仕事の目標の考え方

3月で年度が終わり、4月から新年度になったことで、昨年度の目標の振り返りと新年度の目標設定を行いました。今の会社では、これまでにない視点で仕事の目標を考えています。というか、考えさせられています(会社としてそうしているというのもあるし、上司によって、というのもあります)。これまでは、なんとなく当たり障りのないことや崇高な目標を掲げておいて、評価の段階でもまぁまぁいい評価がついたのですが(特に、上司にある程度いいイメージをもってもらえていれば)、今は何のため何をやるのか、をきちんと考えなければならなくなっています。
「ならなくなっている」と言っても仕事への取り組み方の新たな発見でもあるので、まとめてみたいと思います。
これまで学んだ考え方・ステップは以下の通りです。
①何を目的とするか
②目的のために何をするか
③その結果、どのようなインパクトが、誰に対して生じるか
・インパクトと目的がリンクしないといけない
・目的は組織の目標とリンクさせる

何を目的にするかを考える

まず、今年度は何を目的に業務をするのか、言い換えれば業務を通じてどんなことを実現するのかを考えます。どのようなことでも目的がしっかりしていればそのために何をすべきかというのが明確になってきますし、逆に目的が定まっていないと個々の行動が本来の目的につながらなかったり、行動すること自体がが目的になってしまったりします。(ずいぶん間が空きましたが)前回の職務発明規程のお話でも、「当社は何のために特許を取るのか」という点が明確になったことで、どのような制度が適切なのかを考えることにつながりました。
なお、ここでの目的は、会社の組織目標に沿ったものでなければなりません。

目的に向かって何をするかを考える

組織目標に沿った目的が定まったら、次は、それを実現するために何をするのか、ということを考えます。目的は明確でなければなりませんが、手段は様々なものが考えられます。考えられる手段のうち、自分にとってやりやすいもの・自分の価値が発揮しやすいもの・周囲の協力が得られそうなものなど、自分自身と周りの環境によって適切と思われるものを選べばいいと思います。
手段はあくまでも手段なので、定量的に測定可能でなくても構わないと思いま。ただ、定量的なものを掲げておけば、行動をするにあたっての目安にはなります。

手段の実行によって生じるインパクトを考える

次に考えるのは、先ほど決めた手段を実行することによってどのようなインパクトが想定されるのかです。インパクトをみることで、自分の行動が目的達成につながっていたのかどうかをみることができます。
まず、インパクトは初めに定めた目的に直結していなければなりません。例えば、コストを削減して継続的に利益を増やすという目的に対して、今年我慢して一時的にコストを抑えることと、仕組み自体を変えて毎年にわたってコスト削減を実現するのでは、後者の方が目的を考えるとインパクトが大きいわけです。前者がよくない、ということではありませんが、どちらの方が目的に近づけたかというと後者なので、なるべくこのような大きなインパクトを生じさせるべきです。もし想定されるインパクトが小さいのであれば、手段を見直した方がよいかもしれません。
インパクトの大小は、量的なもの(金額やその他の指標など)だけでなく、範囲(自分だけなのか、自部署なのか、会社全体なのか、業界にわたってなのか、など)も対象です。立てた目的にもよりますが、基本的には量が多く範囲も広いほど、大きなインパクトが与えられたということになり、目的の達成度合いも大きいと言えます。

手段は変えてもいい

目的を定めてから実際に業務をしていく中で、やりにくいな、とか、この手段は間違っているんじゃないか、とか、思ったほどのインパクトが生じないな、とか、想定外のことが起こることもあるかもしれません。そのようなときは、手段が適切ではなかったか、インパクトに関する認識のずれがあったということなので、修正する必要があります。何が適切かは自分起因のものもありますが、環境起因のものもありますから、むしろ定期的に振り返る方が望ましいのかもしれません。手段を変えればインパクトもそれに応じて変わるものだと思われます。
一方で、目的に関しては、自分は何を実現するのか・自分はどんな価値を発揮するのか、という存在意義のようなものなので、安易に変えるべきではないと思います。もちろん、自分に合わない目標を無理して続ける必要まではないですが、途中で修正しなくていいように、初めの段階で入念に設定すべきものであると思います。
実際に活動していく中では、初めに定めた手段のみを実行するわけではなく、それ以外にも大小さまざまなことを行っていくことになります。そして、あまり念頭になかった手段により想定したインパクトが生じることもあるかもしれません。手段は手段なので、当初想定していなくても適切にインパクトが生じていれば、その手段は正しかったと言えると思います。とはいえ、結果的にインパクトが生じても想定していなかったものだとすれば「たまたま」の可能性もありますので、ある程度どのようなインパクトが生じるかは想定できるようにしておくべきです。
こうして考えると、よく会社の指針としてミッション・バリュー・ビジョンというのが言われますが、これまで述べた目的・手段というのは、それぞれミッションとバリューにあたるのだと気づきます。目的は自分が実現したいこと(=ミッション)、手段は目的のためにやるべき行動(=バリュー)です。今までは、ミッション・バリュー・ビジョンって何が違うの?という感じだったのですが、業務目標に関してこういう考え方を知り、ミッション・・・についても急に理解が進んだ気がします。

