そもそも魔王って倒さなきゃ駄目なのか?【第3章 ラスン救済篇 1】
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―リベール街道―
【マサアキは薬草をつかった!】
にが…
【マサアキはHPが回復した!】
マサアキ
HP 76
MP 0
LV.8
ふぅ…いつ食べても慣れないなこれは
村娘との修行中はよくお世話になった…というより、もうほぼガムの感覚で常に口に含んでいたものなんだが
「マサアキさん、あと10分位でラスンに着くっすよ、荷物などまとめるものはまとめちゃって下さい」
なんだ、案外近いんだな
「モンバルまでの通り道の間にある村っすからね。ルート変更するのに手間はかからなかったっす」
ふ~ん……だとよグリル、そろそろ降り──
グリル?
「これと~…これも!」
……お前…何してんの?
「ん?ねーちゃんが早く起きるように、かんびょう!」
ピクピク…
【リリアルの口が食べ物で溢れ返っている!】
ヒィィィィィィ!
「かんびょうといったらまずは食いものだろ~?くだものたくさん食べさせてやった!」
食べさせてやった!?お人形さん遊びじゃねーんだよ!
寝てる人間の口に物つっこんでんじゃねぇ!
「でも口パクパクしてたぞ?」
呼吸してるだけだろうが!ドミリアの池にいる魚とはちがうんだよ!?
と、とりあえず助けねぇと!
「……えほ…えほっ…!」
おい、大丈夫か?
「……とんでもない夢を見ました…体の自由がきかない真っ暗な空間で…おいらおいら言っている何者かが大量の果実を口の中へ押し込んでくるのです…」
あぁ…うなされてたから怖い夢でも見てんのかと思って慌てて起こしたんだ
夢でよかったな
「……口の中が無駄にフルーティーなのはそのせいでしょうか?…」
そのせいだ
俺もたまにあるよ。衝撃的な夢の内容って現実世界にまで引っ張って来ちゃうよな
「……良く分からない種が口から出てきました…これもそのせいでしょうか?…」
あ、あぁ…そのせいだろ
すごくリアルな夢だったんだな、うっかり持って帰って来ちゃったんだろ
「……なるほど…つまり私はうっかり者という事ですか…」
そういう事になる。次からはちゃんと現実と夢の区別つけろよ
「……はい…今度は持ってこないように気をつけます……てへへっ…」
「…じゃありません…何してくれてるんですか…」
お前、意外とノリいいんだな…
「ねーちゃん元気になったのか!?」
「…うわ…夢の子です…」
「やっぱりおいらのかんびょうが効いたんだな。カンシャしろよ!」
何に感謝しろってんだよ
言っとくがグリル、お前がそいつにしてた処置は看病じゃねぇ。トドメだ
よく覚えておけ
「え?おいらトドメって知ってるよ。苦しんでる人をラクにすることだろ?かんびょうと同じじゃないのか?」
確かにあながち間違ってないけども!楽にするの重みがまるでちげぇよ!
誰だグリルにそんなこと吹き込んだ奴!
「…ところで…私は一体何故この浮浪者の根城みたいな乗り物に乗せられているのでしょうか?…」
「悪かったっすね!荷車ボロくて!」
記憶にないのか?
俺との勝負でぶっ倒れたんだよ。お前
「…倒れた?…あ…」
ボロ…
【慘鬼は折れてしまっている!】
「……惨鬼君…」
悪いな、相棒とか言ってたけどそんなに大事な物だったのか?
「………はい…月並みですが…惨鬼君はお母さんの形見なのです…」
お前の母ちゃんどんな人だったんだよ
……てか、あれ?母ちゃんって…さっき連絡取ってなかったっけ?
「…それはお母様です…」
だから、母ちゃんだろ?
「…形見はお母さんのです…先ほどお話ししてたのはお母様です…」
んん〜?何言ってんのお前?なぞなぞか?
「…まぁ…色々複雑なのですよ…お気になさらず…」
「…慘鬼君の事は残念ですが…とはいえこれも勝負事の結果ならば仕方ありません…」
「……そうですか…私は負けてしまったのですね…」
まぁ、負けたからってあんま気にすんなよ
「…いえ…それでも負けは負け…約束通りあなたの命令を聞き入れましょう…」
「…で…どこから脱げば良いのですか?…」
おい、男に対してもっと希望を持て
何で脱がす事が前提になってんだ
「……こういうのが好きなのではないですか?…若い男の人など…どうせ…」
待て待て待て、自ら闇に堕ちてくんじゃねぇ
そりゃ好きってやつも多いかもしれないが、状況を考えろよ
お母さんの形見だか知らんが、それをぶち折って気絶させた挙句服脱がすとかどんな鬼畜だよ。俺は
「そもそも命令って何すか…マサアキさん、あなた」
軽蔑の目をやめろ!吹っ掛けてきたのはこいつからだ!
「…でも実際少しだけ乗り気でしたよね……あれ私………怖かったぁ…」
今更カマトトぶってんじゃねぇ!お前の想定通り脱がしてもいいんだぞコラァ!
「…さて…バカをやるのもこれくらいにして…結局私はどうすればいいのですか?…」
んああ?
