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「103万円の壁」を取っ払うためには


はじめに

国民民主党の提言によって、「103万円の壁」というワードをニュースでよく聞くようになりましたね。
分かりやすい解説は色々なメディアがしてくれているのでそちらに任せるとして、「103万円の壁」について、ややこしい部分に絞っておさらいしようかなと。

3つの意味での103万円の壁

そもそも、所得税における103万円の壁というのは3種類あり、それぞれで分けて検討をする必要があったりします。


  1. 103万円超稼いだ「本人」に「所得税がかかるようになる」壁

  2. 103万円超稼いだ本人の「配偶者」の「所得税が多くなる」壁

  3. 103万円超稼いだ本人の「親とか」の「所得税が多くなる」壁


まず、1.の所得税がかかるようになる壁に関しては、越しても「稼いだ方が損する」事態は起こりません。
そして、2.の配偶者控除の壁に関しても、配偶者特別控除の創設によって、越しても「稼いだ方が損する」ことはなくなりました。
なので、「壁」というよりは「坂道」的な理解が正しい
まぁ、この点がしっかり理解されているかは知らないですが、、、

問題は、3の、103万円超稼いだ本人の「親とか」の「所得税が多くなる」壁なんですよね。これに関しては、世帯ベースの手取りで「稼いだ方が損をする」状態になるので、明確に「壁」です。

103万円の壁の内訳

さて、まずは先ほどの「壁」に関して、内訳を確認しましょう。


① 103万円超稼いだ「本人」に「所得税がかかるようになる」壁
 基礎控除48万円+給与所得控除55万円=103万円
 →超してもさほど影響なし

② 103万円超稼いだ本人の「配偶者」の「所得税が多くなる」壁
 配偶者の合計所得金額48万円+給与所得控除55万円=103万円
 →超してもさほど影響なし(配偶者特別控除があるため)

③ 103万円超稼いだ本人の「親とか」の「所得税が多くなる」壁
 扶養親族の合計所得金額48万円+給与所得控除55万円=103万円
 →超すと親とかが大変(大学生なんかだと特に)


先ほど、実質的な「壁」は③の壁のみだと言いましたが 、現在ニュースで取り上げられている基礎控除の引き上げは③には影響してきません。つまり、③の扶養控除における103万円の壁を取っ払うためには、基礎控除の引き上げでは足りない、という結論になります。
※「制度上の壁は別として心理的に壁があるよね」とか、「そもそも基礎控除の金額を引き上げて手取りを増やすべきなので、103万円の壁は関係ないよね」とかの意見もあると思いますし、自分もその意見には賛成です。あくまで「103万円の壁」のみにフォーカスした場合の話です。

103万円の壁を取っ払うには?

基礎控除の引き上げが③には関係ない、というのは、扶養判定の要件に「合計所得金額」を用いているためです。

扶養親族の合計所得金額48万円+給与所得控除55万円=103万円

実は、合計所得金額というのは、基礎控除を引く前の概念です(基礎控除が影響するのは課税総所得金額ですよね)。つまり、基礎控除の金額を引き上げても、合計所得金額には影響しません。したがって、(おそらく多くの学生の足かせとなっている)扶養控除における103万円の壁を取っ払うために行うことは、基礎控除の引き上げではありません。
具体的には、「給与所得控除の引き上げ」 or 「合計所得金額の要件の引き上げ」 or 「合計所得金額から課税総所得金額への要件変更」が必要になってくると思います。現実的なのは、合計所得金額の要件の引き上げでしょうか

まぁでも手取りは増えるから嬉しいね

基礎控除の引き上げのみでは「学生が103万円の壁を気にせず働けるようになる」ことはありません。先ほど述べたように、扶養控除における判定要件は合計所得金額を用いているためです。

しかし、扶養を外れて働いている社会人に関しては、純粋に手取りが増えます。また、そもそもの始まりは「基礎控除は『必要最低限の生活費には課税しない』という理念からできているものなのに、そもそも48万円/年では生活できなくね?」という問題意識からだと思うので、個人的には基礎控除の引き上げは良いことかなって思います

以上


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