目的達成度合いの測定

業務目標は定量的に測定可能でなけらばならない、と言われますよね。自分自身文系の人間なので、根っこには数字を遠ざけるような意識はやはりあるし、法務の仕事で定量化なんてできないよ、と思っていました(今は、できる部分もあるしそれは定量化した方がいいと思っていますが、やはり抵抗する本心がまだあるのは事実です)。
さて、達成度合いを測定するために、どこに定量的な基準を設けるべきでしょうか。
まず、目的に関しては、あまり定量化に適さないと思っています。例えば、「営業で売上XX万円を達成する」という目的を定めたとします。XX万円売り上げれば目的達成なのですが、もう一歩深堀して、なぜXX万円という額を目的にするのでしょうか。XX万円を売り上げることで会社のシェアが伸ばせるのかもしれませんし、投資家が期待する利益率を達成でき株価が上げられるのかもしれません。こうみてみると、定量的な目標は、手段の一種のような気がしてきます。そして、根本的な目的のためにはもっとがんばらないといけないのに、目的が達成されるためにストレッチが効かない、ということも生じえます。
次に、手段も定量化してしまいたくなりますが、これは手段が目的化してしまう恐れがあります。例えば、「●●大学に合格するために(=目的)毎日6時間勉強します(=手段)」の場合は、意気込みや自分を奮い立たせるためにはいいのですが、6時間勉強したから合格できる、とはなりません。上記の目的と同様、ここは落とし穴だと思っていて、6時間勉強することで満足してしまい、ゆくゆくは6時間勉強すること自体が目的になってしまいます。でも、目標は、大学に合格することです。手段を定量化するなという訳ではないですが、自己満足に陥ってしまうという危険もあるところだと思います。
では、インパクトはどうでしょうか。「●●大学に合格するために(=目的)塾で間違った問題はその日のうちに再度解くことを徹底して(=手段)、その結果、次回の模試の成績を前回よりも30点上げる(インパクト)」などです。ここで考えなければならないのは、30点上げるというインパクトが、大学に合格するという目的につながっていなければならないということです。でも、もし30点上がった点数が大学の合格ラインを超えていたら、目的達成のための十分なインパクトなのではないでしょうか。インパクトは「影響度合い」なので、そのインパクトが「どれだけ目的達成に影響したか」を考えることが必要です。
インパクトと目的の結びつきは強ければ強いほど好ましいと思われます。30点上がれば合格ラインを超えればそのインパクトを出すために行動すればいいですし、30点上がっても合格ラインに満たないのであれば、出したいインパクトを変えた上で手段も変えなければなりません。
そして、先ほど述べた、手段は変えてもいい、というのはここにもつながります。繰り返しになりますが、手段は複数想定されますし、実際にやってみたら上手くいかないということもありえます。要は、30点上がるのであれば、手段は何でもいい訳です。6時間勉強するでも、一日1回過去問を解くでも、有名な先生の参考書を読むでも、誘惑に負けないために図書館で勉強するでも。大事なのは、想定するインパクトが生じる可能性が高いであろう手段を選ぶ、間違っていたら修正する、といったところだと思います。

目標の振り返り

四半期や1年が終わったら、業績評価のために振り返りをやらなければなりません。ここでは、実際にやったことを振り返りつつ、これによりどのようなインパクトがどの範囲でどの程度生じたかを測定し、目的の達成度合いをみます。
インパクトの測定は、定量的であればわかりやすいのですが、例えば、2020年度の自分の振り返りには、アンケートを利用しました。インパクトを測定できるような質問を仕事で接する人たちに回答してもらうのですが、1年前や半年前と比べた回答から、自分の業務が与えた影響を測ることができます。実際に上昇率や満足度合いなどが数字として表れるため、評価者に対する説得力もあります。これが定量的に測定することのメリットですね。もちろん、自由コメントのような定性的な情報も、目的に合致するインパクトが生じたことの裏付けになるのであれば、追加情報としてアピールすべきです。

以上、最近の目標設定と振り返りで得た考え方をまとめてみました。これが唯一の方法という訳ではないですが、順序立った考え方だと思うので、これからも意識をしていきたいと思います。
(たまに)ツイッターもやってます。

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