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枯れ紫陽花
季節がようやく
歩みを始めたかと思えば
また夏日に戻り
紅葉も足踏みをしているようで
行きつ戻りつの曖昧な秋が
続いています
秋桜の花が終わり
彩りが樹々へと移る頃
毎年楽しみにしているのが
紫陽花の枯れ姿です
花弁を落とさず
そのままの形を留めた額紫陽花が
まるでガラス細工の
細かなレース編みのように
光を透かして佇む姿は
繊細で儚げで
触れると壊れてしまいそうな美しさ
『枯れてなお美しく』
という言葉のままに
雨の季節に咲く紫陽花とは
まるで表情の違う姿に
心惹かれます
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言葉を持たない草花たちは
どんな想いを抱いて
咲いているのだろう
時折 そう感じることがあります
勿論 草花には感情など
無いのかも知れませんし
色も形も咲く場所も
自ら選ぶことは出来ないけれど
季節が巡って来ると
誰に教えられるでもなく
静かに蕾を膨らませ
花を咲かせる
そうして次へと生命を繋ぎ
やがて潔くその身を大地へとあずける
言葉もなく 迷いもなく
見る人が居ようと居まいと
ただそっと美しく咲いて
その生涯を終える花たち
その姿に
理屈抜きに心惹かれ
癒されるのは
無駄なものを一切纏わず
生命の巡りというものの
純粋な姿を見るからなのかも
知れません
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この場所で思いのままに
言葉を綴るようになり
不思議と心が凪いでいくのを
感じています
時代が変わったことを
ひしひしと感じながら
その中であらためて
自分が心から惹かれるものが
浮き彫りになり
不思議なことに自分自身は
流れに逆らって
原点回帰して行くような感覚が
あります
自分のあるべき場所を
教えてくれているのは
変わることのない
季節のごとの草花たちの姿や
移ろう四季折々の風景なのだと
あらためて感じています
大切なことは
今の自分がどのような場所で
どのような景色を見ながら
生きていたいのか
何かを強く握りしめることなく
迷いなく
言葉少なく
静かに穏やかに
そして
凛としなやかに生きていたい
枷を外して軽やかに
秋の柔らかな光に揺れる
軽やかで繊細な枯れ紫陽花の姿に
あらためて
そう感じるこの頃です