サルベージ・パーティ×日本料理(仮) のふりかえり〜その1
サルベージ・パーティ®︎(サルパ)とは、家で「もてあましている食材」を持ち寄って、みんなでおいしい料理に変身させる「食材シェアパーティ」です。
最初は参加者として参加していたのですが、その魅力に惹かれ、自分も自分らしい何かをしていきたい、と思い、サルベージ・プロデューサーの資格を取りました。(サルパの魅力については、また後日書きます)
そして、はじめたのが、「サルベージ・パーティx日本料理〜日本の食卓からフードロスを考える(仮)」(名前は考え中なので、(仮)にしています)。
ちょうど始めてから一年くらい経ったので、ふりかえってみたいと思います。
サルベージ・パーティ×日本料理〜日本の食卓からフードロスを考える(仮)とは
ちょっと長い名前になってしまったのですが、良いネーミングが思いつかず、考え中のまま、ここまで来てしまいました。この企画では、和食と食材にスポットをあて、毎回食材のテーマを決め、その食材の生産者さんからのお話を聞いたのち、プロの日本料理人の方からその食材の使いこなし方を教えていただきながらお料理をいただく、という内容になっています。
食材は持ちより形式ではないのと、自分たちでの調理はしないので「みんなでつくる楽しみ」がない点は通常のサルパとは異なりますが、サルパを開く目的の中の、「食への興味を持つ」「新しい使い道を発見する」「みんなで食べる時間をとおして楽しむこと」、それらを通じて「じぶんにできること」を考えるきっかけづくりにする、というところは共通していると思います。
[サルベージ・パーティx日本料理〜日本の食卓からフードロスを考える(仮)の流れとポイント]
1.食材が食卓に届くまでを知る。
生産者の方より、その食材ができるまでの過程や、おいしく作るための工夫、込められた思い、などのお話。その食材について知る、つくるひとと出会うことで、その食材への魅力が深まり、より身近なものに感じられる。
2.食材の使いこなし方を学ぶ
プロの日本料理人の方より、「食材を、おいしく、美しく、使い切る」コツを教えていただく。和食の考え方、とともに、食材を大切に使いこなすコツを、家庭でも簡単にできるように落とし込んで教えていただきます。
3.みんなで食べる
いろいろな形に変身したおいしい料理たちを、みんなで楽しくいただきます。1つずつお話聞きながら食べていくので、2と3は並行して行われます。
ある日の様子(海編:ゲストから東京の海についてのお話(左)とサルベージ・メニュー(右))
つくるひとと出会ったり、つくる過程を知ったり、おいしく食べたりしながら、「食べ物をおいしく大切に使うこと」を、いろいろな視点から、それぞれの立場で改めて考えられる場所になったらと思っています。
愛知県碧南市の日本料理一灯の長田料理長と、東京でサルベージ・プロデューサーとして勉強中の私とで、2019年6月から、東京で3回、愛知で2回、開催してきました。東京開催の時は、こまきしょくどうの藤井小牧さん、chavipelto-チャヴィペルトの中山ご夫妻にもご一緒いただいてます。
【これまでの開催の記録:クリックするとレポートがのぞけます】
東京編 @こまきしょくどう
第1回目 お野菜編:chavi pelto の中山ご夫妻の野菜のお話
第2回目 調味料編:七福醸造の岡本さんの白醤油と白だしのお話
第3回目 海編:遠忠商店の宮島さんの佃煮と東京の海のお話
愛知編 @日本料理 一灯
第1回目 基本編:一灯の長田料理長の和食と食材の使いこなしのコツのお話
第2回目 旬のにんじん編:VegeTanaQの永井さんのにんじんのお話
日本に昔からある、食材を無駄なく大切に使うということ
〜なぜ、サルベージ・パーティ×日本料理になったのか
和食文化国民会議のイベントのお手伝いで長田料理長とご一緒させていただいた時、修行時代の料亭の大旦那さんの「後始末を考えて、料理を組み立てる」という言葉を大切にして、上手に食材を使い切ることを日頃からしているというお話がとても印象的でした。料亭で食べる日本料理は、きれいな見た目で、洗練された味で、きっといいところしか使っていない、と思い込んでいました。でも、実際は、素材の良さに加えて、切り方、調理の仕方、保存の仕方、など、料理人の方の熟練の技により、食材を無駄なく大切に使いつつ、おいしく彩りきれいな料理をお客さまに提供している。
他にも、日本には昔から、食材を大切に使う知恵や工夫が習慣が昔からあります(単に使い切るということだけではなく、食材そのものを楽しむ)。
大切に使い切る:分解して考える。各部位の特徴を活かす。共通項を組み合わせる。
食を楽しむ:和食の「五」という考え方(五色、五味、五法、五感)
季節を楽しむ:旬の食材、節供の料理
保存の知恵:発酵、乾燥、酸、塩分
自然のめぐみを尊重しつつ、暮らしの中で伝えられてきた工夫で、大切に味わう。
身近にずっとあったことなのですが、意識していなかったり、時代の変化の中で消えてしまっていたり。そんな、日本の食に対する考え方、作法、食材、それらの魅力などを、もっと知りたい、でも、わたしだけではもったいない、と思い、みんなで聞けるような形にしたいと思い、このような形にしました。
日本料理人が台所に立ったら
〜「家でも試してみよう」と思えるような内容にしたい。
