ペドロ・コスタ特集が豪華すぎる
ペドロ・コスタ、ご存知だろうか?
ご存知ないとしても無理ないが、映画を愛する方々にはぜひ知っておいていただきたい監督の一人である。
ポルトガル出身で、作品もほとんどがポルトガルに関わる内容。
長編デビュー作の『血』こそロベール・ブレッソンやレオス・カラックスを彷彿とさせる作風で、物語もしっかり筋道立てて語るスタイルだったが、その後徐々に独自のスタイルを極めていく。
最新作の『ヴィタリナ』に至っては、出稼ぎしている夫を亡くした経験を持つ一般女性を役者に起用して、出稼ぎ先まで夫の葬式に出掛けるという内容の映画を撮影している。
演出法や役者との関りを少しでも見誤れば、役者の傷を深く抉りかねない綱渡りのような映画撮影である。
要はスタイルとしては記録性に重きを置くのだが、その一方で非常に明暗の激しいライティングに凝った絵画的な画を好む表現性の一面も持つ。
あまり両立しえない記録性と表現性を画面の中に共存させる稀有な監督なのだ。
日本との関わりは意外と深く、諏訪敦彦監督が東京造形大学に教授として在籍していた時に何度か特別講義を開いている。
特別講義を文章化してまとめたものが『歩く、見る、待つ』という書籍として出版されており、非常に刺激的で示唆的な内容に溢れている。
もちろんコスタ監督の作品を観てからでないと十分な理解は到底できないから、映画を観たあとで興味があれば購入してみてほしい。
それから去年の東京フィルメックスで『ヴィタリナ』のジャパンプレミアが行われた。
コスタ監督も来場し、貴重なトークを披露してくれた。
会場には観客として黒沢清監督、評論家の蓮實重彦氏もいらっしゃっていたから、どれほど注目されている監督かがお分かりいただけるだろう。
日本滞在は楽しかったようで、小津の映画を観に行ったり、レコード店を回ったりしたらしい。
フィルメックスのスタッフがホテルまで迎えに行った時もどこかにフラフラ出掛けていたようで、トークの時間に間に合うかギリギリでスタッフが焦っていたという話を関係者から聞いた。
お茶目というか自分勝手というか、変な人である。
で、ペドロ・コスタ作品をぜひ観ていただきたいわけだが、なんせ貴重な作品が多くTSUTAYAでも借りられなかったりでDVDを買わなければ観られない作品、どうやったって日本で観られない作品もいくつかある。
そんな小生の悩みを解決してくれる一筋のまぶしすぎる光が飛び込んできた。
『ヴィタリナ』の公開記念にペドロ・コスタ監督特集を開催するというのだ。
普段から貴重な作品を上映してくれるアテネ・フランセ文化センターで8/18~21、8/24~27に開催される。
上映作品はなんと未公開の短編(ブルーレイの特典だから小生は既に観ているのだが)や、撮影中のコスタ監督を記録したドキュメンタリーを含む13作品。
本当にここでしか観られない作品もいくつか含まれているからちょっぴりでも興味がある人はぜひ行っていただきたい。
9月には最新作『ヴィタリナ』も公開されるからそちらもあわせてどうぞ。
そんな金がありゃ映画館に映画を観に行って!