そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第1章 旅立ち編 3】
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ーリビングー
ご馳走様、母さん行ってくるよ
「ええ、いつもの所でもらえると思うから」
いつもの所というのは近くの養鶏所だ。父さんの仕事仲間というコネで譲って貰えるらしい
「世間話が好きな人だけど我慢しなさい。あ〜あ〜へ〜へ〜言ってればそのうちくれるから」
失礼だろ
「じゃあ、行ってらっしゃい。気をつけるのよ」
ー始まりの村 ドミリアー
マサアキ
HP 18
MP 0
Lv.1
んん〜…っ!いい朝だ
しかし、この毎回家を出入りする度表示される数字は何なんだ?
しばらくすると勝手に消えるんだよな。一体何だ?HP……?18?
………
………
あ、ホームパーティ?
「ホームパーティではなぁぁああああいッ!!」
うおっ!?
びっくりした…何だいきなり?誰だ?
「横から失敬するよ青年!私はステータスバー説明おじさん!世の中のステータスバーすらわからない無知蒙昧な老若男女にステータスバーの意味を教えて回ることが唯一無二の趣味である46歳独身だぁ!」
やべぇ…むちゃくちゃ変な人だ
まだ家出て数歩目だぞ、こんな事あるか普通?
「はっはっ!そう警戒せんでもいい!君はまさに今ステータスバーの意味がわからず頭を抱えていたね!?」
いや、そんな抱えるほどでは…
「遠慮をするな青年!困っていたじゃあないか!現にHPの事をなんて言った今!?」
え、あぁ…ホーム
「んんん!?もっとはっきり!」
ホームパーティ……
「ほ…!ホホ…ッ!?えぇっ?ホムッ!ホムパ…ッ!!HP……!ホーム…!!」
「はぁーーーっは!っは!っは!っは!はぁッ!!」
スゲェ笑われてる…
よく分からんけどムカつくな、ぶん殴っていいのか?
「ちゃ、ちゃんちゃらおかしいよ君!そんなわけないじゃないか!何で家を出入りする度ホームパーティの経験回数が表示されると思うのか!それじゃあ私のHPは0じゃないか!笑わせるなぁ全く!」
いや笑えねーよ。かわいそっ
「ふうっ!だが安心しろ青年、始めはみんなそんなものだ」
「私がこれから特別に講義してやろう!もう恥をかくことは無いぞ!」
うわぁマジか…頼んで無いんだけど
マサアキ
HP 18
MP 0
Lv.1
「では君のステータスを拝借して上から順に説明しよう!」
「まず一番上、これは君の名前だな!」
いやそれはわかるよ。普通に
「ふむふむマサアキか!良い名だな!覚えたぁ!!」
……勘弁してくれ…
とっとと教えてもらって早いとこ解放されよう
あの、HPってのは結局何なんすか?
「何だ興味津々じゃないかマサアキ!」
早速名前呼び…辛い…
「そんな君に教えよう!HPというのは《ヒットポイント》つまりは体力だ!今18と出ているだろう?」
あ、はい
「ふむ、百聞は一見に如かず…か、頬を失礼するよマサアキ!」
へ…?
パァン…!
【マサアキは3のダメージを受けた!】
いっつ!はぁ…!?
マサアキ
HP 15
MP 0
Lv.1
「さぁごらん!今私が君にビンタをしたら体力が3減ったろう?つまりこれを後5回繰り返したとしたら君の残存体力は0になり死に至ってしまうんだ!HPの重要さが身に沁みて分かったかい?くれぐれも管理には気を配りたまえよ!」
どうしよう…色々言いたいことあるけど、泣きそう
俺……よわっ……
「続いてはMPだな!これは《マギアポイント》いわゆる魔力の総量だ!魔法を使ったりすると減り、魔族はこれが0になると消滅する!」
「以上!」
急に雑だし早っ
「MPに関しては君も私も全くの0だ!適性がないのだろうな!なのでこれ以上特に話の発展もないからつまらん!」
つまらんて…あんたが勝手にレクチャーしてきておいて
「Lv.《レベル》も同様だな!どうせ然るべき時が来たら自然に覚える事柄だ!つまらんつまらん!」
「正直私はHPの概念だけ伝えられれば大満足だ!それ以外は取るに足らん!ていうかよく知らん!」
何でいきなり投げやりになってんだよ!?人のことシバいておいて、そんな態度許されると思ってんのか!
あんたステータスバー説明おじさんだろ!せめてステータスバーの説明くらい最後まできっちりしろよ!
いやステータスバー説明おじさんって何だ!?