別にいいよ、何もしなくて
「…そういう訳にはいきません…お互いそのルールを了解の上で勝負をしたのですから…中途半端は嫌です…」
と言われてもな…
「…なるべく早くお願いします…私にはまだやるべき事があるので…時間が惜しいです…」
…………
じゃあ……今日はどのみちモンバルまで行けないみたいだから、お前の村の宿屋の宿泊料を1泊無料にする
これでどうだ?
「…え?…ラスンへお越しになるのですか?…」
まぁな、お前を村まで送るついでだ
「……しかし…あの…話しましたよね?…私の村は貧困により何もありません…宿屋があったかも怪しいです…」
そんじゃ寝床を用意してくれ。それでチャラでいい
「…ほ…本当にいいのですか?…今の村はバミラ達の息が掛かっているので…マトモなおもてなしなども出来ないかもしれませんよ?…それ所か目をつけられ危険を伴う恐れも有ります…本当にそれでも?…」
元々旅人釣りあげて魔族に献上しようとしてた奴が、今さらおもてなし云々ぬかしてんじゃねーよ
俺達はただの旅人、何処に立ち寄り何処で休もうが、全部俺達の自由だろ
その旅路の道中で起きたいざこざは全部俺達のもんだ。それにお前達の村は関係ない
違うか?
「……!…」
「あの…マサアキさん自分話がいまいち飲み込めないんすけど…」
「…ばにらって誰だ?なんか甘くてうまそう!」
あぁ…そういや話してなかったっけ?
実はこいつの村─────
「───な、なるほど…おおよその事情はわかったっす…けど、マサアキさんちょっと……ちょっといいっすか?」
あん?
「………ラスンへ行くのは単にこの子を送り届けるだけではなかったんすか………!?魔族がいるとか……聞いてないっす……!」
「……もし鉢合わせして…魔族と戦闘にでもなったら万に一つも勝ち目はないっす……そこんとこ分かってんすか……!?…」
「……それとも…何か勝算でもあるっていうんすか……?」
分かってるって、ウマオさん。大丈夫だよ
相手は何やら、若くて腕っぷしのいい男を探してるらしいからな
腕相撲にさえ持っていければ、俺の土俵だ。魔族にだって負けねぇよ
「……アホっすかあんた……!あなたが思うほど腕力至上主義じゃないすよこの世界……!」
「……そんな土俵に引きずり込んで何が解決するっていうんすか…!…仮に勝てたとしてスゴスゴと退散してくれる連中な訳ないでしょう………!?……」
「……身の程を弁えて下さいよ!……村の期待を背負う勇者とはいえ……マサアキさんはまだ駆け出しも駆け出しの冒険者なんすから……!…」
勇者じゃねーよ
それはそうだが、仕方ねぇだろ?
このままじゃあいつはまた、元の場所に戻ってさっきみたいな無防備な真似繰り返すぞ
それでいいのか?
「……お言葉っすけどマサアキさん……よく聞いて考えて下さい……」
「………確かに少し気の毒かもしれない……でもあの子がどこでどうしようが何しようが…」
「それ本当に…あなたのこれからの旅の目的と関係あるっすか?…」
「……優しいだけでは人は救えないんすよ?…」
…………
「…あの…すごい揉めているようですけど…本当に無理などなさらなくて結構ですよ?…バミラもルーボも恐ろしい魔族ですので…」
「ほら彼女もこう言ってくれてるっす。部外者が無理に関わって解決できる問題では無いんすよきっと、やはり自分は介入しないに1票っす」
案外冷てーのな、あんた…
奥さん泣くぞ
「冷たいとかではなく、大人として現実を見据えて言ってるまでっす。何とでも言って下さい」
「それに言ったじゃないすか、自分はリスクの伴う運行はしないと」
「事こうなった以上ラスンヘは行けないっす」
…………
「なぁマサアキ」
ん?
どうしたグリル?トイレか?
「あのねーちゃん、村が大変で困ってるんだってさ」
会話の波に乗れてなさ過ぎるな、お前
知ってるよ、今まさにそれについて話してた所だ
「じゃあ助けてやらないとな!」
へ?
「だって、おいらもドミリアにいれなくなったらいやだし、あのねーちゃんそうゆう事をいってんだろ?」
…………
「グリル君……」
「あれ?ちがうのか?」
……いや…そうだな
はは…!つー事だウマオさん
こんなガキでも分かるんだ。俺達が言い訳して逃げるわけには行かなくなったらしい
「ちょ…そんな!自分腑に落ちないっす!」
じゃあいいや、俺とグリルはこいつを連れてこのままラスンヘ行く
あんたの仕事はここまででいい
「っ…!?」
けどそれだと給料出んのかな?あんたの仕事は俺達をモンバルまで送って行く事なのに
「お、脅しじゃないすか……」
いい性格してんだろ?
「くっ…!……わかったっす…しかしワガママはこの一回っきりにしてくださいよ」
わかったよ、悪いな
具体的にどうするかはこれからちゃんと考えるよ。本当に危なくなったら、その時は恥も外聞も捨てて逃げようぜ
「そんな上手いこと逃げられればいいすけどね……」
………
……………そうだな、本来選択肢ってのは強者に与えられる特権だ
ぐうの音も出ねぇよ。分かってる
だから…もしもの時は、俺も凡人なりに腹を括るよ
〜To be continued〜
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