小説『生まれ直す街』
登場人物紹介
『生まれ直す街』
風がひとふき枯れ葉が舞う、からから転がる、ぱたん。ホウキで動きを止めてやった。素早くチリトリに掃きいれため息をつく。まったく。文句を言いながら枯れ葉の出どころを睨んでやった。
母が植樹したものだった。先週末、庭先に腰の高さくらいの枝が立っていたから、なんか棒切れ差してあるな、地鎮祭か?と見て見ぬ振りしていたら、これがいけなかった。
みるみる大きくなって二階建ての屋根をゆうにこえる大樹に育っていた。一昨日からワオテナガザルのつがいが棲みついたもんだから切るに切れない。トトロのどんぐりじゃないんだからまったく、さっきより大きめにため息をついた。
歩道に散らばった落ち葉はまだ半分くらい残っていたが、8時までにははきおえたかった。ゴミだしがまだだったし、お隣の林さんの奥さんは落ち葉を前にすると呪文を詠唱して火をつけようとするからその前に片付けたかった。
「あっ!」
しまったと思った。よそ見していたらもう詠唱が始まっていたのでけちらす。
危なかった、すでに精霊とやらに命じていたっぽかったから着火寸前だっただろう。ボヤは困る。相手が何かは知らないが物騒な契約などしないで欲しい。
「おはようございます。」
声をかけてきたのはタマキちゃんのお母さんだった。手を引かれているタマキちゃんは母が勤めているスイミングスクールの生徒さんで、最近言葉を話すようになったばかりなのに老人みたいなことを言う子だ。タマキちゃんおはよう、と話しかけると
「賢い人は馬鹿になれる。馬鹿な人は賢くなれる。」
と真顔で言うもんだから黙ってしまった。
なんだか居酒屋のカウンターで相席になる常連客のおじいちゃんみたいなことを言ってるなと思ったが、タマキちゃんはまだサ行がいえないので「賢くなれる」のところが「かちこくなれる」になってしまっているのが可愛かった。
しゃっ!とカーテンが開く音がした。見やるとコタロウ君だった。斜向かいに住む浪人生のコタロウくんは、相当惨めな思いをしたらしく、「強くてニューゲーム」と本人は表現していたがこの世で無双を目論んでいて、ドキュン(って今言わないか)を懲らしめる方法を企みながら、よく2階の窓からコンビニを見下ろしている。記憶にある限りずっと浪人生だから二十代後半だろうか。
みんな異世界から転生してきた人たちだった。この世界は平凡だからみんなただの人。
しかし、転生組の人たちはみんなちょっとおかしなことを言ったりやったり、変な格好してたり、それぞれに目的がある。
足元を見ると林さんの奥さんが
「ファイヤーストーム…。」
と言いかけていた。シャッ、と落ち葉をチリトリに掃き入れてやった。しばらく無言で見つめ合った。
(こちらに続きます)
(大橋ちよさんのこちらの募集に応募するつもりで初めて小説らしきものを書いてみたんですが、応募するのやめときました。この話で絵を描いても面白くならなさそー、と思って笑。小説をお書きで、ご興味おありの方は物語を大橋さんに絵にしていただきましょう!)