「落ち着けマサアキ、全てのことを今会ったばかりの何の繋がりもない赤の他人から教えて貰おうなどという浅ましい考えは持つな」
「焦らずとも大丈夫だ、きっと君は成長して行ける。すぐにこの私のステータスも追い抜けるさ」
……あんたのHPって?
「6だ」
じゃあもう超えてるじゃねーか!往復ビンタ一回で死亡!?
「では私の役目は終わった!会えたらまた会おうさらばだ!はっはっはっ!」
シュタッ!
【ステータスバー説明おじさんはその場を後にした!】
何だったんだ一体…死ぬほど変な人だったな
唯一好感を持てたのは俺を勇者扱いしなかったことだけだ
はぁ、気を取り直して卵をもらいに行こう。いい朝が台無しだ
ードミリア 村道ー
と、確かこの辺だったか?養鶏所
「マサアキマサアキ〜〜!」
ん、この声は…
「ったく返事くらいしろよ!おいらのするどいキバでかみついちゃうぞ!」
お前か…グリル
こいつはグリル、魔族の子供だ
特に害はないため村にいるんだが
「この前マサアキが教えてくれたクリムザリガニ釣り!言うとおりにしたらすげー釣れたんだ!なぁ今度はいっしょに行こう?」
一つ勘違いはしないでくれ
こいつが村の中に居られるからと言って村人は魔族の存在を受け入れているというわけではないんだ
人間と魔族は表情や体型が非常に似通っていて、ぱっと見にそれほど大きな差異はない
魔族には赤い目、そして牙と翼と尻尾と角が生えている位だ
こう改めて並べてみると大分違う気もするが、ドミリアの田舎という特性とこいつがまだ子供ということもあって、特徴である魔族の部位もそう目立ってはいないので何とか誤魔化せているような状態だ
まぁちょっと変わったコスプレをしている子供くらいの認識だな
「なぁなぁ行こうよ!どうせひまだろ〜?クリムザリガニぃ〜」
用事あんだよ。一人で行ってろ
「どうせ大した事じゃないだろー?しんぶん持ってこいくらいじゃんいつも」
残念だったな。今日は卵取ってきての大役も任されてんだよ
「え、マサアキ大丈夫か?たまごって割れるんだぞー?」
なめんなよクソガキ。出来るに決まってんだろ
「ちぇ、つきあいわる〜、じゃあもういいよ一人で行くよ。たくさん釣ってマサアキの枕元にバラまいてやるからな!」
やめろ、その歳で嫌がらせを覚えるな
「じゃーな!今度はゼッタイだぞ!」
やれやれ、俺以外に友達……
なんて、いる訳ないか。あいつに
フリフリ…
ん?おいグリル、ちょっと待て
「え、やっぱいっしょに行きたいのか!?」
いや、ちょっとゴミが…後ろ向いてみ
「へ?うん」
ブチィッ!
【マサアキはグリルの尻尾を手に入れた!】
「ギャアァァァァ!!」
グリル、新しい尻尾が生えてたぞ
「急になにするんだよ!!おいらの大事なしっぽ!」
ほら
【マサアキはグリルにグリルの尻尾を渡した!】
「あぁ…ダメだ、かんぜんに取れちゃってる…マサアキ液体のりとか持ってないかー?」
持ってねぇし着くわけねぇだろ
「うぅ…マサアキってたまにいじわるだよな。何でこんなことするんだよ」
お前のためを思ってやってるんだ。文句言うな
このまま成長していったらいずれは村人にバレる恐れがあるからな。余計なパーツは定期的に除去しなくてはならない
まぁ、少々可哀想だが…
……てか
【マサアキはグリルの様子を調べた!】
「お?なんだなんだー?」
お前、なんか怪我多くね?
「ああ〜、これ前あそんでたら出来たやつ!うははっ!」
うははじゃねーよ。あんま危ない事すんなよ
悪目立ちしてもアレだし
「うーんでも、けっこー前にできたケガだぞ?さいきんは釣りばっかだし、なんか治んないんだよなー」
治んない?
「うん、だからあんまりイタいことはしないでくれよ〜」
……………あぁ、分かった
「その顔はぜんぜん分かってないときの顔だ!ほんとに次やったらおいらのさいきょーのキバでかみつくからな!」
じゃあ牙も抜かないとな
「うわ~ん!マサアキのいじわる~!!」
【グリルは逃げ出した!】
怪我が治らない……ね
今朝のニュースで言ってた影響か?魔族は人間よりも圧倒的に治癒能力は高いはずなんだが…
………
……いや、良いんだよな。それでこの世の中から魔族も魔物もいなくなるんだから
それが普通で当たり前、のはずだ
だいたい俺単なる村人だし、何も出来ねぇし、しょうがねぇよ
うん
〜To be continued〜
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