法務の仕事で大切なことを改めて考えてみました
先週は法務の仕事をするうえで大切なことを改めて認識した機会がいくつかあったので、考えたことの記録も兼ねて書きたいと思います。あくまでも今の時点での個人的な考えで、今後より経験を積めば考えることも変わってくると思います。
Twitterも細々やってます。
1.事業理解・会社理解
当たり前のことではあるのですが、自社の事業が提供している価値や自社の収益構造を理解したり、会社全体でどのように仕事が回っていて各部署がどのように関わっているかを理解することは大切(というか必須)であることを改めて感じた機会がありました。これがなければ極端な話仕事にならないし、逆に深い理解があれば社内での信頼が得られたり、客観的な期待以上の価値を先回りして提供できるのではないかと思います。
個人の目標に「当社の事業を管理部門で一番理解している人になる」を設定していて、久しぶりに振り返ってみたのですが、客観的に自己評価してみて、できてないなと思ったのです。そして、そろそろ入社して半年になるので、あまり甘えてはいられないな、と。自分の仕事のことを尋ねられて嫌な思いをする人はいないと思うので、まずは日々の仕事での関わりをきっかけに探ってみたり、話がしやすいキーパーソンに聞いてみたりしたいと思います。
2.専門知識
次も当たり前の部類です。法学の体系的な勉強をしたことがない自分としては、理屈にとらわれずに柔軟に考えることをいつも意識してそれをカバーしてきたつもりですし、法律事務所に勤めているわけではないので、特定の分野を掘り下げるようなことも必要性は高くはないと思ってはいるのですが、一方で、専門知識はもっと高めなければな、と思う場面がありました。
一つは、会社の法務仲間の存在。正社員ではないのですが、司法試験に向けて勉強をしている子が一緒に働いていて、該当する条文をさっと探せたり、法令の原則ではこうなってますということがぱっと言えたりするんですよ。
もう一つは、経営会議に事務局として参加していて、様々な課題に関する議論が行われる中で、経営に対する法務の役割や立場を再認識したこと。
さて、会社を導くために、または危ないことを防止するために、経営陣から意見を求められた場合に、その場で適切なことが言えるだろうか。それを想像すると、言えそうなこともあるし自信がないこともあるな、と。その程度じゃダメだな、と思ったわけです。そういった役割を果たすために、なぜ・どの分野を・どのくらい掘り下げるべきなのか、というのはきちんと考えなければなりませんが、会社の自分の立場の重さを改めて感じた次第です。
また、会計・税務・労務・IRなど、周辺領域の知識も浅く広く得ておく必要がありますし、これらをより理解できれば、法務の仕事の深みが増したり、法務以外の領域に守備範囲を広げたりすることができるのではないかと思います。
3.サービス精神
法務って、「よくわからないから法務に聞いてみよう」ということがよくあります。バックオフィスの他の職種もそうかもしれません。そうしたときに、仮にそれが本来の自分の仕事ではないとしても、役割を超えた同僚として・もっと言うと人として、どのようにふるまうか、つまりはサービス精神(ホスピタリティとも言いますね)をもって対応できるかで、信頼関係を作ることができ、良い仕事につながるのだと思います。信頼関係があれば会社で起こっていることの情報を早めに入手できますし、特に悪い情報が伝わってくる関係を作ることは信頼の一つのバロメーターになるかと思います。
管理部門の同僚に、何かを頼まれるとすぐ動ける、時にはさっと外出して必要な書類を取ってくる人がいます。おそらく人を助けるのが好きだったり、困っている人を放っておけないというのもあるのかもしれませんが、あの動きの速さは刷り込まれているんだろうと思うくらい。真似できないけど真似したいポイントです。
もちろん、引き受けすぎて個人としていっぱいいっぱいになってしまったり、仕事の範囲を広げすぎて本来の責任を超えた責任を負うようになってしまったり、逆に人の領域に侵害してしまったり、そういうことにならないようにバランスはとらなければいけませんが、仕事をするためには信頼関係と情報が必要なところ、サービス精神があるとプラスに働くと思います。
4.好奇心
法務の仕事は契約関係や法律関係が多いものの、その多くは会社のやりたいことを形にすることです。会社のやりたいことは、会社の事業そのものなので、業界に関する知識も少なからず必要です。
もちろん、業界にまったく興味がないのであれば入社してはいないかもしれませんが、社会や技術の変化が激しい現在において、会社がやることも急速に変化しており、中にはほとんど知らないことに携わらなければならないこともあるかもしれません。
そんな中、まず必要だと思うのは、世の中で起こっていること全般に興味を持つことです。例えば、新聞や専門誌を読んだり。世の中の動きを把握し、新しい物事の概要くらいは知っておくと、仕事にも役立つことがあると思います。
もう一つは、仕事をする中で突如聞いたことがない物事が出てきたときに、物怖じせず、食わず嫌いにならず、わかる人に教えを乞えるようにしておくことです。もしかしたらそれが今後の会社の中心事業になるかもしれないですし、その場合ついていけないと法務として仕事ができなくなってしまいますから。
5.飛び込む少しの勇気
事業を理解したり、新しい物事の知識を得たりするためには、身近な人に聞いたり書籍などから情報を得るという方法もありますが、やはりそのことに詳しい人の話を聞くのが一番です。むしろ、会社ごとの事情は書籍には載っていません。でも、時間をとって教えてもらうには、やはり恐縮してしまったり遠慮してしまったりします。そんな時は勇気が必要ですが、思い切って飛び込むのが一番だと思います。それで自分の仕事がやりやすくなったり、周りとの関係がよくなるのであれば、価値のある行動だと思います。
なんでこれらが必要なのか
さて、これまで法務の仕事で大切なこととして5つを取り上げましたが、なぜこれらが大切だと思うかの理由は、「情報がほしいから」です。
すでに触れた部分もありますが、法務の仕事は情報がないと成り立ちません。契約書を作るにしても、どのような取引をしたいのかという情報が必要です。情報が多ければ、よりよい契約書ができるはずです。さらに、依頼を受ける前に先回りして、法務の目線での事業への提案もできるかもしれません。悪い情報も、早めに入手することで、対策を立てやすくなり、ダメージを抑えることができます。
そして、情報を入手するために必要なのは、信頼関係。「○○に相談したら一緒に解決策を考えてくれるかもしれない」「気になることがあるから言っておこう」と思ってもらえる関係が築けるかどうか。ニワトリと卵の話ではないですが、良い仕事をするためには情報が必要ですし、信頼関係を築くには良い仕事が必要です。そうしたループする営みの中に、好奇心だったり、飛び込むだったり、事業理解に基づく共通言語で話すだったり、そういう要素を加えて行って、関係を作っていくのが理想かと思っています。
ちなみに、最近『強い企業法務部門のつくり方』という書籍を読んだのですが、まさに情報の大切を言っていて、共感や学びが多くありました。
だから法務はおもしろい
法務の仕事のおもしろさは、会社のいろいろな情報に触れられること、そしてそれらをもとに会社を動かすことができることだと思います。もっとよい仕事ができるように、今回述べたことを改めて意識して取り組んでいきたいと思います。