聞かなかったようで、個人情報保護審議会の諮問を経た上で引き続き禁止とした、担任や学校→保護者へのメールでの連絡は ルールを無視して横行しており、加えて欠席連絡用のメールアドレスを各校に付与した後も、フリーメールの運用は複数の学校で継続されました

ルール無視というと、現場が悪いことをしているようですが、そもそも担任・学校側からメールでの連絡不可というルール自体が今どきあり得ない運用です
保護者が欠席連絡を一方的にメールで送信できることを以て、オンライン化というには余りに双方に不便で、文字通り欠席時の連絡のみがメールに代替され、その後の全てのプロセスは電話や紙で行なわれれば、小手先の負担以外は何も軽減されません

教育委員会へ、2021年2月時点で複数の学校でフリーメールが利用、またメールの受信だけではなく、メールによる担任や学校からの連絡がされているという調査結果を報告し、全校の実態を把握しないのか(そしてルール自体を考え直して欲しい)と問い合わせましたが、
「一斉休校期間に利用していた学校もあるようだが、現在はそのような学校はない」と
最初は私が保護者の方から伺った内容が嘘とでも言うような報告
でしたが、
具体的な学校名まで出して問い詰めると、学校の通信インフラ整備から1人1台タブレットの貸与、ストレージの整備や膨大な量のマイクロソフトアカウントの発行と学校・クラスの紐付け、区内で転校してもアカウントやデータが引き継げる仕組の構築等、学習環境整備にマンパワーがかなりかかっており、この件の実態把握まで手が回らないといった別の事情が見えてきました

確かにこの1年、国の突然の方針決定も含めて膨大な量のデジタル環境整備をした事は事実ですし、実務を担当する職員は飛んでくるボールをひとつひとつ打ち返していたように見受けられますが、
既にコロナ以前より他自治体では連絡手段のオンライン化から、授業の動画配信まで済んでいる自治体は済んでいたので、そもそも問題の所在は 教育領域のデジタル化を後回しにしてきた教育委員会の上層部にもあります

参考にコロナ以前の2019年9月に私も、本気で学習機会の確保・機会均等を目指すのであれば、オンラインで授業を受けられるようにできないか、渋谷区等を参考にして民間の授業動画配信(渋谷区はスタディサプリが導入しています)と提携できないかといった提案をしていましたが、
「具体的手法や経費、必要なインターネット環境などについて、国や東京都の動向も見ながら研究を進め」る、とのことでした
(研究という表現は、具体的検討>検討>研究>調査・実態把握 程度の意味合いで、
 いつかやるかもしれないけれど、当分ない場合に使われます)

フリーメールの件については、4月にはシステムの運用が開始されることでメールを利用する必要そのものがなくなるので、2月-3月で全校調査(と言っても、90校にメールを送れば終わりですが)を要求することで、担当部署のマンパワーを削るのもいかがなものかと考え、矛を収めました
(この時までは私も、4月1日から区内全校システム化されるという甘い見通しでした)

【中途半端なシステム選定】

12月の文教委員会で明らかにされましたが、今月・2021年4月より、欠席連絡用のシステムが導入されました

具体的には下記のシステムです

議事録が残っている議会での検討状況を時系列で並べると、
2020年4月 文教委員会で、担当課長から

双方向、保護者からのやり取りが十分できないというところで、そういったものがやはり必要だということを今切実に感じている
学校休業中の子どもの学びということとはまた別ですが、主に保護者と学校とのやり取りというところでの双方向性のものは、今様々なツールが出ておりますので、そちらにつきましてはなるべく早く整備してまいりたい
https://cutt.ly/YvjZ4Iy

と発言があり、

2020年6月 本会議で、担当部長から

学校と家庭との双方向のやり取りができるツールについては、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からも必要性が今まで以上に高まった
双方向ツールなどの導入につきましては、データ管理の安全性、その他のセキュリティーや、スマートフォンやパソコン等の多様な機器を利用できる利便性などに留意しながら、各種製品を比較の上で取り組む
https://cutt.ly/cvj1rmz
保護者、学校間の相互交流の電子化が必要
https://cutt.ly/qvj1Iol

