stand.fm 06 :: 『作品の物質化としてのCD』
3rd アルバム『Torus』のアートワーク担当 Aim Design 根岸さんを迎えて、音源をデザイン化するプロセス、そして、モノとしてのCDと印刷について。
収録時はプレス発注したタイミングだったんですが、
完成品が到着しました。
今の時代、CDというフォーマットそのものが特異な意味を持つようになっていると思います。
「音」を銀盤という物質に定着し、所有するということ。作品をモノとしてわざわざ部屋に置くということに、モノとしての価値やある種の贅沢さが生まれています。
ミュージアムショップで画集やリトグラフを購入したり、
本をハードカバーで所有し、本棚に並べる感覚に近いかも知れません。
『Torus』をCDで所有する方は、本当の音好きだと思います。 作品を所有してもらう、つまり、モノとしての価値をアートワーク、印刷、テキスト、そしてケースを開いた時の体験など、すべて作品の一部として作り込みました。
今回、アートワークをお願いしたのは Aim Designの根岸さん。
岡村靖幸さんをはじめ、数々の音源の装丁を手がけられています。
僕とも気がつくと20年近くの知り合いです。
今回の制作にあたり、まだラフミックスだった音源を聴いてもらいながら、
根岸さんと何度もリモートで打合せや調整を行いました。
音源プロジェクトの一員ぐらいの密度で、やりとりを繰り返し、
作品が持つコンセプトを丁寧に、すべてのアートワークの要素に落とし込むプロセス。
紙、印刷にはデジタルとはまったく異なる世界が広がっており、紙質や印刷方法などで無限の組み合わせがあり、印象がまったく異なってきます。
同時に納期、予算を技術含めた課題とコンセプトを乗算させて、ユニークネスにつなげていく作業。音源の制作と同じ創造が、紙を舞台に起こっていて、とても新鮮でした。
こうして辿り着いた選択肢が、元々「銀鼠(ぎんねず)」と呼ばれる色を素材として持つ上質紙に、白インク、四色プリントを組み合わせて印刷し、紙色の透過と色の層を使って、物質的に色と質感をつくるという手法でした。
仕上がりを見たとき、僕は作品『Torus』に、もう1トラック、スペシャルな楽曲が加わったぐらいの感覚でした。アートワークは紛れもなく、作品の一部であり、体験です。
もし、本作が意図する完璧な体験を求められる方は、是非CDを入手してみてください。