この手が零した幾那由他
今までどれくらい救いきれなかったか、わからない。数えたらキリがないけれど。
一度零れてしまえば、もう元のカタチには戻らなくて、諦めて、見過ごして、掃き捨ててきた。
荒立てないように気を遣っても、零れたものを救う受け皿を用意しても、慈愛で包み込んでも、何をしても無駄だった。嘲笑うかのように、ほんの僅かな綻びを通ってすり抜けていく。
もうこれは、自分一人じゃ抱えきれない問題なんだと思う。
お互いに歩み寄らないと、解決しない問題だ。「救われる気持ち」がない相手へのこの感情は、ただのエゴで終わる。
救いきれなかったと言っても、日々の生活に支障が出るわけではない。時が経てば、普段通りの生活に戻るだけだ。
ただ、もう一度、もう一度だけ向き合ってみようと決意する前、どうしてもあの時の記憶が甦ってしまう。
為す術もなく行く末を見届けるだけの喪失感。
そんな無力な自分への苛立ちと呵責。
抱えた悲しさや虚しさは、蓋をして見ないようにしてきただけで、消えやしない。確かに胸の奥底に在り続けている。
今手を差しのべれば、今度こそ全部受け止めきれるんじゃないだろうかという淡い期待、また零してしまわないか、やり場の無い虚しさを募らせるだけではないかという恐怖。
そんな、光と影を混ぜ合わせた感情は、僕を臆病にさせる。
君に向き合うことが、怖くて仕方がない。
こんな僕を、嗤うか?
また、嗤ってどこかに行ってしまうのか?
なぁ。
クロワッサンの生地。
お煎餅の欠片。
マフィンにまぶしてある、なんか、黄色い粉みたいなやつ。
ミスドのゴールデンチョコレートの"ゴールデン"部分。