という発言があり、この時点では双方向性を目指していたことが分かります

また、10月の総合教育会議教育推進会議でも、

小学校PTA連合会協議会の代表者から、
1人1台のタブレット貸与に関連して、オンラインツールを導入して保護者が 学校の先生との連絡が取りやすくなることを期待しているとの発言に対応して、

区立中学校 校長出身の教育委員から、

先ほど保護者のお話にもありましたが、学校との連絡ツールとして、それこそ先ほどのメールではないですが、今まで欠席とか何かといえば電話、またはペーパーに、それこそ今話題の印鑑を押して提出するようなものが多かった学校の文化を、このタブレットの連絡ツールによって、やはり変える必要が今後出てくるんじゃないかと思われます

との言及もありました
※2020年度 第2回 総合教育会議 議事録より引用https://www.city.setagaya.lg.jp/mokuji/kusei/002/001/005/001/d00140008.html

最終的に委託先の選定後の12月の文教委員会での、緊急連絡システムを選定した経緯に対しての報告・質疑では、

板井議員(公明党):例えば学校から各家庭にいろんなものを配付したり、(中略)動画で配信できるとか、そういった活用までできる機能があるのか

→教育委員会:今回の選定の中のいわゆるやらねばならない機能の中には入ってございませんが、
このシステムにつきましては、配付物の電子化というようなことは可能なシステム
https://cutt.ly/0vj3e27

一方で、

教育委員会:配付物の電子化ということにつきましては、このバイザーのシステム以外にも、例えばロイロノート・スクールでできること等いろいろあると思いますので、その辺、総合的に整理して、どのアプリケーションを活用して、何を行うというのはちょっと整理して実施したいというふうに考えてございます
https://cutt.ly/Xvj30M2

との発言があり、

議員だけでなく、PTAの代表者、校長出身の教育委員と様々な関係者から双方向・保護者→学校へ連絡ができることへ言及した提案があったものの、
最終的に選定したのは、
緊急連絡メールの運用に特化した
・緊急連絡メール+既読確認
・出欠連絡システム
となりました。

同日の委員会にて、

下山議員(自民党):この会社のシステム、その他どういったところが優秀だったのか、

→教育委員会:特に緊急情報配信というところでは非常に実績のある会社で、具体的に23区のうち15区がこの会社を何らかの形で採用している
選定のポイントは、最低限、情報配信、既読確認、欠席連絡というところで、確実に運用していけるだけの機能を持っているか、セキュリティーについてきちんとしたセキュリティーが担保されているか、スケジュールも短いので短いスケジュールの中できちんとやっていけるか、体制はどうかというような点から優れている、あとはコストも含めて優れているということで判断した

ということでした。

担任・児童生徒間の学習に関するコミュニケーションが全てデジタル化が可能となった(ロイロノート・スクール)ように、
学校・保護者間のコミュニケーションも完全デジタル移行を前提に、グループウェアや連絡帳ソフトを利用することを勝手に想定していましたが、
結局のところ、既にこれまで世田谷区が利用してきた緊急連絡システムの移行を主眼に、
議会からも問題視の声が大きかった欠席連絡のみは、少なくともデジタル移行した
、というのが今回の欠席連絡のオンライン化であったと捉えています

現実に、今回選定したシステムでは、
・区立学校 全90校/学校全体/学年全体/クラス全体に、
 それぞれ一斉配信はできるが、任意の複数名や個人に対しては配信・連絡できない
・配信内容に対して返信できない(チャット・メッセージ的な機能はない)
・保護者→学校には欠席通知以上の返信・連絡はできない

つまり、今回導入したシステムでは学校(担任)・保護者 双方ともにメールor電話での個別連絡にかかる負担は減りませんし、しかも学校→各家庭のメール利用は、今でも個人情報保護審議会のルールに則ると禁止事項で、
この点は解決されるべき課題としては対応されなかったと言えます

他にも、
・添付ファイルを送ることはできるが、ストレージ機能がなく、逐一送った内容を遡るしかない

今後データを送る運用をしたいとの話もありますが、いわゆるフロー型メディアであるメッセージ配信機能は即時に情報が消費されることには向きますが、週に何十件というデータを送信していたら1週間前の連絡を後で振り返ることすら手間が大きく、データの管理には向きません

