となりの "しば" は かわいい
いつも朝6:00から6:30に家を出ている。
家を出る時間に、犬がいっぱいいる。
そろそろ涼しくなってきたから
気持ちいい朝に
犬がいっぱいいる。
かわいい。
犬のお散歩を遠目で見ながら
出勤している。かわいい。
いつも6匹くらいいる。
いつも同じ犬。
でもたまに、10匹くらい見る。
たくさんいて、かわいい。
新品のハンディモップみたいなポメラニアン。
からあげみたいに丸くてふわふわなプードル。
定年退職して余生を楽しんでそうなシーズー。
横断歩道を全力で走るコーギー。
たまに、柴犬がいる。
黒い、まろまゆの柴犬。
小型犬が多い中の柴犬。
目立ってて、かわいい。
どことなくニコニコしている顔が
かわいい。
夫婦ともに帰りが遅く
まともなお世話ができないけれど
いつかは犬を迎え入れたい。
常にかわいいを供給されたい。
こんなに需要があるのに。
供給される体制が整っていない。
それはつまり
犬を受け容れるための十分な資金と時間がないと言うことに他ならない。
体制が整っていないと、正しい供給を受けることが出来ない。仮に犬とともに暮らすことになっても、現在の不規則な生活と経済状況では刹那的な豊かさのインフレーションにしかならず、犬との暮らしを継続させるという点に於いては、双方にとってデメリットが大きいと言わざるを得ない。特に、犬との暮らしを継続させるための資金繰りである。堕落した生活による日々の浪費を差し引いて考えたとしても、日本の賃金が世界でも最低水準であることに変わりはない。2021年のOECDのデータによると、加盟している34か国中24位、さらにここ最近の円安の影響で、今後さらに順位は相対的に下がってくると予測されている。
上がらない日本の給与問題。これを度外視して犬との暮らしという憧れを優先してしまった場合、行きつく先は必ず「破滅」でなのある。給与では賄いきれない食費と犬自身にかかるローン。住宅ローンに加え子供も出産することになれば育児費用も積み重なる。そのうえ高騰し続ける物価により、生活が今より苦しくなることは明白である。結果ローンを支払えない債務者が急増し、各銀行が膨大な不良債権を抱えることになりかねない。さらに、生活苦からのネグレクトやペットの不法投棄という、社会問題にまで発展する。
犬と暮らすということと社会問題の深刻化は、常に表裏一体なのである。その関係は危ういバランスで保たれており、ほんのひと撫でで崩れ去ってしまう。私はただ犬を撫でたいだけなのにも関わらずに。
そんな結果を生まないためにも、今の私は、隣の柴犬はかわいいと羨むことしかできずにいる。それが社会、ひいては地球のためだと、本当は今すぐに犬と暮らしたいという欲望を押し殺しながら。