わたし自身、おいしいものを食べるのが好きなので、自分でも作れるようになりたいと、いろいろ料理教室に行ったり、本を読んだりしていましたが、家で実際やってみようと思うと、同じ材料や調理器具がなくてうまく再現できない、ということがありました。でも料理人の方に相談すると、自然と「それならこれを使えばいい」と、食材も調味料も道具も、すぐにそこにあるもの、で代替えできるよう、頭の中で変換して、作ってしまう。さらに、思っていたものより、おいしい、驚くようなものに変身させてしまう。何か方程式のようなものが頭の中にあって、食材の特徴、各地域の郷土料理の知恵、とかが組みあわさって、いろんな料理に変換されているのかな、と妄想してしまいます。
そこで、イベントでは、レシピではなく、「使いこなしの技」や「考え方のコツやポイント」を教えていただくような内容になるようにしています。
もてあましがちな食材を変身させる 考え方のポイントの一例
1.特徴を分解して考え、いつもと違う料理に変身(外観、風味、食感)
2.常備菜、保存の知恵(塩、酸、乾燥、発酵)
3.食材について知る(知らなかった魅力、使い方を発見)
そこから生まれたある日のお料理たち(旬のにんじん編より)
〈前菜〉
切り干し大根&人参:人参を乾燥させて長持ちさせる工夫。煮物用の人参の皮をむいた時の、人参の皮の活用にもなっています。大根でも同様にできます。
〈刺身〉
三色のにんじんのつまを添えて:カラフル人参の活かしかた。サラダにも活用できます。
〈揚げ物〉
にんじんしんじょ:人参の千切りと紅生姜。すり身に混ぜ合わせてあげました。〈酢の物〉
にんじんドレッシング:ふだんは捨てられがちな人参ジュースの搾りかすの活用法。碧南地方では、搾りたてにんじんジュースをよく飲みます。その搾り粕に、お酢とオリーブオイル、白たまりを入れて混ぜるとドレッシングに変身。このまま食べても美味しく、彩りもきれいになリます。
〈煮物〉
豚角煮と人参きしめん。人参をピーラーで剥いて、茹でたものをあんに絡めて添えました。いつもと違う形に変身することで、みためも味も食感も新しい。麺みたいでおいしいと好評。
〈食事〉
丸ごとにんじん釜だきご飯:丸焼きした人参と白だしでご飯と炊き込んでにんじんの甘味を引き出します。仕上げにきんぴら人参とじゃこを混ぜて、旨味もたっぷりな贅沢ご飯。見た目のインパクトも抜群で、大人気メニュー。
〈デザート〉
にんじんプリン:煮物などの切り出しの工程で出てくるにんじんの切れ端などを全て蒸して潰して、にんじんプリンに活用。
家に帰ってきてから、家にあるものを見渡してみて、何かひとつでも、試しみてみるきっかけになるといいなと思います。
つくっている人と出会える
〜食材との距離感を縮めたい。
便利になって、スーパーに行けばいろんな食材が並んでいて、ネットで検索すれば遠いところの食材も買える。
ある時、作っている人のお話を聞いて、あらためてその食材を使っていると、その食材との距離感が縮まったような感覚があり、「たいせつに使いたい」「おいしく料理して食べたい」とより強く思うようになりました。
その食材が、どういう風に作られているのか、どんな大変なことがあったか、おいしく作り、届けるための工夫や努力、わたし自身知らないことがいっぱいで、食材を使っていく上で、とてもたいせつなこと。
つくっている人と出会うことで、その食材をより身近に感じ、より親しみを持ってたいせつに思えるようになるといいなと思います。
これまでお世話になった、ゲストの方々については、また改めてご紹介させていただきたいと思います。
おいしい記憶はたいせつ
〜食卓を囲んで食べる
わたしがサルパで一番好きな瞬間は、みんなで「いただきます」と「ごちそうさま」をするときです。だれかと一緒に食べると楽しいし、よりおいしい。そして、その料理も、その味のことも、記憶に残りやすい気がします。
食べながら料理人の方にいろいろ質問もできるので、これもサルパの特典です。ふだん料理店で食べるときは、料理人の方は厨房にいるので質問しにくいですが、サルパでは基本的なことから個人的ことまで、なんでも聞くことができます。
「おいしさをシェアする」みんなで食べると楽しいし、よりおいしい。その感覚も大切にしていきたい。
ちょっと話は違いますが、私は時々「もったいない」のフードロス、をしてしまいます。たとえば、高価なお菓子をもらった時に、「一人で食べるにはもったいないから、みんなで食べるときにとっておこう」と思って、タイミングを逃して賞味期限が過ぎてしまったり、貴重なお酒をいただいたので、これは今度みんなで集まった時に飲もう、と思っていて、冷蔵庫の中で眠り続け本来の美味しさとは変化してしまっていたり。。。「おいしさをシェアできる空間」のたいせつさを感じられるのも、サルパの特徴だと思います。
これから
〜伝える 方法を考える
改めて振り返ってみると、共同主催者やゲストの方々、その他お手伝いくださった多くの方のおかげさまで、とても濃厚な内容で続けてくることができ、感謝の気持ちでいっぱいです。
しばらくは、開催するのは難しい状況になってしまいました。今まで以上に、食のたいせつさ、人と会えることのうれしさ、みんなで食べる空間の貴重さ、を感じる今日この頃です。
料理人の方、生産者の方、お店の方、消費者、それぞれみなさま大変な状況下になっております。まだまだ計画していたことはあるので、今までとは違う形で、わたしのできることを考えていきたいと思います。
食材を作る人、使う人、食べる人、届ける人、それぞれ違った、その食材に対する、思いや見る角度があります。それらを知ることや、食材そのものについて知ることで、「たいせつ」に「おいしく」食べる、ことをみんなで考える。私自身、勉強中ですが、自分にできること、として、「食」への向き合い方、を考える場を作っていけたらと思います。