今回導入したシステムをカスタマイズしてまでストレージ機能を追加する費用・時間的コストは高く、既に機能が網羅的に整備されているグループウェアを選定すべきだったと考えます

恐らく導入1・2年での急なシステムの変更・方針転換はしないので、現在 別の方法でストレージ機能を用意できるよう、区教育委員会へ依頼をしています

その他にも、現状ではID/passwordさえ知っていれば出欠システムへログインできるため、よくも悪くも児童生徒が自分で出欠を入れることもできることで、
リスクとしては、親の知らないうちに PCのブラウザに保存されたID/passwordで児童生徒が自分で欠席連絡をして、親は学校に行ったと思い、一方で学校は家にいると思い、お互い いないことを気付くのに時間がかかり、欠席中の外出先でトラブルに巻き込まれても発覚が遅れるケースが挙げられます
(子どもが自分の意思で欠席すること それ自体は、いじめや体罰といった生命や身体の危険を回避するケースもあるので、否定はできないと考えます)

この点について、少なくとも保護者が欠席連絡を把握できるように、システムの改修(欠席登録すると、登録メールアドレスやアプリへ確認通知が行くという極めて単純な機能)ができないか、という細かい話についても、具体的に担当者へ改修の依頼を出したりもしています

【教育委員会と現場の温度感が違いすぎる件】

私達 区議会議員は、教育委員会事務局へは、議員の役割・権能として正式に方針を確認し、問題点を指摘し 方針を妥当な方向へ変える・制度の穴を埋める提案をすることができる一方で、
ここまで教育委員会の外堀を埋める議論をして、パンデミックという緊急事態も発生し、よりよい制度設計を提案して、やっと極一部ではあっても実現したかと思いきや、
最終的に各学校が、教育委員会が導入したシステムを利用するかどうか判断(システムを採用)するのは学校長の裁量だそうです

単なる事務処理手段、しかも効率が上がる手段については有無を言わず従って頂きたいと切に願いますが、
学校長に権限をあまりに包括的に移譲していることで、せっかく区議会や教育委員会の中で議論し、税金をかけて用意したシステムも学校にも保護者にも届きません

その結果、現実として新入生説明会では、学校からで3月末でクローズする旧・緊急連絡システムへの登録を案内されていたり、支離滅裂な状況となっています

恐らく当該学校の担当者は4月1日に新・緊急連絡システムとなることを加味せず(知らなかったか・サボったか)昨年までと同じ資料を案内したと思われますが、
教育委員会の見解としては、入学式までに何かあった場合の連絡手段がなかったとのことでしたが、他方では3月時点で在校生に新・緊急連絡システムを案内していた学校もあるそうで、新システムを案内することは問題なく可能だったことは間違いありません


ここまでしか聞かないと現場の学校が一方的な悪者のようですが、学校側もシステム化に闇雲に反対している訳ではなく、制度に不備があり、そのせいで学校側に無意味な負荷が大きくかかるようです

(2021.06追記)
以下の"個人情報"(?)に過度に配慮?した運用は、4月の個人情報保護審議会で是正したそうです
(導入 数週間で見直すなら、当初から煩雑な運用をしたことは理解できませんが、
現場の声を聞いて割と対応した点については従来の教育委員会の姿勢より遥かに能動的に感じています)

(以下既に是正済みです)
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具体的には、保護者がシステム上から欠席連絡を送信すると、学校のシステム宛に、
ID: setagaya1234 さんから欠席連絡が来たと通知される仕組となっているようで、
各学校で保管するIDと名前を紐付けているマスターデータで照合の上、改めてID: setagaya1234 さんが、何年何組の〇〇さんであることを紐付ける工程が無駄に必要になるそうです
(しかもマスターデータの閲覧権限は、一部の制限されているそうです)

スクリーンショット 2021-04-19 11.30.49

上記の手間・コストを考えると、現場は電話の方が効率がよいと考えているそうで、 確かに2021年2月に留守電を導入した今、既に教員が逐一電話を取る負担も軽減されており、
留守電を再生して聞き取るコストと、わざわざマスターデータのエクセルと逐一にらめっこするコストは、前者が低いと言わざるを得ません

