鏡のない世界で 3.1
0話: https://note.com/sona_06/n/n84b50718d664
前話: https://note.com/sona_06/n/ne1cf39283cad
隕石のような衝撃を受けた日から、僕の日常は大きく変わった。
まず、土曜日は1日、独りきりになった。
デート日のルーティーンが、そこに嵌められたのだ。
どうやら男は社会人で、平日出勤のため、必然的に仕事明けの土曜にゆっくり会うようになったらしい。
広告代理店務めの営業職、背は178センチで細身だが引き締まった身体、優しい顔立ちと言動で、営業成績も申し分ないという、彼女のフィルターが入ってるにしても、なかなかの好条件だ。まぁ彼女の言葉だけで直接見たことはないが。
平日は会えない分、夕食と入浴を済ませた後に1時間ほど電話をするのも日課になった。
付き合いたての2人だ、話す内容など溢れるほどにあり、潤いに満ちた笑い声が部屋中に広がる。
僕と2人で居る時の空気とは、また違った色だった。
正直、それを吸い込むのが苦しかった。
眼の前で繰り広げられる初々しい往来、桃の花が浮かんだような声。どんな顔をしているかは、とても見れない。
土曜日以外は変わらず一緒に居られているが、杏奈との距離は随分と遠くなってしまったように感じる。
僕の心は一向に落としどころを見つけられないまま、月日だけが流れていた。
そして昨夜、ついに彼女は帰ってこなかった。
次話: https://note.com/sona_06/n/n92d673ead5f7
いいなと思ったら応援しよう!
最後まで読んでいただいてありがとうございます。
お心添え感謝しますっ。精進していきます!