(常識的には本来は留守電を再生するコストより、必要な文字情報がひと目で見られる方がコストが低いですが)
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(以上、既に改善済)

最大限 良く表現すると 個人情報を丁寧に扱っているとも言えますが、そもそも安定した運用やセキュリティを最重要視して選んだにもかかわらず、システム上で完結しない極めて不便な「オンライン通知+目視での照合」というアナログを組み合わせた仕組を教育委員会が現場のことを考えず採用したことで、

結局、学校・教員はデジタル化の恩恵(=効率化・負担軽減)は受けられず、
それが原因でそもそも各家庭へ欠席連絡システムの存在すら明かされない
のが現状のようです

またシステム導入以前、メール連絡が可能となった学校の保護者からも、
欠席連絡そのものはメールで可能となっても、明日の持ち物・宿題等の連絡がもらえない(電話での口頭説明だと伝わらない場合もあり)現状のオンライン欠席申請よりも、返信は連絡帳の方が優れていたとの声も届きましたが、
まさに一部のみをデジタル移行したことによる歪が生じており、全体の流れを設計しないデジタル化は却って混乱を招くことにもなります


【誰もが使いやすいシステムへ】

ここまで述べてきた3点、
・運用コストを極限まで取り除く仕組の改善
・双方向でのやりとりができるようにすること
・情報をストックするストレージ機能を持たせること

を以て、やっと汎用的に利用が可能な学校・保護者間の連絡手段のデジタル化と言えると考えています。

目標に対して、欠席連絡がオンライン化しただけの現在は10%程度の進捗率で、

それ以降の目安を示すとすれば、
少なくとも今後の教育委員会からの各家庭へのお知らせが全てシステムを通じるようになって(今後不要な紙を浪費することを止めて)20%
学校・学年・クラス単位の連絡もシステム移管されて30%
(以上、現在のシステムの運用改善で実現可能)
個別の情報配信が可能になり50%
保護者から学校へ連絡ができるようになって70%
家庭からの提出物・申請書類が電子申請化されて80%
(※アンケート機能で、既に一部オンラインで実施済)
ファイルがストレージに整理されて90%
情報が紙媒体を前提にする必要すらなくなるためA4・B5サイズのPDFやwordファイルではなく、目的に応じてテキスト・画像・音声・動画等の型式となり100%
と考えています

個別配信以降は、現在のシステムでは世田谷独自のカスタマイズが必要となるため、既に今春導入したシステムでは現実的ではないと感じています
緊急連絡システム自体は必要ですが、今回何故かそれを大前提としたせいで、今後必要な機能を棄損して却って古めかしいシステム(双方向性に欠ける一昔前の機能感)になっている印象すらあります

個人的には、保育園で利用されているような連絡システムや、究極的には何の変哲もないグループウェアを入れればいいだけでは?と思っています


【終わりに】

うちの学校は効率よく双方向で運用されている(もし学校からメールがあれば厳密にはルール違反ですが)、もっといい案がある、この辺りをどうにかして欲しい、というご意見のある方は、
SNSのDM、若しくは https://sonobe.tokyo/ の問い合わせフォーム等でご連絡を頂ければ幸いです

ここまで長々と書いてきましたが、コロナ禍の1年だけでなく、それ以前の5年間もほぼ脚光を浴びない中で、
・押印の見直し
・元号利用の見直し(儀式以外の実務文書やシステムの西暦(どうしてもなら皇紀)への統一)
・PC前提からモバイルファースト/スマホ対応への見直し
・公文書の電子化
・PDFデータから利用可能なオープンデータへの見直し
・FAXの廃止/郵便・庁内便の縮小
等、デジタル化の基盤を作る政策提案を進めてきました

具体的にデジタル領域の議論ができる区議会議員はまだまだ少ない(DXと電子化の区別がついていない人すら多い)ですが、
今後、一緒に世田谷区のOSをアップデートして頂ける方も増やせればと思いますので、同世代の方、また20代以下のデジタルネイティブ世代の方々のご連絡をお待ちしております

結びになりますが、具体的な各校の状況をissuesやメールSNSを通じて教えて頂いた皆様に感謝を申し上げます
引き続き、教育委員会も把握しない学校の実態についてお聞かせ頂ければ幸いです



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